中国の主要電力株は、国債利回り低下と生成AIのダブルで追い風【フィリップ証券】
■日本の1990年代を彷彿とさせる中国の国債市場
中国では、不動産不況に直面し、株式投資に対する根強い不信感なども背景として、行き場を失ったマネーが国債市場になだれ込んでいる。中国の10年物国債(ベンチマーク債)利回りは4月下旬に一時2.205%と2000年以降で最低水準となり、中国人民銀行が「合理的水準」として示唆する「2.5~3%」を下回ったまま推移している。
5/17に発行が始まった30年物超長期特別国債は取引所市場で個人資金主体のマネーゲームで価格が乱高下状態だ。超長期特別国債は今年3月の全人代(全国人民代表大会)で24年に1兆元(約22兆円)の発行方針を表明、重要な国家プロジェクトや国家安全に関する分野に投資し財政赤字には算入されないとされている。
このような国債人気は、低利の長期資金調達という面では中国政府にメリットがある一方、不動産不況をきっかけとした「日本化」の表れとして、優良な貸出先を見つけられない、体力の弱い農林金融機関が国債に資金を集中せざるを得ない苦しい胸の内も窺われる。平成バブル崩壊後の日本国債10年利回りは不動産不況を主因とする「バランスシート不況」の拡がりとともに1998年に1%を割り込むまで低下したことが想い起される。中国国債も同様の途を辿る可能性は否定できないところだ。
■中国5大電力グルーフ゜傘下企業への追い風加速へ
中国の国債人気が続いて長期金利の低下傾向が長引くとした場合、金利低下の恩恵を受けるべき業種は、不動産開発企業を除く消去法で見た場合、電力関連企業が投資対象として浮上する。
中国は電力システム改革の流れの中で2002年に「発送電分離」を行い、発電、送配電、発電設備設計・建設の3つの部門に所有権が分けられた。そこで誕生した発電企業グループが「中国5大電力グループ」であり、その傘下の香港上場企業として、華能国際電力[フアネン・パワー](902香港)、中国電力国際[チャイナ・パワー・インターナショナル・ディベロプメント](2380香港)、華電国際電力[フアデン・パワー](1071香港)、大唐国際発電[ダータン・パワー](991香港)の4社がある。この内、中国電力国際が「レッドチップ」(中国資本30%以上ほかの要件をみたす企業で、中国本土外で登記)、その他がH株(中国本土登記)である。
中国は米国による輸出規制を受けて先端半導体の輸入・調達が困難となっているものの、国策により生成AI(人工知能)開発を強化している。AIによる機械学習や深層学習のためにはデータセンターで大量の電力を消費する必要があることから、電力需要増加が今後加速することが考えられる。国務院直属の複合企業である華潤集団の傘下で石炭火力発電を行う華潤電力控股[チャイナ・リソーシズ・パワー・ホールディングス](836香港)含め、昨年末以降の株価上昇トレンドは続くとみる余地があろう。
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