RIZAP-G Research Memo(4):コンビニジム「chocoZAP」が急拡大(1)
■chocoZAP事業
RIZAPグループ<2928>は2022年7月から「chocoZAP」ブランドによる店舗展開を開始しており、会員数は2023年8月に日本一、2024年8月15日には127万人を達成し、圧倒的な成長スピードが際立っている。「chocoZAP」は、誰もが簡単に毎日の生活の中で運動する習慣を身につけられるように作られた、RIZAP発の運動初心者向け「コンビニジム」である。ボディメイク「RIZAP」の知見やノウハウを最大限に活用することに加え、RIZAPにしか提供できない独自の「5分でも結果を出せる」メソッドを低価格で実現した。また、体組成計やヘルスウォッチ、AI(人工知能)を搭載した専用アプリ、無人店舗を実現するAIカメラによる監視システムなど様々なデジタルツールを活用した事業モデルである。
1. トレーニング初心者対象に“ジムのバリアフリー化”を実現
chocoZAP事業の対象顧客は、20代から60代の男女であり、筋力トレーニング(以下、筋トレ)初心者である。具体的には、フィットネスジムを現在利用していない層、日頃の運動習慣がない層、運動不足や体のだるさを感じている層、今よりも痩せたいと思っている層などである。人口規模では運動初心者が約1億人、シニア(65才以上)が約3,600万人、女性(15~64歳)が約3,600万人であり、対象市場は大きい。一方で筋トレ上級者は主な対象ではない。同社では「1日5分のちょいトレ健康習慣プログラム」という利用方法を推奨しており、女性の買い物ついで、会社員の次のアポイントまでの時間や仕事終わり、といった様々なスキマ時間の利用を想定している。
一般的なスポーツクラブの料金は5,000?10,000円/月であるのに対し、chocoZAP 月額プランの料金は一律3,278円/月(税込)であり、業界の相場から見ると低価格と言える。トレーニング中上級者のしっかりトレーニングしたいという市場はレッドオーシャンと位置付けられるが、同社では「初心者のちょいトレ」というブルーオーシャンを見出したと言える。chocoZAPが急成長する中でも、同業であるエニタイムフィットネスやカーブスが会員数を減らしていないことからも、新しい顧客が創出されていることがわかる。
2. トレーニング以外のサービスメニューを“民主化”
chocoZAPのサービス内容には「簡単・便利」を徹底的に追求した際立った特徴がある。まず、着替えや靴の履き替えが不要であり、極端に言えば入館から5秒でトレーニングをスタートできる。また、24時間365日※全店通い放題である。必要性の少ないサービスは徹底的に割愛する割り切りもあり、店舗にはスタッフが存在せず、入退館管理やマシン操作の解説などはすべてスマホから行う。シャワールームや鍵付きロッカーもない。RIZAPのノウハウを活用し、筋トレ初心者でも扱いやすい筋トレマシン、トレッドミル(ランニングマシン)・バイク等の有酸素運動マシンを配置し、さらに主に女性を対象としたセルフエステ・セルフ脱毛の使い放題(要予約、メンテナンス時間あり)も大半の店舗で取り入れている。
※ 一部テナント規制により24時間営業ではない店舗・休業日の店舗もある。
2023年9月にchocoZAP 1周年を迎えるにあたり、「セルフネイル」「セルフホワイトニング」「マッサージチェア」「デスクバイク」「ワークスペース」「ちょこカフェ」の6種の新たなサービスをリリースし順次拡大している。「セルフネイル」では、設置されたネイルプリンターで、簡単に397種類に上る豊富なデザインのネイルが楽しめる。「セルフホワイトニング」は、専用ペーストを塗ってLEDライトを照射し、ホワイトニング専用溶剤とブラッシングを併用することで歯の表面の汚れを落とし、歯を白くすることができる。いずれも、一般的には高額で時間のかかるサービスだが、chocoZAPでは、1回10分程度のスキマ時間に追加料金なしで利用できる。
2024年3月には、第3弾の新サービスとして7種が追加リリースされた。カラオケ、洗濯・乾燥機(ランドリー)、ピラティス、セルフフォト、キッズパーク、ちょこっとサポート、医療提携である。同社では、「ジムを飛び出そう。」という想いの下、これまでのフィットネスジムの固定観念にとらわれず、「美容」「ライフスタイル」「エンターテインメント」などの様々な分野を取り込み、より利便性の高い「コンビニジム」へと進化する方針である。多様なサービスを追加料金なしで利用できるため、特に各サービスのエントリー層への普及が期待でき、一度会員になると複数のサービスを利用するため、既存会員にとってなくてはならない普遍的なサービス群に進化していると言えるだろう。
新サービス導入店舗では、来館回数、利用者数、入会者数、退会率の改善率のいずれの指標でも新サービス未導入店舗を上回っており、新サービスの導入戦略が消費者の心をつかんでいることがわかる。
3. 顧客満足度向上策を推進中
同社では、2025年3月期の方針として既存会員の満足度向上を掲げ推進中である。chocoZAPはサブスクリプション方式であるため、会員数の増加に伴い、解約率を一定以内に抑制することも重要度としては増していく宿命にある。同社が打ち出した方向性は“人×DXの最適化”であり、具体的には、ちょこっとサポート導入(トレーナー配置)、コンシェルジュ導入(コールセンター)、清掃の強化である。ちょこっとサポートでは、プラン作りやアプリの使用方法、運動や食事のアドバイス、マシンメンテナンスや清掃など多様な役割を担うRIZAPトレーナーを巡回させる取り組みであり、新規会員やトレーニング初心者にとっては頼りになる存在である。2024年6月末には、ちょこっとサポートのトレーナーを大幅に増加させ、コンシェルジュ120名体制、清掃頻度1店舗当たり週17回(これまでの1.7倍)が実現し大幅にサービスレベルが向上している。chocoZAPのビジネスモデルは“無人”というコンセプトから始まったが、約3店舗に1人程度(1,500店舗で500人で試算)の専門人材を配置することで、新たなサービスモデルに進化しつつある。清掃頻度の向上に伴って、会員の店舗環境への評価も上がっており、顧客満足度の向上が検証された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
《HN》