明日の株式相場に向けて=“SQ週の魔の水曜日”ブレークできるか
きょう(11日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比96円高の3万9134円と続伸。続伸はしたが、値下がり銘柄数が全体の62%を占めており、実質的には相場はひと押し入れた感触。TOPIXの方はマイナス圏で着地した。
日本時間あす夜9時半に5月の米消費者物価指数(CPI)が発表されるが、結果がどうあれその余韻に浸る間もなく、日本時間の明後日(13日)未明、午前3時にFOMCの結果が公表、更にその30分後にパウエルFRB議長の記者会見が行われる。米CPIについては総合指数の伸び率が前年同月比3.4%予想で、これは4月から横ばい見込み。また、エネルギーと食品を除いたコア指数の方は同3.5%予想で、4月の伸び率は3.6%だったので、こちらは減速が見込まれている。
米CPIが想定通りであれば、おそらくFOMCも大方が予想する範囲の内容で相場は強調展開が維持されそうだ。今回の会合での政策変更は行われない見通しだが、それは百も承知、マーケットの視線はドットチャートと会合後のパウエルFRB議長の記者会見に向いている。年内の利下げ見通しについて、ドットチャートは前回3月会合時点で年3回との見方だったが、今回の会合で2回、場合によっては1回に減る可能性が高い。しかし、「年3回の利下げが難しいということはマーケットの方ではとうに織り込んでいて、ドットチャートの開示を固唾を飲んで見守るような状況ではない」(中堅証券ストラテジスト)という。「年2回・利下げスタートは9月のFOMC」というのが今回のメインシナリオであり、米国株市場もこれを大本線として織り込み、シナリオ通りであればおそらく株価は上値追い基調を強めることが予想される。
米株市場ではNYダウの戻りがやや遅れているが、前日はハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数と、機関投資家がベンチマークとして重きを置くS&P500指数は揃って史上最高値を更新している。重要イベントラッシュで様子見ムードといわれながらも、実際は紛れもなく強気相場の様相を呈している。いきり立つ競走馬の手綱を締めてフライングを抑えているような構図に見えなくもない。FOMC通過後に首尾よくNYダウをはじめ主要株価指数が上げ足を強めれば、日本株にも浮揚力が加わることになる。
ただし、日本は週末14日に日銀の金融政策決定会合の結果発表と大引け後の植田日銀総裁の記者会見を控えている。FOMCを前門の虎とするならば、こちらは後門の狼といえる。あすは“SQ週の魔の水曜日”ということもあり、その点、波乱を演出する舞台としては申し分がない。しかし、市場関係者からは「売り方も仕掛けるだけの胆力は持ち合わせていない」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘がある。今回の会合において「国債買い入れ減額」と「7月の追加利上げ」観測が既にメディアで喧伝されているような状況にある。国債買い入れについては現状で6兆円程度という線引きがなされているが、減額するとしてこれを何兆円程度減らすのか、株式市場への影響はその幅にもよる。
ところが、ここにきて「(国債購入について)『サプライズ減額なし』という選択肢も考えられる」(同)という見方が浮上している。仮にそうなれば、ショート筋は悶絶することになる。更に、植田総裁が7月追加利上げ観測をいったん沈静化させる可能性も指摘される。世界的に利下げが相次ぐなか、「このタイミングで世界と真逆の政策カードを切ることをためらうのでは」(同)という見立てである。明らかに今の日本国内の景気は強いとはいえない。日銀が利上げを急ぐのは、インフレの元凶となる円安を何とかしたいという一心で、拙速な利上げを断行すれば円安以上の弊害が生じ、景気をオーバーキルする懸念が拭えない。そうなれば本末転倒である。また、こうした折、タイミングを合わせるように日本株に欧米系ファンドが食指を動かしているという報道がなされており、海外資金の東京市場上陸の足音が、売り方の動きを封じる無言の圧力を加えている。いずれにせよ、週末から来週にかけての日米株式市場の動きは今年前半の最大のヤマ場となりそうだ。
あすのスケジュールでは、5月の企業物価指数に注目。海外では5月の中国CPI、5月の中国PPI、タイ中銀の政策金利発表、5月の米CPI、5月の米財政収支など。また、米連邦準備制度理事会(FOMC)の結果とパウエルFRB議長の記者会見にマーケットの関心が集まる。なお、この日はフィリピン市場が休場となる。(銀)