【緊急インタビュー】日経平均1000円安、中東情勢緊迫化 今後の相場展望は?
―イスラエルの報復攻撃伝わりリスクオフ、日経平均VI指数は一時1年半ぶり高水準―
19日の東京株式市場で日経平均株価は急落し、下げ幅は一時1300円を超えた。欧米メディアからイスラエルによるイランへの報復攻撃が伝わるとリスク回避ムード一色となり、投資家の不安心理を示すとされる日経平均ボラティリティー指数(日経平均VI指数)は一時27.82と、2022年10月以来の高水準に急伸した。終値ベースで日経平均は1011円安と下げ幅は今年最大。3月22日につけた史上最高値(4万888円43銭)からは3800円を超す下げとなり、調整色を一段と強めた。この先の日本株をどう展望するか。市場参加者に見解を聞いた。
●中東情勢を受け需給調整が加速、ホルムズ海峡封鎖のシナリオは見込めず
石金淳氏(三菱UFJアセットマネジメント チーフファンドマネジャー)
昨年10月から今年3月下旬まで日経平均株価は1万円上昇し、過熱感が強まっていたなかで、いったん調整をしなければ次の上昇ステージには進めない状況にあった。米国の半導体株は3月にピークアウトし、4月は米国株相場全般に調整色が強まっている。きょうはイスラエルによるイランへの報復攻撃という報道を受けて日本株は大きく下げたが、その分、需給調整が一段と進む形となった。イスラエルの攻撃に関しては「やはりやりましたか」という印象だ。米原油先物相場には上昇圧力が掛かったものの、冷静に考えてみるとイラン国内はガソリン不足の状況である。イランは原油そのものを輸出しているにもかかわらず、国内の製油所はメンテナンスができていない。そうした国内事情に加え、米国が背後にいるイスラエルと比べてみると、軍事力や情報収集能力で見劣りする。イランによるホルムズ海峡の封鎖の可能性を指摘する声もあるが、イスラエルに対抗できる中東諸国が存在せず、米海軍第5艦隊がにらみを利かすなかでは絵空事のようにも感じる。石油輸出国機構(OPEC)加盟国が結託して減産に踏み切ったとしても、原油価格に上昇圧力が掛かった場合、他国が増産することもあり得る。中東情勢を甘く見ることはできないが、過度に心配する必要もないだろう。
ただし19日は原油高と株安に加えて、時間外での米長期金利の低下も顕著となった。まだ判断は難しい面もあるが、原油高と世界景気の関係性について、市場の解釈が変化しつつあるのなら、留意が必要なところだ。日経平均の200日移動平均線は3万4500円近辺に位置している。足もとでは値幅調整が進んだこともあり、短期的には下落の反動が見込まれるが、波動の変化となれば1回の下げで終わることは見込みにくく、戻った後に再度調整をする「2段下げ」の展開が想定される。日経平均がこの先上昇したとしても一時的なものにとどまるリスクがあり、6月までは3万5000円が下値のメドとなる。米景気の底堅さに変化がなく、米原油先物相場が1バレル=85ドル以下、米長期金利が4.0%程度の水準にとどまれば、調整一服後に日本株は再度上昇に向かうと想定している。
(聞き手・長田善行)
<プロフィール>(いしがね・きよし)
1988年慶応義塾大学卒業、ユニバーサル証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年にパートナーズ投信(現三菱UFJアセットマネジメント)転籍。16年12月より現職。
株探ニュース