米経済指標が好調な中で、投資家は新たな勝ち組への分散投資を試みる=米国株
今年のウォール街で確実に利益を生み出す取引とされてきた大手のIT・ハイテク株への集中投資が、ここに来て暗転している。テスラ<TSLA>の期待外れの決算やアルファベット<GOOG>の設備投資に対する懸念が、債券や商品の人気トレードが裏目に出たことと相まって、幅広い資産で混乱に拍車がかかった。
しかし、こうした中で見逃せないトレンドがある。小型株や銀行株など、これまで株式市場で敬遠されてきた銘柄が突如活況を呈していることだ。いわゆるローテーション。
マグニフィセント7が今年の相場上昇で前例のない比重を占めて来たことから、S&Pやナスダックといった時価総額加重型の株価指数への闇雲な熱狂は揺らいでいる。そのような中で投資家は、消費財からヘルスケアまで、あらゆる銘柄に資金を投じることで、新たな勝ち組に分散投資しようとしている。
ストラテジストはIT・ハイテク大手の高すぎるバリュエーション、AIが期待外れとなるリスクが高まっていると指摘している。超大型IT・ハイテクの調整で、他の分野にチャンスが生まれているため、銘柄選びには良い時期となるという。
7月の乱高下は、マグニフィセント7に賭けることが、もはや簡単で確実な成功取引ではないことを裏付けている。これら銘柄の寄与度が株価指数に重くのしかかっている中、投資家はリセッション(景気後退)への懸念が薄れるにつれて、別のセクターに資金を振り向けている。先週のS&P500は下落したが、構成銘柄のうち300銘柄以上が上昇して週を終えた。また、小型株指数のラッセル2000は3週連続の上昇となり、7月のS&P500に対するアウトパフォームは過去24年間で最大となっている。
小型株への資金流入の背景には経済指標がある。先週発表の米GDP速報値は米経済の回復力を示し、6月のPCEコアデフレータも緩やかな上昇に留まり、FRBの9月利下げ期待を後押しした。これらすべてが、出遅れ銘柄が今後追い付くとの期待への追い風となっており、7月は株式ETFの10セクターのうち9セクターで2022年以来となる資金流入を記録している。
一方、取引所全体の出来高に占める株式ETFの割合は14%まで落ち込んでおり、5年平均の30%を下回っている。これは、投資家が指数よりも個別銘柄の取引を好んでいることを意味しているという。
今週はアップル<AAPL>やマイクロソフト<MSFT>、メタ<META>、アマゾン<AMZN>といったマグニフィセント7の残りの銘柄の決算が発表されるが、果たしてこの流れが続くか注目される。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美