ミロク情報 Research Memo(7):顧客基盤の拡大等により2029年3月期に経常利益120億円を目指す(1)
■今後の見通し
1. 新たな「中期経営計画Vision2028」
(1) 「中期経営計画Vision2028」の概要
ミロク情報サービス<9928>は2025年3月期から2029年3月期までの5カ年の「中期経営計画Vision2028」を発表した。「ビジネスモデル変革と新たな価値創造へのチャレンジ」をテーマに掲げ、ビジネスモデルの変革(サブスクモデルへの移行)と新規顧客の獲得による顧客基盤の拡大に取り組むことで、2029年3月期に連結売上高600億円、経常利益120億円、ROE18%を目指す。5年間の年平均成長率は売上高で6.4%、経常利益で13.7%となる。
同社単体のERP事業については、売上高で年率5.2%増の500億円、経常利益で同7.7%増の100億円と着実な収益成長を目指す。高度なワンストップソリューション、DXコンサルティングによって積極的に新規顧客を開拓し顧客基盤を拡大していくこと、SaaS型ERP製品の開発・拡販とサブスク型モデルへの移行を進め、カスタマーサクセスによるLTVの最大化に取り組むことで目標達成を目指す。
また、統合型DXプラットフォーム事業については、主力サービスとなる「Hirameki 7」のコンテンツ拡充と有料プラン契約率の向上に取り組むこと、またグループ会社の製品・サービスだけでなく他社サービスとの連携を拡充していくことでプラットフォームとしての競争力向上を図り、2029年3月期に売上高25億円、経常利益10億円を目指す。DXプラットフォーム事業以外のグループ会社については新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)以降低迷が続いていたが、人的リソースの強化を進めるなど体制強化を図ったことで、2024年3月期は売上高で70億円、経常利益で3億円の規模となった。今後はグループ内の位置付け、役割を再定義しグループ体制の再編・強化に取り組むことで収益体質を改善してグループシナジーを創出し、2029年3月期に売上高90億円、経常利益10億円まで引き上げていく考えだ。
サブスク型収益モデルへの移行のイメージとしては、主力ERP製品のサブスク契約率を2024年3月期の15.5%から2029年3月期は60%まで引き上げる計画となっており、サービス収入の積み上げ(MJS単体サービス収入比率40%→60%)により経常利益率も2024年3月期の14.3%から2029年3月期は20%まで上昇する見通しだ。
同社は「中期経営計画Vision2028」で掲げた戦略に取り組むことで、今回同時に策定した「サステナビリティ2030」のビジョン(お客様を大切に、そして社員の幸せを!)の実現と、マテリアリティとして特定した1) DX推進による地球環境への貢献、2) 会計事務所と中小企業の経営革新、成長・発展を支援、3) 多様なプロフェショナル人材が活躍する働きがいのある職場づくり、4) 健全成長のためのガバナンス強化を推進していく。
(2) 基本戦略
中期経営計画におけるグループ共通の成長戦略として、ビジネスモデルの変革(サブスクモデルへの移行)、新規顧客の獲得による顧客基盤の拡大、LTVの最大化の3点を掲げ、より詳細な基本戦略については従来と変わらず、以下の6つの戦略を推進する方針だ。
a) 「会計事務所ネットワークNo.1への戦略」
「会計事務所ネットワークNo.1への戦略」として、DXコンサルティングサービスと新たなSaaSビジネスにより、会計事務所と顧問先企業のDXを推進していく。会計事務所向けERPシステム「ACELINK NX-Pro」の機能強化(AI-OCRの超高度化、記帳代行BPOの拡大、顧問先企業からのデータ受信、会計処理・税務申告プロセスの効率化・自動化等)を進めることで徹底した業務効率化を支援していくとともに、会計事務所の顧問先に対する経営支援サービス力向上に資する新たな支援サービス(経営分析・助言、経営計画・年度予算策定等を支援する新サービスの提供や事業承継支援、専門性を高めるための教育研修強化など)を提供していくことで、約25%ある現在の市場シェアを引き上げていく。なお、SaaS版の「ACELINK」については現在開発中でリリース時期はまだしばらく先となるが、本格的なビッグデータ・AI活用や画期的な新規サービスの開発を進めているほか、「Hirameki 7」との連携強化によりDXプラットフォーム事業とのシナジーもより高まっていくものと予想される。SaaS版では会計事務所とすべての顧問先がWebサービスで繋がることになり、リアルタイムにデータを収集・活用することでより高度な経営支援サービスが可能になると見られる。
また、同社は会計事務所の顧問先に対してDXコンサルティングサービスによる伴走支援を行っていく予定だ。中小企業ではデジタル人材の不足によりDX化が遅れている企業が多く、こうした企業に対して同社製品に拘らず幅広く他社製品も検討したうえで最適なシステムを提案し、必要に応じて導入支援やその後のカスタマーサクセスを行っていく。契約形態としては、まずは会計事務所からの紹介によって直接顧問先企業とコンサルティングサービス契約を結ぶ形式からスタートして実績を積み上げ、その後、会計事務所とサブスク型のコンサルティング契約を締結して、より多くの顧問先にコンサルティングサービスを提供する仕組みの構築を想定している。
b) 「中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略」
中堅・中小企業向けの戦略としては、グループシナジーによりDXコンサルティング、SaaS製品、SI体制の強化を図ることで新規顧客の開拓を進めていく。ERP製品については、既存製品(オンプレミス・IaaS)の機能拡充や個別カスタマイズ力を強化していくほか、2025年にリリースを予定しているSaaS型ERPではAPI連携の充実や生成AIによる新機能なども搭載していく。また自社製品と他社製品を組み合わせた独自のSIモデルでの展開と、販売・インプリメントパートナーやコンサルティングパートナーとの連携強化により他社製品と連携した最先端ERPによるSIサービス体制を確立する方針だ。
DXコンサルティングサービスについては、中堅・中小企業に対してヒアリングを基にDX戦略の立案を行い、必要に応じて最適なシステムの選定(他社商材含む)、システム導入支援やサポートまでワンストップで提供していく。DXコンサルティングを行うためのスキルをもったITコーディネータについては現在の約60名体制から1?2年後に200名体制まで増員する予定だ。また、グループ会社やパートナー企業とも協業することで、より広範な経営課題に関するDXコンサルティングを行っていく。グループ会社ではデジタルマーケティングや組織・人事コンサルティング、M&A・事業承継コンサルティングなどを提供しており、シナジー効果は大きいと弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》