常勝街道を離脱、一時サポートラインを割る (1) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
●THE S&P 500 MARKET:2024年4月
個人的見解:これまでの上昇のツケが回り、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を3対1で上回ったものの、下落率は4.16%で打撃は限定的
4月のS&P500指数 の下落(4.16%下落。5000台を一時割り込んだものの大幅下落は免れました)が2024年第1四半期の上昇分(10.16%)のツケを払うものだったとすれば、(どうか)「また同じものを」お願いします。最近の下落が続いて揺り戻し(5%)あるいは調整(10%)になる展開に備えていない訳ではありませんが、現在の水準は防衛可能なサポートレベルの領域にあるとみられます(VIX恐怖指数トレードが浮上しては消え、そして再び浮上する可能性があるとはいえ……)。
米国経済にはワシントンの友人たちによって大量の資金が直接流入しています(先頃可決されたイスラエル/台湾/ウクライナへの米国の緊急支援計画を通じて最低340億ドル、CHIPS法による米製造業向け補助金・融資を通じて390億ドル)。一方、雇用(および給与)は高水準に留まっており、現在実際の利益(およびキャッシュフロー)は好調です(ただし、ガイダンスはそれほど良好ではありません ―― 2024年第2、第3、第4四半期で最高益が見込まれているものの)。そして、不快な「代名詞」ダンスにおいて「U.S.」は(ジェンダーの観点から)最も心地良い「代名詞」と見なされています。
ガイダンス関連のニュースには否定的な見方もありましたが、実際の前期比の増益率は1%の予想を上回り(予想を上回った企業の割合は76.8%)、ウィスパーナンバー(アナリストの非公式の業績予想)の2.5%増も上回っています(現時点で2.7%増、前年同期比では5.4%増)。売上高は過去最高となった2023年第4四半期の水準(年末商戦に伴う典型的な動きの結果です)を4.1%下回ったものの、前年同期比では4.1%増加しました。
経済データはあらゆる可能性を示唆する結果となり(リセッション、スタグフレーションへの新たな懸念、成長)、ボラティリティは高まったものの、最終的にトレードを左右したのは企業業績とファンダメンタルズ(ならびにデータから導かれた予測)でした。
4月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は平均1.13%と3月の0.73%から上昇しました。同様に10年債利回り(4.68%。3月は4.21%、2023年末は3.88%)と金(1トロイオンス=2303ドル。3月は2241ドル、2023年末は2074ドル)も上昇しましたが、市場は4.16%の下落と、4.87%下落した2023年9月(8月と10月を合わせた3カ月間で8.61%下落)以来の大幅下落となりました。
11セクター中、上昇したのは1セクター(公益事業の+1.59%)のみで(最も大幅に下落したのは不動産で-8.62%)、値下がり銘柄数(385銘柄)が値上がり銘柄数(118銘柄)を上回りました(全11セクターが上昇した3月には、値上がり銘柄数が402銘柄で、値下がり銘柄数の100銘柄を上回っていました)。
年初来では、上昇率は5.57%となり(11セクター中10セクターが上昇し、不動産が9.86%下落)、値下がり銘柄数が増えたものの、引き続き値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回っています(値上がり銘柄数が302銘柄、値下がり銘柄数が199銘柄。これに対して3月時点では年初来で値上がり銘柄数が369銘柄、値下がり銘柄数が134銘柄)。
マグニフィセント・セブン銘柄の存在感は依然として大きく、株式リターンの51%に寄与しましたが(年初来で11.5%下落したアップル<AAPL>と同26.2%下落したテスラ<TSLA>を含む)、S&P500指数の年初来の上昇率の41%はエヌビディア<NVDA>(年初来74.5%上昇)によるものです。また、「マグニフィセント(素晴らしい)」ではありませんが(空売りしていない限り)、ボーイング<BA>(多くの投資家が超長期的な買い銘柄と見なす銘柄)は同指数で3番目にパフォーマンスが悪く、年初来で35.6%下落しました(ああ、何たることでしょう)。
5月は、米連邦公開市場委員会(FOMC)で幕を開け(4月30日火曜日から2日間開催)、5月1日水曜日の午後2時の声明文発表では金利が据え置かれ、2時30分に始まるパウエル議長の記者会見では、辛抱強く待つか行動するかはデータ次第との見解が示されると予想されます(つまり「どちらもあり」ということです)。注目は、米連邦準備制度理事会(FRB)の声明文発表と議長の会見に先立ち午前中に公表される、ADP全米雇用統計、PMIとISMの製造業景気指数(いずれも取引開始前)、そして建設支出とJOLTS(求人労働異動調査、午前10時)です。現在市場では、利下げは1回か(9月の確率が最も高く45%、次いで12月が30%)、年内なしかで議論が分かれています(昔々、具体的には4カ月前のことですが、利下げは2024年3月に始まり、年内6回実施されると予想されていました)。
その後、小売業の決算発表に関心が移るとともに、消費者の現在、さらに今後の動向についてあれこれ解釈がなされるでしょうが、いつもの経済データ(雇用統計、消費者物価指数[CPI]、生産者物価指数[PPI]、個人消費支出[PCE]物価指数等々)によって市場(およびFRB)の全体的なトーンは決まるでしょう。それからもちろん、中東やウクライナの情勢、政治、大学キャンパスでの抗議行動、政策金利を「より高くより長く」維持する方針や財務省による短期/長期の借入れ圧力を通じた債務維持コスト(債務水準は言うまでもなく)等の問題もあります。つまり5月も変動の激しい1カ月になるだろう、ということです(ちなみに5月17日には私のS&Pでの勤務が48年目に突入します ―― その日まで首がつながっていればの話ですが)。
●インデックスの動き
○S&P500指数は4月に常勝(そして高値更新)街道から外れ、5000のサポート水準まで下落した後に5035.69で月を終えました。前月まで5カ月連続で上昇していましたが(累計上昇率25.29%)下落に転じました(4.16%下落)。5カ月連続上昇の前は3カ月連続で下落し(累計下落率8.61%)、その前は5カ月連続で上昇していました(累計上昇率15.59%)。4月は22営業日中9営業日で上昇し(3月は20営業日中10営業日。年初来では83日営業日中43営業日)、上昇したセクターは1セクターだけでした(3月と2月は11セクターすべてが上昇)。値下がり銘柄数が増加し、値上がり銘柄数を大きく上回りました(値上がり銘柄数は118銘柄、値下がり銘柄数は385銘柄。これに対して3月は値上がり銘柄数が402銘柄、値下がり銘柄数は100銘柄でした)。出来高は前月比で14%減少、前年同月比では5%減少しました。
○S&P500指数の時価総額は、4月に1兆8430億ドル減少して(3月は1兆2900億ドル増加)42兆2340億ドルとなりました。2023年は7兆9060億ドルの増加、2022年は8兆2240億ドルの減少でした。
⇒4月にはダウ・ジョーンズ工業株平均(ダウ平均)の上昇と高値更新も止まり、5.00%下落して(配当込みのトータルリターンはマイナス4.92%)、3万7815.92ドルで月を終えました。3月は2.08%上昇して(同プラス2.21%)、3万9807.37ドルで月を終えました。2月は3万8996.39ドルで終え、2.22%上昇(同プラス2.50%)でした。年初来では0.34%の上昇(同プラス0.92%)、過去1年のリターンは10.90%の上昇(同プラス13.25%)、2023年は13.70%の上昇(同プラス18.18%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。
○4月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、1.13%と3月の0.73%から大幅に上昇し、年初来では0.85%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。
○4月の出来高は3月の前月比5%増加の後に、同14%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では1%減少しました。2024年4月までの12カ月間では前年同期比5%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。
○4月は1%以上変動した日数は22営業日中7日(上昇が3日、下落が4日)で、2%以上上昇した営業日はありませんでした。3月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は17日(上昇が10日、下落が7日)で、2%以上変動した日数は1日(上昇)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。
4月は22営業日中12日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は2日ありました。対して3月は1%以上の変動が20営業日中5日で、2%以上の変動はありませんでした。年初来では、25日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は2日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が219日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。
過去の実績を見ると、4月は64.6%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.30%、下落した月の平均下落率は3.97%、全体の平均騰落率は1.37%の上昇となっています。2024年4月のS&P500指数は4.16%の下落でした。
5月は59.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.02%、下落した月の平均下落率は4.68%、全体の平均騰落率は0.11%の下落となっています。
今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2024年は4月30日-5月1日、6月11日-12日、7月30日-31日、9月17日-18日、11月6日-7日、12月17日-18日となっています。
※「常勝街道を離脱、一時サポートラインを割る (2)」へ続く
株探ニュース