為替週間見通し:ドルは弱含みか、日米金融政策への思惑でドル売り継続の可能性
【今週の概況】
■米国の大幅利下げを警戒してドル売り強まる
今週のドル・円は軟調推移。雇用関連の経済指標は市場予想を下回る内容だったことから、年内3回の利下げ観測が強まり、9月に0.5ptの利下げが行われるとの見方も浮上したことがドル売り・円買いを促した。日本銀行の植田総裁は9月3日に開かれた経済財政諮問会議に出席し、「物価の見通しが実現していくとすれば政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する」との方針を改めて示したこともドル売り材料となった。
6日のニューヨーク外為市場でドル・円は一時144円01銭まで反発したが、141円78銭まで反落する場面があった。この日発表された8月米雇用統計では失業率は低下し、平均時給の上昇率は市場予想を上回ったことから、ドル買い・円売りが一時活発となった。しかしながら、過去2カ月分の非農業部門雇用者数が下方修正されたことや米連邦準備制度理事会理事会(FRB)ウォラー理事が大幅利下げも除外しない姿勢を表明したため、リスク回避的なドル売りが加速した。米国株式の下落も嫌気されたようだ。米ドル・円は142円30銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:141円78銭-147円21銭。
【来週の見通し】
■ドルは弱含みか、日米金融政策への思惑でドル売り継続の可能性
来週のドル・円は弱含みか。米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行の政策決定を今月後半に控え、ドル売り・円買いの動きが続く可能性がある。日米の株式相場が下落した場合、リスク回避の円買いが強まり、主要通貨を下押ししよう。9月3日に発表された米8月ISM製造業景況指数は7月との比較で多少改善したものの、7月の雇用動態調査(JOLTS)、8月ADP雇用統計はおおむね悪化を示した。それを受け、米国経済の腰折れ懸念が強まり、株安・金利安・ドル安に振れている。FRBは9月17-18日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利の引き下げに踏み切る見通し。利下げ幅は景気減速の加速が警戒された場合、0.5ptとなる可能性もあり、金利安・ドル安要因になりやすい。
一方、日本銀行は19-20日に金融政策決定会合を開催する。前回7月に追加利上げを決定したほか、金融正常化を推進するスタンスを示した。自民党総裁選の日程が近いなどの理由で今回は政策金利の据え置きが予想されるが、植田日銀総裁は追加利上げに前向きな見解が目立つ。今回の会合でも金融正常化に積極的なスタンスを示すとみられ、円買い材料となりそうだ。
【米・8月消費者物価コア指数(CPI)】(11日発表予定)
11日発表の米8月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+3.2%と予想されている。サービス価格の上昇率は鈍化しており、市場予想を下回った場合、ドル売り要因に。
【米・9月ミシガン大学消費者信頼感指数】(13日発表予定)
13日発表の米9月ミシガン大学消費者信頼感指数が8月実績を下回った場合、景気減速懸念が強まりドル売り要因に。また、株安材料にもなり、リスク回避の円買いも出やすい。
ドル・円の予想レンジ:140円00銭-144円50銭
《FA》