タナベ Research Memo(10):2026年3月期売上高150億円、営業利益18億円の目標を掲げる(1)
■今後の見通し
2. 中期経営計画
(1) 中期経営計画の進捗状況
タナベコンサルティンググループ<9644>は、2022年3月期から5ヶ年の中期経営計画(2021~2025)「TCG Future Vision 2030」をスタートさせている。同社が従来から強みとしてきた経営戦略の策定(上流)をアップデートするとともに、現場における経営オペレーションの実装・実行(中流~下流)もプロフェッショナルDXサービスとして強化し、企業経営を一気通貫で支える唯一無二の経営コンサルティング支援モデルの構築を進めることで、成長を加速する戦略だ。
業績数値目標については、最終年度となる2026年3月期に売上高150億円、営業利益18億円、ROE(株主資本当期純利益率)10%、ROA(総資産経常利益率)15%を掲げている。2024年3月期までの進捗状況としては、既述のとおり売上高は若干上回っているが、営業利益は戦略投資を積極的に実施したこともあり若干下回るペースとなっている。ただ、成長戦略として打ち出している施策については着実に成果につながっている。M&Aによりグループ化した子会社についても会社間で顧客の相互送客を行い、チームコンサルティング契約の増加につなげるなど各社ともに収益を伸ばしており、持続的成長を実現するための経営基盤の強化は順調に進んでいるものと弊社では評価している。
今後も顧客企業のDXや人的資本経営、M&A、グローバル戦略などのコンサルティングニーズを取り込むと同時に、行政/公共サービスの領域にも展開することで、売上規模を一段と拡大することは可能と見られる。また、同社は2026年3月期の売上目標150億円のうち20億円をM&A効果で創出する計画であった。M&Aの対象としては、「ストラテジー&ドメイン」「デジタル・DX」「HR」領域で展開する企業となる。
2026年3月期までの経営コンサルティング領域別の売上目標については、組織変更により全国の事業所を経営コンサルティング領域別組織に細分化し、売上高も新組織単位で集計することになったため今回見直しを行った。修正後の領域別売上高目標を見ると、「デジタル・DX」が前期実績の2,741百万円から4,000百万円、2年間の年平均成長率で20.8%と最も大きい伸びを見込んでいる。企業のDXニーズを構想段階(上流工程)から実行・実装支援(下流工程)まで一気通貫でソリューション提案していく。地方の中堅企業ではDXがまだ遅れており潜在需要も大きい。グループ各社のリソースを顧客ニーズに合わせて提供していくことで高成長を見込む。
また、人的資本経営の取り組みを強化する企業が増えるなか、経営戦略に直結する人事制度の刷新や人材採用・育成に対するコンサルティングニーズの取り込みにより「HR」領域も年率7.6%の成長を見込む。そのほか、「ファイナンス・M&A」領域では、賃金水準が高く国内での投資に積極的な中堅企業に対して、M&Aによる事業拡大を税制面や金融面で後押しするなど企業の活性化につながる改正産業競争力強化法が2024年6月に公布されたことにより、M&Aニーズが増大するものと予想される。M&Aの際のファイナンス戦略やM&A後のPMI(経営統合)、ホールディングス化・グループ経営体制の構築など幅広いコンサルティングサービスを提供できる同社にとっては、売上拡大の好機となる。「ブランド&PR」領域では、アフターコロナで海外進出及び強化に取り組む企業に対して、カーツメディアワークスが提供している海外向けプレスリリース配信サービス「Global PR Wire」をドアノックツールとして活用し、顧客獲得を進め「グローバル戦略」などチームコンサルティングサービスにつなげていく戦略だ。「Global PR Wire」については登録企業数が2023年3月末の900社から2024年3月末は1,543社と大きく増加している。配信したいエリアに合わせて、業界に特化する世界のジャーナリストに直接リリースを届ける唯一のサービスである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》