城南進研 Research Memo(8):2025年3月期は減益計画も、IT投資要因を除いた営業利益は5倍増益に(2)
■城南進学研究社<4720>の今後の見通し
(3) 映像授業部門
映像授業部門は、2024年4月時点の在籍生徒数が前年同月比でマイナスでスタートするなど低調な滑り出しとなったが、2024年8月に新たに1校(新松戸校)を開設することもあり、通期では生徒数増加により若干増収を見込んでいる。少子化や大学受験の市場環境変化による生徒獲得競争の激化は続くものの、「河合塾マナビス」のなかでも高い合格実績を挙げていることを強くアピールすることで、既存校においても生徒数の増加を目指す。
(4) デジタル教材・ソリューション部門(単体)
デジタル教材・ソリューション部門(単体)では、学習塾や学童施設への「デキタス」の拡販に注力するほか、厚生労働省が新設した「働き方改革支援補助金2024※」の対象事業者となっており、同制度を活用した学校への「デキタス」導入を進めることで増収を見込む。
※探究的な学びに資する民間サービス等利活用促進事業として新設された。学校現場において、教職員の業務削減・効率化に資する学校活動支援サービスの導入を行う事業者に対し、事業費等に要する経費の一部を補助する。ITツールを活用することで教職員の多忙な業務を軽減し、探究的な学びやプログラミング学習をはじめとする高度な学びにリソースを振り向けることで、学校現場での教育の質を向上させていくことが目的となっている。
また、不登校生徒向けの学習サポート用教材として導入する自治体(公立の小・中学校)※1も増加傾向にあり、売上増に寄与すると期待される。2019年から横浜市の鴨居中学校で、不登校や普通クラスで授業を受けられない生徒、著しく学習が遅れている生徒向けに学習サポート用教材として「デキタス」を提供し、一定の成果を収めてきた実績が評価されたようだ。2023年には東京都が提供する「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム事業(VLP事業)※2」のメイン教材として「デキタス」が採択され、同年9月から順次運用が開始されている。全国の小・中学校における不登校生徒数は2022年度で29.9万人と直近5年間で2倍に急増するなど社会問題化しており潜在ニーズは大きいと見られる。
※1 横浜市のほか、海老名市、秦野市、綾瀬市など神奈川県内で広がっているほか、大分県や名古屋市、奈良市でも導入実績が出始めている。
※2 東京都では、不登校の生徒数が小中学生で約2.3万人(2021年度)、外国籍で日本語の指導が必要な生徒が約5千人おり、これら生徒の学びの場を提供すべく仮想空間上に3Dメタバースシステム「VLP」を用意した。生徒はアバターで仮想空間上の学校に登校し、学習や友人との会話だけでなく支援員への相談などもできる。2023年9月から新宿区に加えて墨田区、渋谷区、中野区、杉並区、八王子市、狛江市、多摩市で順次運用が開始され、2024年度も運用自治体数の拡大が見込まれている。
(5) グループ子会社
a) 幼少教育関連
城南ナーサリーや城南フェアリィーで展開している認可保育園は、新規開設予定がなく既存園の定員充足率も高水準で推移していることから、売上高はほぼ前期並みの水準を見込んでいる。一方、城南KIDSは校舎数が6校から5校となったため、生徒数の減少により減収となるが、地代家賃など固定費の削減効果により損益は改善する見通しだ。城南KIDSではカリキュラムの強化に取り組むとともに英語検定合格実績などをアピールし、楽しく英語を学べる学童保育としての認知度向上による生徒数拡大を目指す。
b) 英語教育関連・スポーツ関連・その他
リンゴ・エル・エル・シー及びアイベックの売上高は前期比で横ばい水準、久ケ原スポーツクラブについては若干の増収を見込んでいる。久ケ原スポーツクラブでは小学生の入会者数が減少傾向にあるものの、保育園・幼稚園からの受託案件が増加しているほか、「デキタス」などの学習サービスを強化することで生徒当たり単価を引き上げ、増収につなげる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》