笹木和弘氏【暴落続く日経平均、波乱相場の先行きを読む】(2) <相場観特集>
―円高加速、地政学リスクなど悪材料山積で下値メドは―
5日の東京株式市場は全面安商状となり、日経平均株価は3万1000円台まで一気に水準を切り下げた。世界的な株安で東京市場もリスクオフの地合いが加速している。米経済への警戒感が強まるなか、前週末の米国株市場でNYダウは一時約1000ドル安に売り込まれたほか、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も連日で400ポイントを上回る下げ幅を記録した。この流れを引き継いで週明けの東京市場でも投げ売りを誘発した。歴史的な波乱に見舞われている東京市場の今後の展望について、経験値の高い市場関係者2人に意見を求めた。
●「15年急落時と類似性も、『円キャリー取引』解消などの影響大」
笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)
今回の株式市場の急落は、為替相場の動向なども参考にすれば「チャイナ・ショック」に見舞われた2015年などの動きと類似性があるように思える。異次元緩和を背景にドル円相場は11年秋から15年6月にかけ6割ほどドル高・円安が進んだが、今回も21年から3年半ほどで同水準の円安が進行した。
15年当時はリスクオフで円高に振れた。今回は日銀の追加利上げと米国の利下げによる日米金利差縮小を背景にしている。「円キャリートレード」解消の影響が大きいが、同様に超低金利の円を調達し日本の商社株などを買うような「バフェットトレード」的な取引も膨らんでいただろう。足もとでは、そのポジション解消が頻発しているようだ。
加えて6月下旬から7月上旬にかけて相場が上昇し、日経平均株価が最高値を更新したが、この時の上昇には先物なども絡み「ゆがみ」があったとみている。その分、足もとの下げもきつくなっているだろう。もともと今年は米大統領選が実施され、先行き不透明感から夏場は安値を取りやすいとみていた。
15年当時は6月から翌年2月にかけ日経平均株価は3割近く下げている。今回も高値からの下落率は2割超に達してきており、そろそろ反発局面に入ってもおかしくないと思う。戻りのメドは3万6000円、続いて4月安値水準の3万6700円前後とみている。出来高などから見て7月高値が3月高値に対する実質的な二番天井とみられることから、上値は限定的だろう。ただ、一段の下落があっても、22年2月のロシアによるウクライナ侵攻時の安値は加重平均PBR1.1倍台の水準であり、これを適用すれば3万円近辺が下値になりそうだ。
地銀やネット銀行株などには投資妙味があるとみているほか、中小型の生成AI半導体関連の売られ過ぎ銘柄にも再評価余地がありそうだ。医薬品株の住友ファーマ <4506> [東証P]やツムラ <4540> [東証P]なども面白いと思う。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。
株探ニュース