7月のドル円は乱高下か【フィスコ・コラム】

市況
2024年6月30日 9時00分

ドル・円相場は37年超ぶりの高値圏に浮上し、日本政府が4月末に続き為替介入に踏み切るか注目されています。7月末にかけて日米中銀の政策決定も予定され、市場の観測は交錯。重要イベントが目先の方向性を決める可能性もあり、値動きには目が離せません。

6月にカナダ銀行と欧州中央銀行が利下げ、スイス国立銀行が追加利下げを相次いで決定。対照的に、米連邦準備制度理事会(FRB)は国内インフレ率の低下が不十分とし、引き締め的な金融政策の長期化が見込まれ、ドル選好地合いを強めています。その影響でドル・円は4月末の直近高値160円21銭を上抜け、プラザ合意を受けた下落の際に付けた1986年以来の水準に浮上しました。

ドル・円は目下、日米両政府の思惑の違いで神経質な値動きとなり、160円台でのもみ合いが続いています。米財務省は直近の為替報告書で日本を為替操作国の監視リストに加え、4月末から5月にかけて実施した9.8兆円規模の為替介入を問題視。それにより介入を封じられたとの見方から円売りが続く一方、日本は円安けん制で介入の再実施をちらつかせ円安のペースを鈍らせています。

前回の為替介入の時は日銀金融政策決定会合とその直後の連邦公開市場委員会(FOMC)の2営業日で5円程度上昇したことから、勢いを止めるとの口実で日本の介入には正当性があったように思われます。それに比べ今回の160円台は上昇ペースが緩やかなため、同水準での「実弾投入は困難」と短期筋。仮に実施しても、ドル選好地合いに飲み込まれ、効果は短期にとどまるとの見方もあります。

歴史的な円安を止めるのは、アメリカの物価上昇圧力の一服でしょう。7月発表の消費者物価指数(CPI)やコアPCE価格指数が前回を下回れば、引き締め的な金融政策の長期化を見込んだドル買いは後退が見込まれます。そして7月30-31日のFOMCで当局者がタカ派姿勢を緩めるシナリオが考えられます。その際には早期利下げ観測が再浮上し、ドル選好地合いは巻き戻しが予想されます。

もう1つは、同じタイミングで開催される日銀金融政策決定会合での大規模な国債買入れ減額と追加利上げでしょう。植田和男総裁は6月の会合後の記者会見で利上げの可能性に言及しており、市場も織り込みを進めています。ただ、減額や利上げの規模が想定内なら、逆に失望による円売りを招くことになり、ドル・円の当面の想定レンジは160-170円に切り上げられるでしょう。

7月はフランス議会選の投票結果など政治情勢も市場を揺るがす材料になり、大相場がみられそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《ST》

提供:フィスコ

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