米法人税率を15%に引き下げなら、6730億ドルものコストがかかる可能性

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2024年7月19日 3時49分

トランプ前大統領は来年、自身がホワイトハウスに返り咲いた場合、法人税率をさらに引き下げる計画を提言している。減税措置は、経済成長、雇用、労働者の賃金を押し上げる一方で、すでに歴史的に拡大している財政赤字を増やすことにも繋がる。

民間の税制調査機関タックス・ファウンデーションの分析によると、措置が導入されれば、米国の法人税率は最低水準になるという。法人税率が下がれば、米国は企業投資においてより魅力的な場所となり、家計にも経済的機会をもたらす。企業が海外に事業や利益を移転するインセンティブも低下させると分析している。しかし、この措置は10年間で最大6730億ドルの歳入を犠牲にすることにもなるという。累積債務と赤字はすでに持続不可能なほど高水準にある。

法人税率の引き下げは、トランプ氏が2017年に制定した税制改革法の延長交渉の一部として盛り込まれ、それはより成長促進的な税制改正を圧迫する可能性があるという。2017年の税制改革では、法人税の最高税率を35%から21%に恒久的に引き下げ、同時に所得税率を暫定的に引き下げていた。議会がこれらの減税措置延長で合意できなければ、大半の米国人は2025年以降増税されることになる。

この措置は、大小の企業経営者の税負担軽減に役立ち、特にS&P500を構成する多国籍企業に寛大だった。S&P500企業の実効税率の中央値は2017年の31.2%から2018年には20%まで低下している。

トランプ氏はブルームバーグ・ビジネスウィーク誌のインタビューで、財政状況にもかかわらず、こうした交渉の一環として法人税率をさらに引き下げたい意向を述べていた。トランプ氏は米大企業の有力CEOをメンバーとするロビー団体「ビジネス・ラウンドテーブル」との会合で、税率を20%まで引き下げに言及していたが、インタビューでは、「20%という税率を提案したのはシンプルさが好きだからだ。15%の方がより良い」と述べている。「15%であれば、最低税率くらいまで下がるだろう。私があの減税をやった時に好景気になったんだ」と述べていた。

タックス・ファウンデーションは「多くの企業は、支払う実効税率が引き下がるが、より的を絞った、より速い経済成長に繋がるような他の措置の検討を議員に望む」と述べ、企業が設備投資や研究開発を即座に費用化できるようにすることなどを提案している。

分析では、トランプ氏の提案によって長期的にGDPが0.4%、賃金が0.4%、雇用が約9万3000人増加すると予測している。一方で耐用年数の短い資産や研究開発費の費用計上を恒久化することを決定した場合、法人税率を引き下げるよりも、より多くの成長を生み出し、歳入の減少も抑えることができると提言している。

これらの規定を導入すれば、上限でも5610億ドルのコストで済み、GDPは0.5%上昇し、10万6000人のフルタイム雇用が創出されると予測した。

一方、法人税引き下げが労働者に利益をもたらすかどうかについては、エコノミストの間でも意見が分かれている。タックス・ポリシー・センターの分析によると、2017年の減税は2019年まで企業投資にほとんど影響を与えず、雇用と賃金の中央値は法律制定前の2年間と比較して、2018年と2019年には実際に鈍化していたという。

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