明日の株式相場に向けて=「次期首相は誰か?」錯綜する思惑

市況
2024年8月14日 17時00分

きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比209円高の3万6442円と3日続伸。終始方向感の見えない1日であった。朝方は前日の米株大幅高を受け、リスク選好ムードの中でスタートした。米国では7月の卸売物価指数(PPI)の伸び率鈍化が確認され、なおかつ市場予測を下回ったことから、FRBによる早期利下げ期待、具体的には9月のFOMCでの利下げ観測が強まり、ハイテク株を中心に買いに勢いがついた。ただ、東京市場では前日に日経平均が1200円あまりの急騰をみせていたことに加え、日本時間今晩に発表予定の7月の米消費者物価指数(CPI)の結果を前に、ポジション調整の売り圧力も意識され、強気になり切れないタイミングではあった。それでも寄り後早々に日経平均は450円高と値を飛ばし、前日後場からのリスクオン相場は継続しているようにも見えたが、3万6000円台半ばでは戻り売り圧力が顕在化し伸び悩んだ。

その間隙を縫ってマーケットに稲光のごとく走ったのが「岸田首相の自民党総裁選不出馬」の報道である。若干のタイムラグを置いたものの、ほぼニュースヘッドラインに呼応する形で日経平均はジリジリと水準を切り上げた。これは短期筋のショートカバーが反映されたものだが、その後は次期総裁の顔が見えない状況下で我に返り、急速に値を消すことになった。前引け時点ではマイナス圏に沈む“気迷いモード全開”の地合いである。

岸田首相の実質退陣宣言を受けマーケットが無風なわけはないが、政治とカネの問題が噴出し支持率も著しく低空飛行であったことを考慮すれば、時間の問題という見方があったのは事実で、いったん株価に浮揚力が働いたのはそうした事情による。しかし、冷静に考えると、次期総裁が誰になるかで政策の方向性に変化が生じる公算は小さくない。市場関係者は「次期首相の顔が見えない状況にあって、海外投資家にすれば、これまでの日本株のポートフォリオを見直す蓋然性が高まる。したがってこのタイミングでは安易に動けずフリーズ状態となるのは自明」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。9月の総裁選を前に海外の機関投資家が総裁候補の情報収集に躍起となっている構図が浮かぶ。

石破茂・元幹事長が早々に総裁選出馬の意向を表明しているほか、小泉進次郎・元環境相、茂木幹事長、高市経済安全保障相、河野デジタル相、上川外相などが総裁選出馬候補として挙げられる。群雄割拠の総裁選に見えるが、今の永田町を俯瞰すれば意外にも選択肢は限られているという声もある。まず、今回の首相交代に向けた動きの源流をたどれば、来年11月までに行われる選挙で自民党が勝利するための準備といってよい。

市場では「茂木氏は本音を言えばここで火中の栗を拾うようなリリーフ登板はしたくはないはず。しかし、岸田・茂木・麻生の(権力の)トライアングル構造を維持するために与党の座は死守しなければならない。つまり選挙に勝つためには国民支持率の高い“看板”を立てることが絶対条件」(前出のアナリスト)と指摘する。この場合、石破氏、小泉氏が有力となってくる。しかし石破氏の党内の支持は弱く推薦人すらままならない状況。仮に担いでも岸田・茂木・麻生のトライアングルが崩壊するのでは岸田首相が退く意味がない。

とすれば表現は悪いが傀儡(かいらい)となり得る小泉氏を担ぐというのが最強の選択肢という話になる。また、トライアングルの維持が保証され、なおかつハーバード大卒で英語堪能の上川氏は外国人ウケもよく、実務能力も考慮して本来最良の選択肢ではあるが、選挙に勝つという条件をクリアするうえで最強とはいえない。あくまで“政治屋”的切り口だが、最強の選択肢か、最良の選択肢かのどちらかを引く方向で永田町のパワーバランスが働く可能性が高い。こう考えると、9月の総裁選、11月の米大統領選を経て、日米ともに初となる女性の国家指導者が揃い踏みという可能性も出てきた。

あすのスケジュールでは4~6月期国内総生産(GDP)のほか、6月の鉱工業生産確報値が発表される。海外では7月の中国70都市新築住宅価格、7月の中国工業生産高、7月の中国小売売上高、7月の中国固定資産投資、7月の中国不動産開発投資のほか、フィリピン中銀、ノルウェー中銀などが政策金利を発表する。米国では週間の新規失業保険申請件数、7月の小売売上高、7月の輸出入物価指数、7月の鉱工業生産・設備稼働率、8月のNY連銀製造業景況指数、8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月のNAHB住宅市場指数、6月の企業在庫などが発表される。なお、韓国、インド市場は休場。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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