タイ政局混迷でバーツ買い後退【フィスコ・コラム】

市況
2024年9月1日 9時00分

日本では43歳の首相が誕生するかどうかが注目されていますが、タイでは歴代最年少、37歳の首相が就任。ただ、要職に就いた経験が乏しく、政権運営は早くも不安視されています。通貨バーツはドル安地合いにもかかわらず、底堅さが目立ちます。

昨年8月に発足したセター政権に有罪判決を受けた人物が入閣したことを憲法裁判所が問題視し、今月14日に倫理規定違反と判断。セター氏の解職を受け、同じ貢献党の党首で同党を創設したタクシン元首相の次女、ペートンタン氏が後任に選出されました。同氏は37歳(現在は38歳)と歴代最年少の首相に就任し、タクシン元首相を支持する勢力を中心とした連立政権を運営することになりました。

タイで貧困対策など左派的な政策で国民的に人気があるタクシン氏を支持する「タクシン派」、富裕層やエリート層を中心とする保守的な「反タクシン派」の対立軸があります。昨年5月の総選挙ではタクシン派の政党が勝利。ただ、連立内で軍部に近い保守勢力との対立が先鋭化するなか、要職に就いた経験が乏しいペートンタン氏のリーダーとしての力量が危ぶまれ、国内経済への影響が懸念されています。

同国の国内総生産(GDP)は2022年にはコロナ禍からの回復で前年比+2.5%台に回復後、2023年は輸出低迷が響いて通年の成長率が同+1.9%に減速。しかし、2024年は直近の4-6月期が前年比+2.3%となり、5四半期ぶりに2%台に乗せました。政府予算の執行により国内需要が押し上げられて成長率が加速するとみられ、通年では+2.3-2.8%と緩やかながら回復が期待されています。

ただ、インドネシアやフィリピン、マレーシアなど近隣諸国の5%成長に比べると、成長の鈍化が際立ちます。株価は2020年11月以来の安値圏に低迷。通貨バーツは米連邦準備制度理事会(FRB)の9月利下げ観測からドル売りに押し上げられているものの、足元では上値の重さが目立ちます。今後の連立体制の崩壊などによる政局流動化を想定すれば、バーツは下落基調に逆戻りしかねません。

タイ中央銀行は21日に開催した定例会合で、政策金利を5会合連続で2.5%に据え置くことを決定。中銀は国内経済が堅調に推移しているとして、セター前首相が求めていた早期の利下げ要請を拒否した格好です。ペートンタン氏は前政権が掲げていた経済活性化の実現を目指す方向です。極端な格差社会が是正されなければ低成長が続くとみられ、政局を含め当面タイの情勢は投資家の注目を集めそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《ST》

提供:フィスコ

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