アクセル Research Memo(5):LSI開発販売関連は2ケタ増収増益、新規事業関連はやや伸び悩む

特集
2024年8月15日 16時35分

■業績動向

2. 事業セグメント別の動向

(1) LSI開発販売関連

LSI開発販売関連セグメントの売上高は前期比22.3%増の16,937百万円、セグメント利益は同32.4%増の3,688百万円となった。製品別売上高をアクセル<6730>が開示している売上構成比から試算すると、G-LSIは同39%増の56億円、メモリモジュールを含む周辺LSIが同14%増の112億円となった。G-LSIは販売数量で約25%増、販売単価で約11%上昇したと見られる。販売数量は、遊技機市場の回復に加えてリユース率が前期の30%から20%に低下したことも増加要因となった。販売単価の上昇については、製品ミックス変化(「AG5」から「AG6」へのシフト)に加え、円安に伴う仕入コスト増分の価格調整を一部進めたことが要因だ。メモリモジュールについては、リユース率が前期の10%から20%に上昇したため、販売数量は同4%減の99万個と減少したものの、メモリ容量の大きい高単価製品の販売が伸びたことで売上高は増加した。

(2) 新規事業関連

新規事業関連セグメントの売上高は前期比1.6%増の632百万円、セグメント損失は381百万円(前期は405百万円の損失)となった。期初計画では売上高で3割増の800百万円、セグメント損失で200百万円を見込んでいたが、計画に織り込んでいたメタバース関連の大型プロジェクトが顧客事由により第1四半期末で終了したことが未達要因となった。

売上高の内訳を見ると、組み込み機器用G-LSIを中心とした製品・商品が前期比89.8%増の224百万円と増加したものの、ロイヤリティ収入が同34.1%減の91百万円、受託制作ソフトウェア等が同13.7%減と315百万円となるなど、機械学習/AI領域における受託開発案件が伸び悩んだものと見られる。利益面では、24百万円の損失縮小となったが、前期はNEDOから採択された自動運転の共同開発プロジェクトに係る費用114百万円が含まれていたため(営業外収益として同額分を計上)、実質ベースの損失額は前期から90百万円拡大したことになる。

同社は、新規事業の拡大に向けて2024年3月期も共同開発や業務提携など積極的に取り組んだ。主な事例を見ると、2023年5月にWeb3.0関連の要素技術を取り入れたコンテンツ流通基盤ソリューションを展開する&DC3及びその親会社のセルシスと戦略的パートナーシップを締結した。同社が保有するアプリケーション暗号化技術を使用したライセンス管理ソリューションを共同開発して&DC3のコンテンツ流通基盤に組み込むことで、同プラットフォームのセキュリティを高め、幅広いコンテンツの流通を可能とすることでWeb3.0ベースの流通プラットフォームとしての価値を高めていく戦略だ。なお、同年9月にはaxがセルシスとの戦略的パートナーシップを一層強化するため、セルシスを割当先とする第三者割当増資を実施したほか、2024年2月には同社とセルシスが資本業務提携契約を締結し、相互の株式を総額916百万円分取得した(アクセルは2024年5月末までに取得)。今回の資本業務提携により、セルシスが提供するイラスト・マンガ・アニメーション等の制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の機能・サービス向上を支援し、今後もクリエイターの創作活動を支援する次世代AI技術の共同開発等を行っていく予定にしている。

同年7月には大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「null2」(落合陽一プロデューサー)のコンテンツを会期後も継続的に活用していくことを目的として設立された(株)サステナブルパビリオン2025のJ-KISS型新株予約権を引き受けたことを発表した。同パビリオンのコンテンツの1つであるデジタルヒューマン型ID基盤「Mirrored BodyTM」の開発及び実証検証を行うための調達資金となる。「Mirrored BodyTM」は、最先端のブロックチェーン、AI技術を用いたデジタルヒューマン型ID基盤で、NFTの仕組みにより強固にセキュリティを担保しつつ、AI技術を利用して自分の分身とも言えるデジタルヒューマンを作成し、それに様々な情報を紐付けて動作させるプラットフォームとなる。同社は「Mirrored BodyTM」のエッジ領域でのAI実装やブロックチェーンに関連する技術協力を行っている。サステナブルパビリオン2025は、2025年以降に「Mirrored BodyTM」のアプリケーションやプラットフォーム等を、生活サービスプロバイダーに提供していくため、事業共創パートナーの拡大及び資金調達活動を続けていく計画となっており、「Mirrored BodyTM」が普及すれば同社の収益にも貢献してくるものとみている。大阪・関西万博を契機に、同社のAI技術力の認知度が一段と向上し、事業拡大の好機になるものと期待される。

同年7月に台湾の大手IT企業であるVIA Technologies Inc.の日本法人が提供する産業用PC向けAI推論プラットフォームに「ailia SDK」が採用されたことを発表した。産業用PCへの「ailia SDK」の搭載は10社を超えており、徐々にではあるが広がりを見せつつある。

2024年3月にはaxがゲーム開発企業の(株)ディンプスと、ゲーム開発領域における大幅な効率化とゲームの新たな価値創出を目指し、AIを活用したゲーム開発ツールやゲーム内でのAI利用を目的とした共同開発に取り組むことで合意し、併せてディンプスへの第三者割当増資を実施した。ゲーム内でのAI利用では、エッジデバイスに「ailia SDK」を実装することで高速処理を実現することが可能となる。まずは音声開発分野において革新的な効率化を図り、ゲーム開発環境の進化を図っていく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

提供:フィスコ

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