明日の株式相場に向けて=「陰の陽はらみ」で天下分け目の水曜日へ
きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比3217円高の3万4675円と4日ぶり大幅反発。前日の強烈な下値模索局面から踵(きびす)を返しそのまま引き返してきたような戻り相場で、上げ幅は過去最高となった。
前日の後場は半ばパニック的な売りが噴出し、日経平均は4451円安という歴代断トツの下げ幅を記録。それもさることながら、8兆円目前まで膨らんだ過去最高の売買代金も刮目に値するものだった。信用の追い証絡みの投げ売りが顕在化したことが背景にあり、買いポジションを高水準に積み上げていた向きが半強制的なロスカットに一斉誘導させられる状況は、2020年3月のコロナショック以降の上昇相場では皆無であった。前日はプライム市場の売買代金の膨張度合いをみても、典型的なセリングクライマックスの様相を呈した。前日引け後に市場では「3万3000円のプット(売る権利)が大活況で、これに投資した向きが500~1000倍の利益を出した」という話なども漏れ伝わっており、こういう話が出てくると大体、株式相場は陰の極というケースが多い。
もっとも、ここで敢然と買い向かうのは勇気のいるところだった。かつてない暴落相場に直面し、一段の下げに備え目ざとくキャッシュポジションを高めていた向きもいたはずだが、「前日はいったん(買いを)見送ったトレーダーが多かったようだ」(中堅証券ストラテジスト)とする。「“三空に買い向かえ”という格言があるが、それを実践するなら6日(きょう)の前場で、3つ目のマドを開けたところを狙うのがベスト」(同)という指摘である。日足チャートを見ると前日はテクニカル的には丸坊主に近い大陰線であったことから、極めて強い売り圧力が認識される。また、追い証絡みの売りが出ているとはいえ、前日の後場の投げは追い証発生直前に「それを回避するための売り」が主軸であり、実際に追い証発生に伴う売りは翌日、つまりきょうが本番となる。こうした需給事情も考慮すると、前日後場に動くのは、やや時期尚早という判断が働くのも無理のないところだ。
しかし、玄人筋が手をこまねくところが最強の買い場となっているのが相場の深いところで、きょうは朝から一気にアンワインドの動きが広がった。足もと世界同時株安局面にあるが、前日の欧米株の急落は一段と投資マインドを冷やしたものの、前日のアジア時間の日本株安に追随する流れとして捉えられ、きょうの東京市場に与える影響は軽微であった。
今回の世界的なリスクオフは米経済の失速懸念、中東の地政学リスク、日銀のタカ派チェンジ(想定外の円高)の3点セットで、日本株にすれば「日銀ショック」という下げの定義づけがなされており、今後もそこに焦点が当たりやすい。そうしたなか、きょうは財務省と金融庁、日銀の3者会合が引け後に開かれるという情報が流れ、これを受け後場寄りは買いに勢いがついた。3月以来約5月ぶりの3者会合ということもあって、場合によっては前日の下げ幅を帳消しにするような戻りも期待されたが、そこまでは強くなかった。「情報交換会合であり、具体的な市場政策が出てくるとは思えない」(ネット証券アナリスト)というのがその理由だ。
それでも日経平均は大引けにかけて締まり、大陽線を示現したのだが、これが前日の大陰線の実体部分の範囲内に綺麗にとどまる、俗に言う「陰の陽はらみ」であった。現在は完全な底入れとも下げ途上の小休止とも言い切れないが、テクニカル的にはあすの相場の動き次第で方向感が見えてくる。きょうの終値より高く寄り付いて、なおかつ陽線で引ければ本格リバウンド局面が期待され、きょうの終値より安く寄り付いて陰線で引けた場合は一段と下値を試す展開を覚悟する。今週末9日はオプションSQ算出日であり、あすは「SQ週の魔の水曜日」だ。ある意味、「天下分け目の水曜日」といえるかもしれない。
あすのスケジュールでは、4~6月期の為替介入実績、7月上中旬の貿易統計がいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中には6月の景気動向指数速報値、消費活動指数などが発表される。主要企業の決算発表では、6月期通期決算のレーザーテック<6920>のほか、1~6月期決算のSUMCO<3436>、資生堂<4911>。また、4~6月期決算では富士フイルムホールディングス<4901>、ソニーグループ<6758>、ニトリホールディングス<9843>、NTT<9432>、ソフトバンクグループ<9984>などにマーケットの関心が高い。海外では7月の中国貿易統計、6月の米消費者信用残高など。(銀)