インテリックス Research Memo(9):「体質強化による収益拡大」「人的資本経営の推進」等に取り組む(1)
■インテリックス<8940>の今後の見通し
2. 2025年5月期の重点方針
同社は「既存主軸事業の収益化」と「先行投資事業の拡充」による『両利き経営』を推進することで経営基盤を強化し、中長期的な事業価値向上を目指している。創立30周年を迎える2025年5月期は、「Back to our core Value」を掲げ、現場力(価値ある物件を見出す営業力、物件をよみがえらせる設計力と現場管理力、顧客に引き渡したあとのアフターサービス等)こそが同社の強みであり、コアバリューであることを社員一人ひとりが再認識し、それを社内外に発信していくことで今後の飛躍的な成長につなげる考えだ。また、2025年5月期は「人的資本経営の推進」も重点施策として取り組み、従業員エンゲージメントを高めることで1人当たりの生産性向上を図り、持続的な成長を目指す。
(1) 既存主軸事業の収益化
a) リノベーション事業分野
リノベーション事業分野では、リノヴェックスマンションの売上総利益率が2024年5月期を底に回復に転じる見通しとなっている。2025年5月期の仕入方針については、需給タイトな状況が続いている東京23区内においては相場上昇が続くなかで高価格帯物件についても積極的に仕入れることにしている。一方、それ以外のエリアについては業界全体でも在庫が積み上がっている状況にあるため、人気の高いエリアや築浅物件など厳選して仕入を行う方針に変わりない。一方、販売については不動産仲介会社のほか一部を同社のリレーション事業部や「FLIE」で販売していたが、2024年6月より直販についてはすべて「FLIE」を通じて販売することにし、これにより販売コストの低減が見込まれる。
また、事業期間については前期下期の193日から150日まで短縮することを目指す。前期までは長期滞留物件が残っていたこともあり販売期間が従来の100日前後から140日と1ヶ月強長くなっていたが、これら物件の販売が一巡したことで販売期間は相当程度短縮できる見通しだ。また、施工期間についても仕入からリノベーションを行うまでの各プロセスを効率的に進めることで短縮可能と見られる。リノヴェックスマンションは、仕入れから販売までに物件の採寸や検査、設計、部材調達、施工(協力会社の手配)など多くの工程があり、工程間で発生するアイドリングタイムを見直すことで短縮可能となる。こうした取り組みによりリノヴェックスマンション事業の売上総利益率を12.7%とする計画だ。
b) ソリューション事業分野
ソリューション事業分野では、1棟もの収益不動産物件の売却により2025年5月期は増収増益が見込まれているが、今後についても不動産小口化商品「アセットシェアリング」シリーズの販売、ホテル事業の安定的高稼働率の維持に取り組むことで持続的成長を目指す。リースバック事業は仕入力を強化するため、認知度向上に向けたプロモーション強化(テレビCM、Webマーケティングの活用)と大手不動産会社等との連携強化によって仕入チャネルを拡充し、2025年5月期は保有物件数を積み上げる方針だ。
(2) 人的資本経営の推進
創立30周年を迎え、次なる成長を見据えた次世代人財の育成と体制づくりに取り組む。具体的な取り組みとして、次世代の人財を育成すべく2024年春より新卒採用を従来の年間数名程度から23名と大幅に増員し、2025年以降も20名以上を採用する予定にしている。従来、営業職は経験値が重要なため即戦力となる中途社員を中心に採用してきたが、中長期的な成長を実現するための人的リソースを拡充するためには、新卒を採用し社内でしっかりと育成することが重要であると判断した。このため、人財育成プログラムの抜本的な見直しを行い、宅建や一級建築士などの資格取得のための支援プログラムも充実させた(資格取得費用の補助等)。
また、社員のモチベーション向上施策として譲渡制限付き株式の付与を実施するほか、拠点長の評価制度の見直し(各拠点の収支状況に応じたインセンティブ付与)、管理部門スタッフの賞与体系の見直しなどを2025年5月期より実施する。また、定期的なエンゲージメント調査による課題の抽出と、改善施策の立案・実施によるエンゲージメントの向上を図る。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》