明日の株式相場に向けて=円高突風と総裁選で変化する波紋
3連休明けとなった17日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比378円安の3万6203円と続落。一時は750円安と大荒れ模様だったが、円高にリンクさせた先物主導の売り仕掛けに大分目が慣れてきたのか、終盤は当たり前のように下げ幅を縮小した。
今週は世界的な中銀ウィークで日米以外にも、英国、ブラジル、トルコ、南アフリカ、インドネシア、ノルウェー、そして週末20日には中国と軒並み政策金利が発表される。そうしたなか、日本は日銀金融政策決定会合で利上げ見送りが確実視され、米国の方は今回のFOMCで利下げを開始することがやはり確実視されている。つまり、日米ともに答えは見えているのだが、FRBの利下げが0.5%なのか0.25%なのかが分からなくなっており、これが足もとの相場のボラティリティを高めている。
元来、今回のFOMCでは0.25%引き下げるシナリオが本線だったので、相場を揺さぶるようなバイアスがかかる余地はあまりなかったはず。だが、直近ウォール・ストリート・ジャーナルとフィナンシャル・タイムズ、いわゆる米英の主力2紙が示し合わせるかのごとく0.5%の可能性に言及したことで話がややこしくなった。仮に利下げが開始されても0.25%だった場合は、米株市場は失望売りに晒されるというリスクが生じている。
きょうはFOMC待ちのタイミングで模様眺めとなるはずが、日本株は大きく売り優勢に傾いた。円高を警戒し、先物にリンクさせたインデックス売りが全体を押し下げるいつものパターンだが、円高誘導を嫌気するというのは0.5%利下げを読み込んだものにほかならない。しかし0.5%は確率的には6割強で、残りの4割弱は0.25%とみているのが現状である。仮に0.25%の利下げだった場合はどうなるか。米株市場は下げても、ドル・円相場は急速に円安方向への揺り戻しが起こる道理となる。ここで米株安でも日本株が上昇するかどうかは結構重要な話で、円安スルーで米株安に追随した場合は、早い話日本株はどちらに転んでも最初から下値を探る運命だったということになる。「米株高・円高」なら円高を嫌気し、「米株安・円安」なら米株安の方を嫌気するという奇妙なパラドックスに陥る。これは、日本株を買えない別の理由が他に存在していることにもなる。
こうなると、9月27日に投開票される自民党総裁選が、株式市場的にもかなり大きなイベントとして浮き彫りとなりそうだ。今回の総裁選で決選投票となることはおそらく避けられないが、誰と誰がその舞台に立つのかがまだ見えてこない。実質3人の争いに絞られていることに違いはなく、「石破茂元幹事長が決選の舞台に進むケースはかなり濃厚」(ネット証券アナリスト)という指摘がある。とすれば石破VS小泉あるいは石破VS高市のカードどちらかになる可能性が高そうだ。金融所得課税の強化に前向きな発言を示す石破氏が勝利するケースは、株式市場にとってはネガティブシナリオだが、一般的には最有力候補なのだ。ところが、この2枚の決選カードいずれも軸馬の石破氏の方が不利という、こちらも永田町ならではの奇妙なシチュエーションが予想される。国会議員投票では菅前首相の睨みが利いて、小泉氏にかなり票が流れる。現時点で既に斎藤経済産業相、古川元法相、木原誠二幹事長代理は小泉支持を表明している。
小泉氏はここにきて政策に関する発言に中身がないという見方が改めて浮上しているが、「バックについている菅―竹中ラインの院政であれば良くも悪くも安定感はある」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれる。一方、政策論で群を抜く保守の一等星・アベノミクス継承の高市氏は株式市場の側から見れば最強の選択肢だが、決選投票にもし残れれば菅氏と麻生氏のシフトチェンジで逆転の目があるだけに要注目となりそうだ。日米同じタイミングで初の女性トップ誕生という、歴史的出来事が起こる可能性もあり得る。
あすのスケジュールでは、7月の機械受注、8月の貿易統計が朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に1年物国庫短期証券の入札が予定されている。午後取引時間中には実質輸出入動向が日銀から開示され、全国地方銀行協会会長の記者会見や日証協会長の記者会見が行われる予定。このほか、午後取引終了後に発表される8月の訪日外国人客数に関心が高い。海外ではインドネシア中銀の政策金利発表、8月の英消費者物価指数(CPI)、8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP・改定値)、8月の米住宅着工件数など。また、この日はFOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見に市場の注目度が高い。(銀)