エヌ・シー・エヌ Research Memo(3):SE構法により資産価値の高い木造建築を提供(1)

特集
2024年7月11日 13時03分

■エヌ・シー・エヌ<7057>の事業概要

1. 木造耐震設計事業

木造建築の耐震性を確保するための高度な構造計算を事業化するとともに、構造計算された耐震性の高い木造建築を実現するために鉄骨造やRC造で主流だったラーメン構法を木造住宅に取り入れた同社独自の建築システムであるSE構法を、全国約600社のSE構法登録施工店(工務店)を中心としたネットワークを通じて提供する。

(1) 住宅分野(SE構法)

施主よりSE構法による木造建築を受注した登録施工店に対して、設計段階で構造計算書を出荷するとともに、建設段階で構造加工品等を販売している。また登録施工店からは登録料及び月会費を受領している。SE構法とは、高い耐震性と大空間の両方を兼ね備えた最先端の木構造技術である。SE構法の構造躯体に使用する木材には、品質が高く一定の強度が保たれた構造用集成材を採用している。柱と梁をつなげる部分にSE金物を使うことで断面の欠損が少ない構造になるというメリットがある。また、大きな地震による揺れが発生したときに、最も壊れやすい部分である柱と基礎の連結部分には、柱脚金物という金物を配することで引き抜き耐力が大きく向上した。木材や接合する金物が高い強度を持つことは大きな要素であるが、SE構法が地震に強いと言える最大の理由は構造計算を行っている点だ。SE構法は鉄骨造やRC造と同様に、木造住宅で数値に裏付けられた構造計算を行い、保証をつけて販売することにより、資産価値の高い家を提供する。これまでSE構法を取り入れた住宅による大震災での倒半壊はゼロである。

a) ネットワーク展開(住宅分野ネットワーク展開)

SE構法による耐震性の高い木造住宅のさらなる普及に向けて、同社は登録施工店の獲得とネットワークの強化を図っている。2024年3月期のSE構法登録施工店数は606社、2025年3月期は前期比36社増を計画しており、会費の収入は安定的に増えている。「重量木骨の家」は全国のSE構法登録施工店606社の中から選び抜かれた工務店「重量木骨の家プレミアムパートナー」がSE構法を利用して建築する資産価値の高い家の総称であるが、DX推進により登録施工店とのパートナーシップを活用し、YouTubeを使ったデジタル展示場や、Instagramを取り入れた訴求を促進する。

b) ハウスメーカー対応(OEM供給)

規格型住宅を販売するハウスメーカー(大手ハウスメーカー数社を含む)等パートナー企業に対して、SE構法をOEM提供する。パートナー企業が規格型住宅を販売する際に、同社は構造計算書を出荷するとともに構造加工品等を販売する。「無印良品の家」を提供する持分法適用関連会社のMUJI HOUSEによる「陽の家」は、平屋で廊下も必要としないワンフロアであり、二拠点居住のほか、貸別荘などの宿泊施設であるVilla(ヴィラ)としてのニーズが高い。なお、MUJI HOUSEは、(独)都市再生機構(UR都市機構)と団地リノベーションを拠点に地域の活性化を促進する事業にも取り組んでいる。

(2) 大規模木造建築(非住宅)分野

大規模木造建築(非住宅)分野では、延床面積500m2以上の木造建築に対してSE構法の提供を行っている。「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行(2010年10月)、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(2021年10月改正)等により、構造計算が必要となる大規模木造建築の建設需要が高まるなか、同社では木造建築の耐震設計ノウハウを大規模木造建築へ転用し、事業規模の拡大を推進している。大規模木造建築は、鉄骨造やRC造と比べると軽量で、施工コストや工期を抑えられるといった特長がある。

同事業分野は森林保全や地球温暖化による環境問題などから、建築物の木造化、木質化が世界的に推進されているなど成長著しい分野であり、成長を加速させるため、木造プレカットCAD開発トップシェアのネットイーグル(株)とSE構法以外の構法も扱う大規模木造建築(非住宅)分野の構造設計事業について業務提携し、2020年2月に合弁会社である木構造デザインを設立、同年10月にゼネコンや設計事務所とプレカット工場をつなぐ日本初の大規模木造マッチングプラットフォーム事業を開始した。木構造デザインが、構造設計サポートと加工サポートに加えて、プレカット工場ネットワークの組成により生産体制を整備することで、ゼネコンや設計事務所向けの広告宣伝活動を行うと同時に、構造設計から生産設計までワンストップでサービスを提供する。構造設計サポートでは、建築物の用途・規模等に応じて工法提案(SE構法、在来軸組構法※1、2×4工法、集成材構法、CLT※2構法など)を行い、同社で培った25,000棟以上の構造計算ノウハウを他工法に転用し構造計算をすることで、大規模木造建築市場でのシェア拡大を目指す。

※1 在来軸組構法:日本古来の工法を簡略化・発展させた構法。

※2 CLT:板の層を各層で互いに繊維方向が直交するように積層接着した厚型パネル。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

《AS》

提供:フィスコ

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