中部鋼鈑 Research Memo(5):2024年3月期は減収減益ながら、売上・利益とも計画値を達成
■業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
中部鋼鈑<5461>の2024年3月期の連結業績は、売上高67,785百万円(前期比11.2%減)、営業利益10,425百万円(同15.0%減)、経常利益10,228百万円(同17.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益7,133百万円(同16.8%減)と前期比減収減益となった。2023年11月に業績予想を修正し、売上高については67,600百万円(期首70,600百万円)、営業利益については9,900百万円(同10,100百万円)としたが、修正後計画との比較では、売上高は100.3%とわずかに超過、各段階利益については営業利益が105.3%、経常利益が104.4%、親会社株主に帰属する当期純利益が106.5%といずれも予想を上回って着地した。売上高については、第2四半期に実施した電気炉の大型設備工事に伴う操業休止に加え、主力製品である厚板の主需要先である産業機械、建設機械、建築・土木の各業種における設備投資の減少や建築案件の工期遅延等により需要が伸び悩んだことが影響した。21中期経営計画(2021~2023年度)の最終年度ということもあって積極的な営業活動を展開し、計画値はクリアしたものの、好調だった前期業績を上回ることはできなかった。利益面では、鉄スクラップをはじめとする原材料・諸資材価格が前期を下回ったことにより調達コストが低減し、メタルスプレッドの年度平均が前年度を上回ったことが寄与したほか、2023年11月の計画見直し後の販売数量を達成したことにより計画値を上回ったと考えられる。鉄鋼大手は、国内需要の頭打ちへの懸念から設備の休止・集約化を実施して生産能力を削減し、ユーザーに対しては原料・エネルギーコスト上昇分の価格転嫁を近年求めてきた。いわゆる量から質の経営への転換を図る動きが進展している。こうした事業環境もあり、同社においても近年コスト上昇分の販売価格への転嫁が進み、メタルスプレッドの年度平均は前期を上回り高い水準を保っている。
2. 事業別業績概要
(1) 鉄鋼関連事業
売上高は65,020百万円(前期比11.4%減)、セグメント利益は10,019百万円(同15.1%減)と減収減益となった。主力製品である厚板の需要の落ち込みや第2四半期の電気炉大型設備工事に伴う販売数量の減少が響き、前期好業績の反動もあり前期比で減収減益となった。同社の主要な需要先である産業機械・建設機械向けや建築・土木向けの需要は、海外の景気減速により設備投資が減少するとともに、建築案件が慢性的な人手不足や資材高により工期遅延傾向にあることの影響を受け、期中を通じて弱含みのまま推移した。また、電気炉大型設備工事に伴い販売数量が制限されていたこともあり、積極的に販促できない状況にあったようで、顧客からの受注量をコントロールしながら売上収益に結び付けた格好となった。利益面では、鉄スクラップをはじめとする原材料・諸資材価格が期中を通じて前期の水準を下回って推移したことにより調達コストが低減し、調達コストの適正な販売価格への転嫁も進んだことで、メタルスプレッドの年度平均は前期を上回り高水準で推移した。しかし、電気炉大型設備工事に伴う減産の影響で製造コストの固定費分をカバーしきれずにコスト増加となったほか、販売数量減少による減収も影響し、前期比で減益となった。なおセグメント利益率で見ると、2024年3月期は15.4%となり、前期の16.1%から0.7ポイント下落した。
(2) レンタル事業
売上高は685百万円(前期比1.7%増)、セグメント利益は63百万円(同7.4%減)となった。レンタル事業は、子会社のシーケークリーンアドが厨房用グリスフィルターのレンタル事業と広告看板事業を行っている。広告看板の受注が減少した一方、厨房用グリスフィルターのレンタル枚数は順調に増加し、増収に寄与した。しかし増収分で諸経費の増加を賄いきれず、前期比減益となった。
(3) 物流事業
売上高は572百万円(前期比5.9%増)、セグメント利益は208百万円(同21.2%増)となった。物流事業は子会社のシーケー物流が運送・荷役事業と危険物倉庫事業を行っている。需要先の生産活動が回復し、危険物倉庫の取扱高が増加したことにより増収増益で着地した。
(4) エンジニアリング事業
売上高は1,506百万円(前期比12.4%減)、セグメント利益は59百万円(同59.3%減)となった。エンジニアリング事業は、子会社の明徳産業が鉄鋼関連設備を中心とするプラントの設計・施工と設備保全に関するエンジニアリングを行っている。金属加工関連の受注の減少により減収減益となった。
3. 財務状況
(1) 財政状態
2024年3月期末の資産合計は前期末比5,453百万円増の93,548百万円となった。流動資産は現金及び預金が2,610百万円、受取手形及び売掛金が3,714百万円増加した一方で、有価証券が7,599百万円減少したことにより同718百万円増の61,292百万円となった。固定資産は有形固定資産が2,354百万円、投資有価証券が2,663百万円それぞれ増加したことにより同4,735百万円増の32,256百万円となった。
負債合計は未払金が2,055百万円増加したこと、及び未払法人税等が1,107百万円減少したことにより同1,678百万円増の16,053百万円となった。純資産は親会社株主に帰属する当期純利益計上による利益剰余金の増加3,982百万円及び、その他有価証券評価差額金の増加829百万円により同3,774百万円増の77,494百万円となった。この結果、自己資本比率は82.1%と前期比0.8ポイント低下した。
(2) キャッシュ・フローの状況
2024年3月末の現金及び現金同等物は12,016百万円となり、前期末比389百万円減少した。営業活動によるキャッシュ・フローは3,872百万円の収入(前期は10,133百万円の収入)となった。主な要因は売上債権の増加5,520百万円、法人税等の支払4,248百万円などの支出があった一方、税金等調整前当期純利益10,394百万円、減価償却費の計上2,104百万円などの収入があったことである。投資活動によるキャッシュ・フローは285百万円の収入(前期は9,084百万円の支出)となった。主な要因は有価証券の取得14,500百万円、定期預金の預入10,000百万円、投資有価証券の取得3,212百万円、有形固定資産の取得2,772百万円などの支出があった一方、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還17,998百万円、定期預金の払戻13,000百万円などの収入があったことである。
財務活動によるキャッシュ・フローは4,548百万円の支出(前期は1,953百万円の支出)となった。主な要因は配当金の支払3,147百万円、自己株式の取得による支出1,299百万円などの支出があったことである。2024年3月期は減収により営業活動によるキャッシュの収入は減少したが、引き続き潤沢な資金を有効に運用している状況が窺われる。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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