米ガソリン需要は夏場の高水準を維持、移民政策がエネルギー消費を底上げか? <コモディティ特集>
●ガソリン需要は堅調維持も相場にほとんど反映されず
今年の米ドライブシーズンは終わった。夏場の米ガソリン需要は1年間で最も堅調であり、今年も同様の傾向となった。米エネルギー情報局(EIA)の週報によると、夏場のピークのガソリン需要は4週間移動平均で日量929万4000バレルと、極端に強くも弱くもなく、取り立てて目を引かない推移だった。ただ、7月にピークをつけた需要はあまりしぼむことなく、夏場の終わりにかけても堅調に推移している。この結果、米ガソリン在庫は2023年末以来の低水準まで取り崩されている。
例年ならば後退するはずの季節的なガソリン需要が減少せず、米石油企業は製油所稼働率を再び高めている。7月末にかけて90.1%まで低下した米製油所稼働率は、93.3%まで上昇した。ガソリン小売価格が下落しているほか、石油企業の利幅を示すクラック・スプレッドが1バレルあたり17ドル程度まで縮小している。積極的に精製しても利益は限られるが、石油企業が致し方なく増産せざるをえないほど米国のガソリン在庫が引き締まっているといえる。
ドライブシーズン終盤にかけても米ガソリン需要が堅調を維持していることや、ガソリン需給のタイト化は、ニューヨーク市場の動向にはほとんど反映されていない。ガソリン先物市場では3日に年初来の安値を更新。ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物市場で上値が重く推移後、3日の取引で指標の期近10月限が70ドル近くまで下落した。高水準を維持している米ガソリン消費について、季節的な需要が少しだけ長引いているだけであると判断するならば、足元の石油相場の低調な推移は妥当である。あと数週間で剥落する需要であり、買い材料視する必要はないだろう。
●移民制作がエネルギー消費を底上げ?
ただ、バイデン政権における米経済の堅調さの背景に、移民の急拡大と移民に対する大規模な財政支援の存在が指摘されている。夏場の終わりとともにガソリン需要が縮小していくのか確認しなければならない。バイデン政権は南部国境を開放し、中南米から多くの不法移民が流入した。米テキサス州のアボット知事とバイデン米政権の対立は記憶に新しい。
米労働省によると、米国内の外国生まれの人口は今年3月に約4900万人まで増加し、統計開始以来の最高水準を更新した。バイデン米大統領が就任してから約600万人増加している。千葉県の人口が600万人超であり、経済を動かす規模としては十分だと思われる。また、当局が不法移民の流入の全てを把握できていない可能性が高く、この600万人増は極めて控えめな数字だと思われる。
夏季休暇シーズン終盤にかけても米ガソリン需要が堅調さを維持している背景に移民の増加があるのか不明だが、エネルギー需要は確実に底上げされているのではないか。利幅が限定的であり、需要期がほぼ終わっているとしても、米石油会社は稼働率を高水準に維持する必要があるかもしれない。季節外れに需給が引き締まるとは思えないものの、念のため目を向けておくべきだろう。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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