ミガロHD Research Memo(4):2024年3月期はマンション価格高騰とDX推進事業成長が業績をけん引(1)
■ミガロホールディングス<5535>の業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期は、売上高42,672百万円(前期比14.5%増)、営業利益2,500百万円(同14.4%減)、経常利益2,042百万円(同18.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,112百万円(同29.4%減)となった。売上高は、DX推進事業の新規受注拡大による大幅な成長と、DX不動産事業の販売数が順調に伸びたことにより、初めて400億円を超えた。特に、DX推進事業は3年で売上高が0から26億円となり高い成長率を維持している。営業利益は、DX不動産事業における建築費の高騰の影響があったものの、一定の価格転嫁を行い、販売価格は上昇。中古物件販売が増加したことで、利益率は下がったものの、想定どおりの着地となった。売上高と営業利益は、当初想定していた業績予想を達成した。経常利益は、好調な販売状況への対応として物件を意図的に積み上げており、その資金調達コストが先行投資的に発生したことで若干の未達、親会社株主に帰属する当期純利益は、グループ外のスタートアップ投資の投資有価証券評価損を計上したことにより未達となった。
DX不動産会員数は順調に増加し、ミガログループDX不動産経済圏は順調に拡大している。また、AKIコマースとアソシアプロパティを子会社化したことにより、賃貸管理戸数は大幅に拡大した。「FreeiD」のマンション導入棟数は、大手デベロッパーの導入もあり、前期の33棟から86棟と大幅に増加した。
2. セグメント別の事業動向
(1) DX推進事業
DX推進事業は、売上高2,629百万円(前期比46.1%増)、セグメント損失101百万円(前期は51百万円の利益)となった。顔認証プラットフォーム「FreeiD」の大手デベロッパーへの導入と、クラウドインテグレーション・システム開発の新規案件獲得により、売上高は大幅に伸長した。しかし、積極的なM&Aや人材採用、その他の先行投資が継続された結果、営業損失となった。M&Aでは、同事業を注力領域として成長を加速させるべく、2023年4月にリゾルバを、2024年3月にオムニサイエンスを、それぞれ連結子会社化した。
成長ドライバーである「FreeiD」の2024年3月期末の累計ユーザー数は19,004人(前期末は5,468人)と前期末比で約3.5倍、累計ソリューション数(導入デバイス数)は2,422個(前期末は1,620個)と前期末比で約1.5倍となった。また、SI稼働案件数も順調に増加しており、2024年3月期は202件(前期比15件増)であった。連結子会社は様々なリーディングカンパニーをクライアントとして持つが、不動産事業会社ではなく、金融・生命保険・証券・大手銀行等のクライアントを中心としている。今後はより幅広い業種へ提供可能なDX支援サービスを強化する方針だ。
三菱地所グループの三菱地所レジデンスや、日本リート投資法人<3296>など大手企業の導入実績を背景に周辺企業にも安心が生まれており、顔認証サービスや顔認証マンションの受注が増加している。また、2024年2月より「サンガスタジアム by KYOCERA」で顔認証決済サービス「FreeiD Pay」の実証事業がスタートした。IDプラットフォームの展開は着実に進捗している。顔認証サービスの市場規模として、日本における顔認証サービスの市場規模は約1.4兆円であり、国内におけるID共通管理・決済プラットフォームの市場規模は約4,000億円である。そのうち、同社が実際にアプローチできる顧客の市場規模は約500億円を見込んでおり、拡大の余地はまだまだ大きいと同社は見ている。
クラウドインテグレーション事業では、システム開発に関するM&Aを2件実施したことで、トップラインも順調に伸びている。同社は、「Salesforce」「AWS」の導入・運用・定着化支援やシステム開発などを行うシステム開発エンジニアを約230名擁しているが、2024年3月に、オムニサイエンスを子会社化したことで、新たに約20名程度のエンジニアが加わった。旺盛な需要に対応できる体制が順調に整備されており、2025年3月期はさらなる売上の伸長を見込む。
(2) DX不動産事業
DX不動産事業は、売上高40,130百万円(前期比12.6%増)、セグメント利益3,848百万円(同10.6%減)となった。第1四半期に新築物件の引き渡しが集中したことに加え、中古物件の販売が引き続き順調に推移した結果、増収となった。しかし、価格は上昇したものの、原価の高騰と利益率の低い中古物件の販売シェアの増加が影響し、営業利益は減益となった。土地・物件の価格高騰や建設コストの上昇が見られているが、顔認証マンションの付加価値により一定の価格転嫁余地がある。建設コストのうちレイバーコストは当面下がらない見通しであるものの、営業マン1人当たりの販売件数は、中古物件で約2.0倍、新築物件で1.2倍と生産性は向上している。
マンション価格の高騰を背景に、高粗利物件の販売と順調な物件引き渡しにより増収トレンドを継続した。不動産市場は強い相場が続いており、仕入れに関しても2025年3月期以降に向けた在庫の積み上げが順調に推移、顧客ニーズに合わせた商品提供により、期を通して好調な販売状況であった。商品別の提供数は、新築マンションブランド「クレイシア」シリーズ等394戸、中古マンション693戸、新築コンパクトマンションブランド「ヴァースクレイシア」シリーズ等140戸、都市型アパートブランド「ソルナクレイシア」シリーズ4棟となった。新築の販売戸数については若干の落ち着きが見られるものの、2025年3月期に繰り越した案件もあることから誤差の範囲である。中古物件についても仕入れ・販売の件数が増加傾向にあり、2025年3月期も伸長させる方針である。居住用物件は1都3県を基本にエリアを拡大し、投資用物件は東京23区の都心エリアに特化して、2025年3月期も販売戸数を伸ばす計画である。また、ストック収入のベースとなる管理戸数も着実に拡大し、賃貸管理戸数5,699戸・建物管理戸数5,048戸と、ストック収入も着実に増加している。入居率は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の人口移動の減少により一時的に1ポイント程度低下した時期があるものの、足元では99%台を平均的に出しており、コロナ禍前の水準に回復したと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
《SO》