SBSHD Research Memo(9):3PL、EC物流、国際物流を強化、高成長を目指す(2)
■中期経営計画
c) 国際物流
2024年12月期の国際物流売上高は前期比4.4%増の540億円を計画している。第2四半期累計で255億円、進捗率で47.3%となっており、今後海上運賃や為替動向に大きな変動が無ければ達成可能な水準と見られる。国際物流の取り組みに関しては、2024年第2四半期までにSBS古河物流の香港・上海拠点、フィリピン現地法人をSBSリコーロジスティクスの拠点と統合し、SBS東芝ロジスティクスの海外拠点との2系統体制を整備した。今後は東・東南アジアの発着貨物及び同地域のローカル物流の取引拡大に注力し、将来的に欧米も含めたグローバルネットワーク拡充を目指し、M&Aも視野に入れている。対象としては、現地で日系企業向けに3PLサービスを提供している企業で、売上規模としては10~30億円程度の企業となる。国内で培ってきたコスト競争力の高い3PLのノウハウを海外に移転することで、海外の3PL事業拡大を視野に入れている。
(2) 物流事業基盤の整備・拡充
3PL、EC物流、ラストワンマイルなど、物流事業を支えるインフラ(物流施設、輸配送ネットワーク、人財)を強化する。物流施設の運営面積は2023年12月末の96.8万坪に対して、2024年12月末は11.5万坪増加の108.3万坪となる計画だ。また、計画中や確保済みの用地も含めれば122万坪まで拡大余地がある。運営面積と比例して売上高が伸びると仮定すれば、これらの物件だけで物流事業の売上高は2023年12月期実績の1.25倍増となる5,100億円が視野に入ることから、2025年12月期の売上目標4,681億円も通過点と言える。また、輸配送ネットワークの拡充については、国内のEC物流網の全国展開や、冷凍・チルドBtoB全国配送網の再構築(SBSフレックで一宮センター、厚木低温DCセンター)を2024年に実施し、幹線ネットワークとラストワンマイル網を強化する。人財については採用強化に加え、リスキリングやグループ内人事交流などを行い、リソースを拡充する方針だ。
(3) LT×IT=物流DX
SBSホールディングス<2384>は、「LT×IT」を推進することで業界トップクラスの省力省人化を実現し、収益性の向上を目指す。2022年12月に先端LT検証施設「LTラボ」を開設し、国内外から取り寄せた次世代ロボットの動作検証やデータ収集を行い、導入効果が期待できる次世代ロボットについて、各拠点で実際に稼働させデータ収集を行っている段階にある。
2024年12月期第2四半期累計の導入実績としては、GTP(Good to Person)系ロボット(棚搬送型/高層型)を「野田瀬戸物流センターA棟」(EC物流お任せくん)に、搬送系ロボット(AGF/AGV)を「野田瀬戸物流センターA棟」(SBSロジコム)、「前海倉庫」(SBSリコーロジスティクス、中国)、「北関東物流センター」(SBS東芝ロジスティクス)に導入した。また、下期は2024年10月に「物流センター横浜金沢」内に「新LTラボ」を開設し、高密度&高出力ロボットの検証を開始するほか、ロボットアーム/GTP系ロボット連動のPoCを実施する。また、GTP系ロボットを那須ロジセンター(SBS東芝ロジスティクス)、NRC支店(SBSロジコム)に導入するなど段階的に各拠点への導入し、高密度&高生産性に加えてフレキシブル性を兼ね備えたロボットソリューションの検証を行う。当面は生産性を庫内作業者と同等水準まで引き上げることを目標としており、収益性の面で導入効果が顕在化するのは2025年12月期以降となる見通しだ。
(4) サステナビリティ経営基盤の強化
同社はサステナビリティ経営を支えるガバナンスの強化と、「安全、環境、人財」の3分野における重要課題(マテリアリティ)に取り組むことで、持続可能な社会の実現と企業価値の両立を目指している。マテリアリティのうち、「安全」では重大事故ゼロを目標に、安全・安心な物流サービスの提供を実現すべく、運輸安全マネジメントの推進や安全教育カリキュラムの実施に取り組む。「環境」では、電気自動車の導入や燃費改善に向けた取り組みのほか、「LT×IT」を活用し効率化された物流施設を開発することで温室効果ガスの排出量削減を目指す。電気自動車については、1トンクラスの商用型バンを導入し、SBS即配サポートの配送業務で活用しているほか、投資負担軽減のため、小型中古トラックのEV改造にもメーカーと共同で取り組んでいる。2024年7月からSBS自動車学校(株)の姉崎自動車教習所で実用に向けた試験走行を開始している。EV車の導入実績は2024年6月末に33台となり、2024年末までにEV改造車も含めて40台を導入する計画となっている。
「人財」の育成に関しては、グループ各社から次世代経営層、リーダー層としてポテンシャルを有する課長・部長クラスから人材を選抜し、階層別に2種のプログラムを策定し、約1年にわたる専門研修を経て実際のポストへ登用し、実務を通じて成長促進を図る仕組みとなっている。現在2期目のプログラムが進行中で1~2期合わせて修了者が100名超となる見込みだ。
また、2024年問題でドライバー不足が業界共通の課題となるなか、同社は外国人ドライバーの採用に向けた準備を開始した。2024年4月に外国人在留資格の「特定技能1号※」に「自動車運送業」が追加されたことで、海外からの外国人ドライバーの採用が可能となったためだ。技能水準や日本語能力を試験等で確認する必要があるため、海外の自動車教習所や日本語学校と協業し、またSBS自動車学校も活用しながら外国人ドライバーを採用・育成し、ドライバー不足を解消していく考えだ。
※ 在留期間は通算で上限5年。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》