新興市場見通し:年初来安値更新の厳しい状況のなか、久々のIPOが投資家心理改善につながるか
■反発のきっかけを逸し年初来安値を連日で更新
今週の新興市場は続落。同時期の騰落率は、日経平均が-0.36%だったのに対して、グロース市場指数は-3.17%、グロース市場250指数は-3.92%と新興市場の弱さが目立った。新興市場の決算発表も一巡し、証券会社のレポートが徐々に出始めたことで、見直しの動きが強まる可能性もあったが、グロース市場Core指数構成銘柄などの主力処は総じて弱いまま。グロース市場指数、グロース市場250指数はともに年初来安値を連日で更新した。売買代金を伴い急落するセリングクライマックスは見られず、じりじりと値を下げたことで反発のきっかけを逸した状況といえよう。投資家心理は悪化の一途をたどっており、押し目を入れにくくなっている。
時価総額上位銘柄ではJTOWER<4485>が上場来安値を更新したほか、ウェルスナビ<7342>が5日続落で年初来安値を更新。カバー<5253>、ジーエヌアイグループ<2160>、弁護士ドットコム<6027>、BASE<4477>も年初来安値を更新した。一方、メディアに取り上げられたことなどが材料視されたGENDA<9166>が盛り返したほか、シーユーシー<9158>は週末、上場来安値更新手前で切り返した。その他の銘柄では、DWTI<4576>が無担保社債と新株予約権発行発表に伴い希薄化懸念が先行して売られたほか、日本電解<5759>は継続疑義の前提に関する事項で注記を追記したことで5日続落した。一方、エヌビディア決算への思惑が波及したことでKudan<4425>、Laboro.AI<5586>、エーアイ<4388>、キャスター<9331>などAI関連銘柄の一角に物色が向かった。
■約1カ月ぶりのIPOが投資家心理改善につながるか
来週の新興市場は、引き続き厳しい地合いが続くと想定する。主力株の多くがじりじりと年初来安値を更新しており、反発のきっかけがつかみにくい。新興市場が活性化するきっかけの一つとして、東京証券取引所が進める「企業統治強化」に注目していたが、5月21日に行われた「市場区分の見直しに関するフォローアップ」のなかで「グロース市場における投資者への情報発信の充実に向けた対応について(案)」を見る限り、目新しい内容とはいいがたい内容だった。グロース市場への影響も限定的だった。東証によるグロース市場の企業統治強化は、反発のきっかけの一つとして期待していただけに、新興市場は一段と厳しい状況に追い込まれたと考える。
一方、来週は28日に学びエイド<184A>がグロース市場に上場する。約1カ月ぶりの新規株式公開(IPO)となることから、手掛かり材料に乏しい地合いも影響して、関心は向かいやすいだろう。同社が盛り上がることで直近IPO銘柄にも物色が波及する可能性はある。とりわけ、レジル<176A>、トライアルHD<141A>、SOLIZE<5871>は初値を上回って推移していることから、他のIPO銘柄よりも関心が高まるかもしれない。直近IPO銘柄が賑わうことで、投資家心理が少しでも改善するか注目したい。
《FA》