【植木靖男の相場展望】 ─年内最後の戦機が到来するか
「年内最後の戦機が到来するか」
●様子見から株価はどう動く?
東京株式市場は、試練が予想される10月相場を前にして複雑な展開をみせつつある。
まず、これまでの経緯を振り返ってみよう。日経平均株価は7月11日に4万2426円で史上最高値をつけた後に下落に転じた。途中、3万8000~3万9000円処で小休止を入れたものの、その後さらに下げ、8月5日に4451円安と過去最大の下げ幅を記録して下げ止まった。翌6日から反発に転じ、下げ過程で一休止した3万9000円処まで戻したが、そこが限界だった。再び下げに転じて、目下、前回と同様に3万6000円処で下げ渋って様子見となっている。
この先をどうみればよいのか。前回の下げの時と同様に、小休止の後、再び売り込まれるのか。それとも今回はここで踏ん張って、二の舞を演じることなく3万9000円処の節を一気に払って4万円大台に乗せるのだろうか。
理屈で考えると、いま株価を大きく動かす二つの材料が浮上している。一つは米国景気の動向だ。8月の米消費者物価指数は前年同月比2.5%と前月の2.9%から鈍化しており、インフレ圧力の弱まりを受けて17~18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げが確実視されている。利下げ幅が通常の0.25%となるのか、倍の0.5%となるのか。連邦準備制度理事会(FRB)が米国景気のソフトランディングにどれほどの確信を抱いているのかが、利下げ幅からみえてこよう。
もう一つは、米FOMCの直後19~20日に開かれる日銀金融政策決定会合だ。前回は会合後の記者会見で、植田日銀総裁が一段の利上げに前のめりのタカ派姿勢を示した結果、世界の市場は混乱に陥った。後日、内田副総裁が火消しに回ることになったが、今回はどうか。植田総裁はマクロ経済学、金融論を専門とする経済学者である。自分が思ってもいない政治的発言はしないはずだ。だとすると、再び波乱を起こす発言があるかもしれない。
●10月にだめ押しの波乱も
この二つを考慮すると、10月はもう一度だめ押しの下げがあるかもしれない。とはいえ、前回8月5日までの大暴落は黄金比率による終着点であり、この水準を大きく下回るとは思えない。むしろいまだはっきりしない米国景気、ひいては世界景気の見通しが鮮明になり、株価の方向性はいまのような不透明感が薄れるかもしれない。であれば、株価は先行き徐々に明るさを取り戻す可能性があろう。
以前にも指摘したが、ブラックマンデー後も、ITバブル後にしても株価は半年以内に高値を更新している。今回も同じ展開となるか。
ただし、それには条件がある。日本に世界のマネーが流入するかどうかだ。少なくとも日本から米国に渡ったマネー、おそらく数百兆円あるとみるが、これが日本に環流してくるかどうかだ。米国株が大きく下げれば戻ってこよう。もう一つは円高が進むことで海外の株式投資資金が日本株に向かうかどうかだ。これが条件である。
いうまでもなく株式市場が賑わうのはマネー次第である。では、そうなれば物色の流れはどうなるのか。
相場の基本は上げれば下がり、下がれば上がるのが原則だ。新しい相場が到来するとなれば、これまで上昇しなかった業種が上がり、上がった業種はお休みするのが通常のパターンだ。ここはしっかり両目で次の本命を探すことが年内の作業となろう。これまで静かだった業種と言えば、不動産、建設、化学、鉄鋼、金融、運輸、機械、防衛などだ。
1987年のバブル時に大きく化けた銘柄群は“夢再び”ということになる可能性もあろう。
今回は三菱化工機 <6331> [東証P]、オルガノ <6368> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、東京計器 <7721> [東証P]、三菱地所 <8802> [東証P]、荏原製作所 <6361> [東証P]などに注目したい。
2024年9月13日 記
株探ニュース