TDSE Research Memo(6):2025年3月期第1四半期は減収減益、今後の巻き返しに期待

特集
2024年8月8日 15時06分

■業績動向

1. 2025年3月期第1四半期の業績動向

TDSE<7046>の2025年3月期第1四半期の業績は、売上高615百万円(前年同期比0.4%減)、営業利益32百万円(同14.6%減)、経常利益34百万円(同12.4%減)、四半期純利益22百万円(同13.0%減)と減収減益になった。進捗率も売上高で21.7%(前年同期は23.9%)、営業利益で11.6%(同13.7%)となり、中期経営計画2年目のスタートとしては厳しい状況となった。

前期よりコンサルティング事業が想定を下回り、特に下期へ向けて売上高が伸び悩んだ点が懸念材料であった。前期下期から講じてきた営業力強化策により、業績貢献が期待されたものの、第1四半期は上述の通りであり、2ケタ成長を計画とする目標達成には相応の巻き返しを要する。新製品の導入も進み、プロダクト事業は好調であることから、売上進展が見られないコンサルティング事業の営業強化策が喫緊かつ重要な課題となる。

6月の決算説明会では営業面において以下説明がなされた。既存顧客との関係を強化するとともに、デジタルマーケティングや新たに始めたLLM支援サービス、TDSEネットワーク※を活用し新規顧客の開拓を強化する方針という。現状では、既存顧客との関係強化は進んでいるようだが、一部顧客の案件収束・縮小と大手顧客に次ぐ規模の案件獲得が課題となる。新規顧客の獲得は徐々に増えているものの、信頼度を高めるために時間や労力がかかるため、拡大には至っていない。これは競合企業がアライアンスとの協力関係を強め、顧客企業の決定権者との面談を展開することで着実に業績を伸ばす一方、同社の展開力が十分発揮されないことが要因であり、各種取り組みの進行とともに、展開力強化に資する人的資本の投下も必要となるだろう。

※コンサルティング事業では顧客先のプロジェクトにサービスを提供することが多く、開発完了後に新たな職場に移ったプロジェクトリーダーなど、顧客担当者が再び同社と契約することが多いことから、この関係や連鎖を、同社では「TDSEネットワーク」と称している。

人員面では、2023年3月期末から3年間で技術人員数を100名から141名、プロジェクトを担うリーダーを31名から41名へと拡充する計画だ。技術人員数については、2024年3月期第2四半期時点では123名に増やしたが、2024年4月末時点では125名と、離職者が期末に増加したことから、当初想定よりも大きな成果にはつながっていないようである。またリーダー育成数については、技術人員をリーダーへと育成するには時間がかかることから、2024年3月期第2四半期時点で33名、2024年4月末時点では2名増えて35名であった。これら要因として中堅や若手有望人材の退職が増えているのであれば、平均スキルやモチベーションの低下といった企業リスクが高まらないよう全社的な対応がより一層必要になってくるだろう。企業としては、個の自己成長を支援し、自己効力感向上につながる風土作り、また経営と社員の対話を充実させ、社員が企業とともに成長を実感できる仕組み作りに期待したい。

プロダクト事業は良好な外部環境と優位性の高い商品力を背景に前期の2024年3月期も順調に伸び、為替の影響が懸念されたソーシャルメディアマーケティング事業で、新規開拓数が25件、継続率が78%、売上高は24%の大幅増収となった。カンバセーショナルAIソリューション事業も、件数不足ではあったものの業容が大きく拡大、新規開拓件数が5件、継続率が100%で、売上高は前期比47%増となった。こうしたなか、大手金融向けに顧客対応ソリューションの大型案件(Cognigyと新型QAジェネレータ)を導入することができ、またユーザー評価も高いことから、同社独自の生成AI製品を用いた顧客接点自動化サービスに勢いがついた格好だ。こうした流れを受けて2025年3月期第1四半期も順調に推移、加えてソーシャルメディアマーケティング事業では製品開発を進めてきた「KAIZODE」の提供を2024年5月に開始、カンバセーショナルAIソリューション事業ではOpenAI社「GPT」に加え「Claude3」や「Gemini」への対応、独自LLMとの接続コネクターの標準装備(オンプレミスの利用も可能)などのほか、QAジェネレーターのRAG対応も予定するなど、積極展開が収益拡大につながっていくと予想される。ただ弊社では、プロダクト事業の成長力にも課題があると考えている。というのも生成AIの分野では、競合他社の多くが同事業を超える強い成長を示しているからである。同事業の成長力をさらに高めるには、外的環境が同事業に優位に働くいま、商品力を高めることは勿論だが、強い販売網を持つ企業との連携及び仕組み作りが必要と思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《HN》

提供:フィスコ

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