為替週間見通し:上昇一服か、米賃金上昇圧力が弱まればドル失速の可能性
【今週の概況】
■ドル続伸、為替介入見送りで1986年12月以来の161円台
今週のドル・円は続伸。1986年12月以来となる161円27銭までドル高・円安が進行した。160円手前で為替介入が実施されるとの見方があったが、160円を超えた後も米ドル売り・円買いの為替介入は実施されなかったことから、リスク選好的なドル買い・円売りが活発となった。日米金利差が短期間で縮小する可能性は低いとみられていることがドル買い材料となった。6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」で日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することが期待されたが、円安進行について特段の懸念が表明されなかったこともドル買い・円売りを促す一因となったようだ。26日の欧米市場で160円台後半まで一段高となり、28日の東京市場で鈴木財務相は為替が過度な変動かどうかの認識についてコメントしなかったことを受けて161円27銭までドル高・円安が進行した。
28日のニューヨーク外為市場でドル・円は、160円26銭まで下落後、160円96銭まで上昇した。この日発表された5月コアPCE価格指数が市場予想と一致し、米長期金利が低下したことから、一時ドル売りが優勢となった。しかしながら、6月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値の上方修正を受けて金利は上昇し、リスク選好的なドル買いが再び活発となった。ドル・円は160円90銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:158円82銭-161円27銭。
【来週の見通し】
■上昇一服か、米賃金上昇圧力が弱まればドル失速の可能性
来週のドル・円は上昇一服か。米国財務省が公表した為替報告で為替操作国の監視リストに日本が加えられたが、1ドル=161円を超える水準で為替介入が実施される可能性は残されている。6月30日投開票のフランス議会選で右派勢力が躍進すれば、7月7日の決戦投票に向けリスク回避のユーロ売り・円買いが強まる可能性があることも短期的なドル・円の相場動向に影響を与えそうだ。7月5日発表の6月米雇用統計で賃金上昇圧力は多少弱まると予想されていること、円安進行を受けて日本銀行は次回7月開催の金融政策決定会合で追加利上げを検討する可能性があることもドル高を抑制する一因となり得る。
【米・6月ISM製造業景況指数】(7月1日発表予定)
7月1日発表の6月米ISM製造業景況指数は49.0と、節目の50を下回る見通し。ただ、前月の48.7から改善が期待され、市場予想を上回った場合、引き締め的な政策を後押しする材料になろう。
【米・6月雇用統計】(7月5日発表予定)
7月5日発表の米6月雇用統計では失業率は4.0%、非農業部門雇用者数は前月比+18.5万人の市場観測。賃金上昇圧力が低下すればドル売り要因に。
ドル・円の予想レンジ:159.00円-162.00円
《FA》