TOKAI Research Memo(4):2025年3月期業績見通しは期初計画を据え置くも、上振れ余地あり
■TOKAIホールディングス<3167>の業績動向
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績見通しは、売上高で前期比5.4%増の244,000百万円、営業利益で同3.2%増の16,000百万円、経常利益で同3.0%増の16,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同6.1%増の9,000百万円と期初計画を据え置いた。売上高は8期連続増収、各利益段階では3期振りに過去最高益更新を見込む。期末の継続取引顧客件数は3,452千件と前期末比で94千件増を目指し、月次課金収入を積み上げていくほか、法人向け情報通信事業の好調持続と前期は低調だった建築設備不動産事業の回復が増益要因となる。既述のとおり、第1四半期累計業績は計画を上回る順調な滑り出しを見せており、市場環境に大きな変化がなければ、計画を達成する可能性が高いと弊社では見ている。
(1) エネルギー事業
エネルギー事業は売上高で前期比2%程度の増加、営業利益で同1%程度の増加と堅調推移を見込む。都市ガス事業については前期並みの水準を想定しており、LPガス事業で伸ばす計画となっている。LPガス事業の顧客件数は前期末比50千件増加の828千件を計画している。第1四半期末で21千件の増加となっており、残り約30千件を第2四半期以降に積み上げていく。ここ2~3年は年間30千件前後の純増ペースとなっていることから、達成可能な水準と見ることができる。家庭用ガスの販売量については、前期比3~4%増を見込んでいる。節約志向の高まりにより契約世帯当たり消費量で約2%の減少を想定しているものの、顧客件数の増加等で吸収できる見通しだ。また、販売単価や仕入マージンについては前期並みの水準を想定している。2025年3月期も賃金改定による人件費増を見込んでいるが、第1四半期累計業績が計画を上回ったことから、顧客件数が順調に増加すれば通期でも計画を上振れする可能性は十分にあると弊社では見ている。
なお、LPガス事業に関しては2024年4月に公布されたLPガスの商慣行是正に向けた改正省令の施行によって中小零細事業者が淘汰され、大手企業のシェア拡大が進む可能性がある。改正省令では、従来、賃貸集合住宅等の顧客獲得の際に行っていた物品や金銭の授受など過大な営業行為の制限(2024年7月施行)や三部料金制の徹底(2025年4月施行)などが盛り込まれ、違反した事業者は罰則規則が適用されることになる。これにより、賃貸集合住宅において他事業者から契約を切り替えることが困難となり、新規顧客獲得については新築の賃貸集合住宅または戸建住宅にターゲットが絞り込まれることになり、従来よりも顧客獲得競争が激しくなり、経営体力のない企業は経営を続けていくことがより一層厳しくなると見られているためだ。実際、2024年7月以降は既存の賃貸集合住宅において過大な営業行為を行う事業者はなくなっているようで、同社に持ち込まれるM&A案件の数も増えている。
同社にとっては賃貸集合住宅のリプレイス案件の獲得において影響を受けるが、一方で他社切り替えによる解約リスクも低下するため、直接的な影響はほとんどないと考えられるが、従来よりもM&A案件や商圏買取の機会が増加することによって顧客件数を伸ばす可能性が高まっており、今後数年間はシェア拡大の好機になると弊社では見ている。同社はシェア拡大のため営業拠点の開設を推進しており、2024年8月には鹿児島市にグループとしても初めての事業拠点を開設した。2023年以降では松山市(愛媛県)、伊勢市(三重県)に続く3拠点目となる。同社は2026年3月期までにさらに5拠点を開設する計画としており、これら進出したエリアで新規顧客獲得やM&A・商圏買取などを進めながら、顧客基盤を拡大する戦略となっている。
(2) 情報通信事業
情報通信事業は売上高で前期比7%程度の増加、営業利益で同5%程度の増加となる見通し。このうちコンシューマー向け事業については売上高で減収、営業利益で若干の増益を見込んでいる。顧客件数はブロードバンドで前期末比15千件増、「LIBMO」で同16千件増を見込んでいる。ただ、第1四半期末の顧客件数が想定を下回っていることから、第2四半期以降は顧客獲得施策を強化しながら計画達成を目指す。
一方、法人向け事業は売上高で前期比12%程度の増加、営業利益で同5%程度の増加となる見通し。売上高はデータセンターや通信インフラの能力増強もあって、通信回線サービスやクラウドサービスなどのストック収入がけん引する。第1四半期の営業利益はコストが嵩んで減益となったものの、旺盛な需要を背景に通期での増益は可能と見られる。営業利益率の低下については、前期と同様に賃金改定による人件費の増加が主因だ。
(3) CATV事業
CATV事業は売上高で前期比3%程度の増加、営業利益で同横ばい水準となる見通し。顧客件数は通信サービスを中心に前期末比19千件増を計画している。第1四半期末は通信サービスで4千件の増加と順調に進捗しており、通期計画の達成は射程圏内と見られる。営業利益については、賃金改定による人件費の増加や顧客獲得コストの増加を織り込み前期比横ばい水準を見込む。
(4) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業は売上高で前期比20%程度の増加、営業利益で同10%程度の増加と増収増益に転じる見通し。人件費が増加するものの、前期低調だった土木工事や建築・設備工事の売上が回復し、増収増益要因となる。東海エリアでM&Aしたグループ会社がそれぞれのリソースを活用することで、従来よりも受注規模が大型化する傾向となっており、今後の東海エリアでの一段の成長が期待される。
(5)アクア事業
アクア事業は売上高で前期比5%程度の増加、営業利益は人件費の増加や顧客獲得コストの増加により横ばい水準を見込んでいる。顧客件数は前期末比6千件の増加を計画していたが、第1四半期末で6千件増となっており、さらなる上積みが期待される。従来型宅配水サービスにおいて解約検討をしている顧客に対して、割安感のある給水型浄水ウォーターサーバー「しずくりあ」への切り替え提案が奏功しているほか、CATV子会社などを通じた「しずくりあ」の顧客獲得も増えているようで、グループのネットワークも生かしながら顧客件数を増やす方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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