富田隆弥の【CHART CLUB】 「荒い値動き想定、チャートは注意信号」
◆ジリジリと戻り歩調にあった日経平均株価だが、動きが荒くなってきた。5月30日には502円安と3日続落し、この日の下げ幅は一時939円に達した。3月以降のチャートを見ると、3月22日に付けた史上最高値の4万1087円から4月19日安値の3万6733円までおよそ1カ月下落。そこから1カ月かけて5月20日高値の3万9437円まで戻したが、30日の下落で25日移動平均線に続き75日線を割り込んだ。週足チャートでは4月中旬以降、13週線を下回って推移しており、再び調整(二段下げ)の気配を漂わせている。
◆米MSCIは5月末に、世界の機関投資家などがベンチマークとする「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」の銘柄入れ替えを実施し、日本株を14銘柄減らす(新規採用1銘柄、除外15銘柄)。5月終盤の下落は、これを受けた一時的な需給によるものと見ることもできる。
◆一方、NYダウは5月20日の史上最高値4万0077ドルから5月29日安値の3万8413ドルまで4.2%調整し、25日線と75日線を割り込んだ(本稿執筆時点)。米国ではインフレの高止まりを背景に、連邦準備制度理事会(FRB)による早期利下げ観測が後退し、金利が上昇している。FRBの金融政策を占う上で、31日に発表される個人消費支出(PCEデフレーター)や、6月以降に公表される経済指標がその都度注目されることになる。
◆東京市場は6月14日にメジャーSQ(先物・オプション取引の特別清算指数算出)を控え、6月に入ると先物主導で株価は振れやすくなる。大きく下げたことで、売り方の買い戻し(ショートカバー)により相場は戻す可能性もある。また、サポートラインの26週線(30日時点3万7240円)に近づいたことで目先反発してもおかしくはない。
◆とはいえ、日経平均株価は「4万円」回復によるチャートの「好転」を確認できぬまま下落に転じている。個人投資家の押し目買い意欲は旺盛で、信用取引の買い残高は4兆7400億円(24日申込み時点)と約18年ぶりの水準に膨れているが、その評価損益率は-7.17%と、3月22日時点の-2.55%から悪化傾向にある。日経平均株価が早期に好転しないと、個別株の採算はさらに厳しさを増しかねない。
◆動きが荒くなってきた株式市場。大きく下げれば大きく戻すこともあるだろうが、チャートの好転(日経平均株価の4万円回復)を確認するまでは相場に楽観は抱けない。個別株投資では様子見も一策であるし、短期勝負ならば「突っ込み買い、吹き値売り」といった機敏な対応が求められるだろう。
(5月30日 記、次回更新は6月8日10時を予定)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
株探ニュース