外食企業が海外へアクセル全開、「世界の胃袋」つかむ銘柄群を追え <株探トップ特集>

特集
2024年5月22日 19時30分

―人口増が見込める海外の市場拡大に期待、インバウンドによる認知度向上も後押し―

外食企業の海外展開が加速している。直近では双日 <2768> [東証P]、銚子丸 <3075> [東証S]、ロイヤルホールディングス <8179> [東証P]の3社が米国に合弁会社を設立したが、背景として挙げているのが今後の国内市場の縮小と海外市場の拡大だ。また、インバウンド(訪日外国人)の急増に伴って外国人の間で日本食の認知度が一段と向上し、世界中でニーズが高まっていることも理由のひとつになっているとみられる。食材コストを抑制できる海外事業を強くできれば、為替による業績変動リスクの軽減につながるといったメリットもあり、内需型産業の代表である外食企業の今後の動向から目が離せない。

●増加する海外の日本食レストラン

観光庁が4月に公表した2024年1~3月期の訪日外国人旅行消費額は1兆7505億円で、前年同期比で73.3%増、19年の同期比では52.0%増だった。費目別では宿泊費が5619億円(32.1%)と最も多く、次いで買い物代が5114億円(29.2%)、飲食費が3802億円(21.7%)となっている。飲食費の構成比は前年同期の22.8%から減少したが、消費額は前年の2306億円から増加しており、日本食に対する関心の高さがうかがえる。

もともと日本食はヘルシーというイメージから海外で人気があるほか、少子高齢化で国内市場の縮小が予想されるなかで人口と所得の増加が見込めるアジアなどが注目され、外食企業がコロナ禍で中断していた海外展開を再び活発化させているといえる。農林水産省が昨年10月に公表した海外における日本食レストラン数の調査によると、23年の店舗数は約18万7000店と前回調査(21年)の約15万9000店から2割程度拡大。地域別ではアジアが約12万2000店(前回調査は約10万900店)、北米が約2万8600店(同約3万1200店)、欧州が約1万6200店(同約1万3300店)、中南米が約1万2900店(同約6100店)の順となっている。

インバウンド消費と世界における日本食への評価の高まりが期待される半面、国内市場は決して楽観視できる状況ではなく、海外進出のノウハウや体力がある外食企業が販売拠点や店舗網を更に拡大する動きは今後も続きそうだ。

●積極展開を打ち出す企業相次ぐ

ホットランド <3196> [東証P]は21日、米大リーグのロサンゼルス・ドジャースと複数年のスポンサー契約を結んだと発表。同社は国内外で550店舗以上を出店しているが、今回の契約で海外事業の拡大に弾みがつきそうだ。なお、同社が15日に発表した24年12月期第1四半期の連結営業利益は前年同期比66.7%増の11億500万円で、たこ焼チェーン「築地銀だこ」の既存店売上高が堅調だったことなどが寄与した。

物語コーポレーション <3097> [東証P]は20日、7月にも香港に現地法人を設立すると発表した。同社は中期経営計画「ビジョン2025」で日本・海外における「業態開発型リーディングカンパニー」の実現を掲げており、海外事業の更なる強化を図る考え。国内では焼肉部門やラーメン部門などが好調で、10日に発表した24年6月期第3四半期累計の連結営業利益は前年同期比22.0%増の68億7400万円で着地した。

ゼンショーホールディングス <7550> [東証P]は14日、25年3月期通期の連結営業利益予想を前期比16.4%増の625億円とし、連結売上高は同11.8%増の1兆800億円と国内外食企業で初めて1兆円を超える見通しだと発表。今期の既存店売上高は前期比6.8%増を予想し、新規出店は1450店舗(うち海外が1321店舗)を計画している。

トリドールホールディングス <3397> [東証P]は14日、25年3月期通期の連結営業利益が前期比21.1%増の141億円になるとの見通しを公表。主力の「丸亀製麺」が堅調に推移するとみているほか、海外事業の伸びを見込んでいる。4月29日には切りたて牛肉専門店「肉のヤマ牛」のポップアップ店を香港にオープン。国内では24店舗を展開しているが、同社は香港での出店を皮切りにグローバル展開を加速させる計画だ。

イートアンドホールディングス <2882> [東証P]は主力の「大阪王将」の関東ドミナント出店と海外店舗の拡大を進める構えで、4月11日に発表した25年2月期通期の連結営業利益予想は前期比20.8%増の12億8000万円となっている。グループの海外事業を担うイートアンドインターナショナルは中国・台湾・タイ・シンガポールで計30店舗を展開(24年2月末時点)しており、7日には中国・上海で3店舗目となる「OSAKA FUN DINING大阪王将 上海ららぽーと店」をオープンした。

回転ずし大手の「スシロー」を運営するFOOD & LIFE COMPANIES <3563> [東証P]は4月25日、日本や香港で80店舗以上を展開する大衆寿司居酒屋「杉玉」の米国1号店をボストンにオープンした。同社は海外事業の拡大に注力しており、26年9月期には400店舗以上と20年度からの6年で約10倍にする計画。国内では「スシロー」の既存店売上高が堅調に推移しており、10日には24年9月期通期の連結営業利益予想を前期比2.0倍の220億円(従来予想は115億円)に上方修正している。

このほかでは、米国焼鳥店「HASU」の運営を開始したエターナルホスピタリティグループ <3193> [東証P]、日本食などを提供するグループ会社が米国を中心に今後5年間で10都市に150店舗の展開を計画するラウンドワン <4680> [東証P]、4月にアラブ首長国連邦(UAE)の現地法人と合弁契約を締結したコロワイド <7616> [東証P]、3月にフィリピン第1号店をオープンしたグルメ杵屋 <9850> [東証P]などが海外事業を活発化している。

●厨房機器を手掛ける企業にも注目

外食企業が海外展開するうえで、品質と生産性を確保するための重要な要素のひとつが厨房機器の調達だ。最近では独自の厨房機器開発を伴うメニューの特性がその店の目玉になっている場合も少なくなく、厨房機器メーカーの海外ビジネスは更なる拡大が期待できる。

こうしたなか、フジマック <5965> [東証S]は4月に新たにインドネシアに現地法人を設立した。東南アジア市場における持続可能な成長を目指し、同国での事業拡大を図ることが主な目的。同社は1982年のシンガポール現地法人設立以降、アジア各国で営業拠点の展開を進め、地域特有のニーズに応える厨房設計提案、現場施工、メンテナンスの一貫サービスを提供している。

ホシザキ <6465> [東証P]の海外売上高比率は24年12月期第1四半期時点で47.6%となっており、前年同期から4.8%上昇。フクシマガリレイ <6420> [東証P]は、中国・上海、香港、フィリピン、台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、カンボジア、インドネシア、ミャンマーに海外グループ拠点を持つ。

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