資産540倍化のすご腕さんが、親子上場の解消で今期待の銘柄とは!
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 マック・チェリーさんの場合-第2回
約20年間で100万円を、5億4000万円に増やした兼業投資家。資産拡大の原動力が、M&A(合併・買収)やTOB(株式公開買い付け)に着目したイベント・カタリスト投資。株式投資を始めたのは中学生のとき。同級生の間で大手証券会社提供の仮想株式投資ゲームが流行、また当時、村上ファンドが世間を賑わしたこともきっかけになった。親から援助を受けて、証券口座を開くと、不祥事を起こした三菱自動車に投資し、リターンを生んだ。新卒入社したメガバンクでは、大企業の資本戦略を支援する業務などに従事し、現在は家業の不動産会社の経営に関わる。趣味はゴルフ、サウナ、食べ歩き。
第1回記事「狙うは親子上場、『割安・上場子会社』に先回り投資で5億円超え」を読む
"親子上場の解消"イベントに注目して、割安評価を強いられている"上場子会社"に先回り投資で稼ぐマック・チェリーさん(ハンドルネーム)には、前回紹介したアルプス物流<9055>以外にも、さまざまな成功事例がある。
その一部が、以下の銘柄リストになる。いずれも持ち分法適用会社を含む"上場子会社"で、目論見通り現在は上場廃止となっている。
シリーズ2回目は過去の成功銘柄と、足元で期待している銘柄などについて見ていく。
■過去に成功した銘柄の一例
銘柄名<コード> | 上場廃止 |
日立国際電気<6756> | 2018年03月 |
日立ハイテク<8036> | 2020年05月 |
LIXILビバ<3564> | 2020年10月 |
ケーヒン<7251> | 2020年11月 |
富士通フロンテック<6945> | 2020年12月 |
日立物流<9086> | 2023年02月 |
ケーヨー<8168> | 2024年01月 |
八千代工業<7298> | 2024年01月 |
IJTT<7315> | 2024年03月 |
サンウッド<8903> | 2024年03月 |
"会心の取引"は、富士通フロンテック
上の成功事例のなかで本人が会心の取引と振り返るのが、電子機器メーカーの富士通フロンテック<6945>(現在は上場廃止)だ。2020年5月27日に取得開始し、約2カ月後の8月4日に利確した。獲得したリターンの額は1471万円だ。
きっかけは19年末頃の一部月刊誌の報道だ。富士通<6702>が親子上場の解消に向けて動き始めていると報じられ、グループ再編の思惑が強まった(参考)。その中で注目したのが、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割れていた富士通フロンテックだった。
株価水準の面では合格だったが、この時は即座に打診買いをしなかった。新型コロナウイルスの感染拡大への警戒感から、相場の先行き不透明感が強まっていたためだ。本人はキャッシュポジションを増やして、相場動向をウォッチし続けていた。
■富士通フロンテックの株価チャート(2019年9月~20年9月)
出所:みんかぶ
富士通と決算発表日が同じになったことに注目
富士通フロンテックに買い出動したのは、コロナ暴落からの反発トレンドが出てきた20年5月下旬。注視し始めてから、約半年たったころだ。
最終的には9万1100株まで持ち分を増やした。ここまで強気買いをしたのには、富士通と富士通フロンテックの21年3月期第1四半期決算の発表日がどちらも7月30日と同じになったことや、追加の観測記事も出ていたことから、「なにか起こるはず」と確信を深めたことがある。
見立ては的中。7月30日の1Q決算の発表と同時に、富士通が富士通フロンテックを対象にTOB(株式公開買い付け)を実施する旨が公表された。これを受け、富士通フロンテック株はTOB価格の1540円近くまで急騰したことから、マック・チェリーさんは利確した。
本人がこの取引を会心だとするのは、カタリスト(株価変動のきっかけ)の発生を1Q決算の発表日、買い手は親会社の富士通になるとの予想が的中したからだ。
このケースでは、買い手が親会社である事業会社になった。事業会社が買い手になる場合、ファンドになる場合と比べて、「TOB価格が渋くなる可能性が高い」と、投資対象から外す戦略の投資家もいる。
しかし、マック・チェリーさんは、買い手が誰になるかはこだわらない。前回の記事で触れたように、マック・チェリーさんが物色の対象とするのは、PBR1倍未満の割安株に絞っているためで、TOB価格がPBR1倍を上回りさえすれば、リターンを着実にゲットできる。
TOBに応募する株主の状況を考えれば、通常、TOB価格が会社の解散価値とみなされるPBR1倍割れの水準になることは考えにくいことから、マック・チェリーさんは割安・上場子会社にターゲットを絞っている。
さまざまなメディアの情報を活用
富士通フロンテックに注目したきっかけが月刊誌だったように、マック・チェリーさんはさまざまな情報にアンテナを張り、グループ再編の思惑が強まった銘柄が出てきたら監視対象としている。その中には、年間購読の紙媒体も含まれ、先に触れた月刊誌やビジネス誌などを愛読している。
また日経電子版やロイターなどのニュース、さらにX(旧ツイッター)でこれぞと思う人はフォローして、「仕事の合間に、こまめにチェックしている」(本人)。『株探』では「明日の好悪材料」を定期的にチェックしている。
季刊の『会社四季報』(東洋経済新報社)も発売するたびに購入し、PBR(株価純資産倍率)や時価総額、株主構成には必ず目を通す。上位株主にアクティビスト(物言う株主)が浮上していれば、ウォッチリストに加えている。
『四季報』のチェックは、トイレで行う。本人曰く「トイレが最も集中できる場所」とのこと。トイレには、簡易な本棚を据え付けて、政治や経済など話題の書籍を置き、日々の読書に勤しんでいる。
■マック・チェリーさんが集中できる場所で愛読している『会社四季報』
注:本人提供
ポートフォリオの80%が、"上場子会社"
こうして「親子上場が解消される可能性がある」と判断して保有している銘柄数は、足元で20程度になる。
これらの銘柄は、日本株のポートフォリオの中では、時価評価額ベースで全体の80%を占めている(下の円グラフ)。残りの20%はサテライトで運用している配当狙いの大型株だ。
イベント狙いの場合、保有期間は短い場合で数カ月、長い場合は4~5年と比較的幅がある。イベントが発生する時期は、銘柄によってまちまちであるためだ。
配分については、原則、1銘柄につき少数単元で保有しているが、イベント発生の確度が高まった銘柄が出た場合は、信用取引を活用して一時的に配分を集中することもある。
こうした方針のもと、足元で保有している銘柄は、どのような顔ぶれになっているのか。そのリストは、次のページに並べている。
■日本株のポートフォリオ
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。