早稲アカ Research Memo(7):2025年3月期も塾生数増加と売上単価上昇により収益拡大を見込む
■早稲田アカデミー<4718>の今後の見通し
1. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績は売上高で前期比5.7%増の34,741百万円、営業利益で同2.7%増の2,966百万円、経常利益で同1.8%増の3,003百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同9.6%減の1,927百万円となる見通しだ。売上高は塾生数増加や売上単価の上昇に加えて、新規事業の貢献により14期連続増収を見込む。人的投資やシステム投資、広告宣伝費等が増加するものの増収効果で吸収し、営業利益及び経常利益も4期連続で増益となる見通しだ。親会社株主に帰属する当期純利益については、賃上げ促進税制適用に伴う税額控除分が前期から減少するとの想定で減益を見込んでいる。
なお、上期の業績計画については売上高で前年同期比5.5%増の16,865百万円、営業利益で同24.7%減の1,034百万円と増収減益で見込んでいる。これは広告宣伝費を上期に集中して投下することが主因だ。高校バレーボールを題材にした人気漫画「ハイキュー!!」とコラボしたプロモーションを展開していく。既に交通広告を2024年5月から開始したが、中学生や高校生からの問い合わせ件数が急増するなど、すでに広告効果が出始めている。
(1) 部門別売上高と塾生数の見通し
部門別売上高は、小学部で前期比5.8%増の20,620百万円、中学部で同2.8%増の11,985百万円、高校部で同18.9%増の1,862百万円となる見通しだ。前提となる期中平均塾生数は、小学部で同2.7%増、中学部で同0.7%減、高校部で同9.0%増となり、合計では1.8%増の48,209人を計画している。高校部については2024年3月に開校した東進衛星予備校の寄与を見込んでいる。開校後の立ち上がりは緩やかなものの、卒塾生へのアプローチを強化しながら育成していく考えだ。
塾生当たり売上単価は平均で4%弱の上昇を見込んでいる。主な要因とすると、2025年3月期に小・中・高校部ともに売上単価の高い受験学年の構成比が上昇すると見ている。実際、中学部門では4月以降の3年生が前年同月比で約4%増と堅調に推移しているのに対して、1年生は8%減と低調に推移している。小学部門でも5?6年生は引き続き堅調に推移しているものの4年生以下は微増にとどまっているようだ。受験学年については高い合格実績を背景に、2025年3月期も順調に推移することが予想される。そのほか、2025年3月期は新たにグループ化した幼児未来教育の売上高が1億円強加わることになる。
(2) 校舎展開について
新規開校については、「早稲田アカデミー(小学・中学部)」を2校、「個別進学館」を3校、「東進衛星予備校」を3?4校開校する予定で、これに「個別進学館」のFC校が数校増加するものと予想される。このうち「早稲田アカデミー」については、2024年7月に晴海校(東京都中央区)を開校することが決まっている。晴海は近年人口が増加している湾岸エリアであり、入塾説明会の受付も開始しているが早々に定員が埋まるほどの勢いとなっており、塾生数の増加に寄与するものと思われる。
(3) 営業利益の増減要因
営業利益は前期比で77百万円の増加を見込んでいる。増減要因を見ると売上高の増加1,873百万円に対して、人的投資の増加896百万円(4%強の賃上げ実施、人員増、研修・採用費の増加)、地代家賃の増加329百万円(新規開校、増床移転、賃料値上げ)、広告宣伝・販促費の増加181百万円、合宿費の増加61百万円(対象学年を拡大)、償却費等の増加128百万円(校舎設備、DX投資)、その他費用の増加201百万円を見込んでいる。
売上原価率は前期の69.8%から69.1%と0.7ポイント低下する見通しだ。一部模試の単価引き下げによる模試仕入高の減少等により原材料費率が0.8ポイント低下することが主因だ。一方、販管費率は前期の21.4%から22.3%と0.9ポイント上昇する見通し。賃上げと職員数の増加により労務費が0.3ポイント上昇するほか、広告宣伝費で0.2ポイント、その他費用で0.4ポイントの上昇を見込んでいる。広告宣伝費は新聞折込広告を完全終了しWeb広告等を強化していくほか、人材採用強化のための広告費を積み増す予定となっている。その他費用は「早稲田アカデミーOnline」の機能拡充などDX投資推進による償却費の増加が中心となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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