ユミルリンク Research Memo(5):2024年12月期第2四半期は増収増益。順調に新規顧客を獲得
■ユミルリンク<4372>の業績動向
1. 2024年12月期第2四半期の業績概要
2024年12月期第2四半期の業績は売上高が前年同期比15.5%増の1,307百万円(うちストック売上が同13.6%増の1,258百万円、スポット売上が同102.0%増の49百万円)、営業利益が同13.1%増の304百万円、経常利益が同12.9%増の304百万円、中間純利益が同13.0%増の210百万円となった。上期として13期連続の増収増益となり、上期として過去最高業績更新も継続した。企業のDX推進やデジタルマーケティングの浸透・普及といった外部環境の追い風も吹くなか、既存顧客の解約率を低位に抑えながら新規顧客を順調に積み上げたことが寄与した。サービス別では、主力の「Cuenote(R) FC」をはじとする全てのサービスが前年同期比で増収となった。利益面は、競争力強化を目的に設備投資や人材投資を積極化する一方で、収益性の高い各サービスがトップラインを着実に伸ばしたこと、販管費の伸びを適切にコントロールしたことなどにより2ケタ伸長した。
サービス別の業績は、主力の「Cuenote(R) FC」の売上高が前年同期比14.1%増の1,110百万円となった。オンラインシフトやコロナ禍の収束、DXの推進などの良好な事業環境も追い風に、解約率を低位に抑えながら(2024年12月期第2四半期の月次平均解約率は0.37%)、新規顧客を順調に積み上げた。特にサービスの処理性能や可用性・堅牢性・機密性が評価され、情報通信業、電力・エネルギー、ヘルスケア関連事業、卸売・小売業、人材サービス、金融業、コンビニエンスストアなど、同社がメインターゲットとするエンタープライズ顧客への新規導入が進んだ。既存の電話・対面営業に加えて、販売代理店の深耕やアライアンスによる販路の拡大などが顧客の獲得に寄与した格好だ。また、第2四半期にGoogleのメールポリシー変更に伴いニーズが増加したことも業績の拡大に寄与した。これにより、契約当たりの平均利用額は前年同期比5.5%増の99千円、期末時点のMRRは前年同期比13.5%増の183百万円、第2四半期単独のストック売上は同12.5%増の539百万円となり、それぞれの指標が順調に拡大した。
同社は定期的に顧客企業の導入事例を公開している。なかでもフリマアプリ「メルカリ」の企画・開発・運用を行うメルカリ<4385>が高速配信メールリレーサーバー「Cuenote(R) SR-S」を導入した事例が注目される。導入自体は2019年であるが、2013年に開始したメルカリのサービスが急成長するなかで、自社で運用していた配信業務の負荷が高まった。大量のメールの高速かつ安定的な配信、エラーメールへの対応負荷の軽減、複数名でのシステム管理といった複数の課題を解決するため「Cuenote(R) SR-S」の導入を決定したという。今後はGoogleの流れに追随する形でほかのメールプロバイダーも厳格な運用基準を新たに適用してくることも想定される。同様に、メルカリのように「Cuenote(R) SR-S」への引き合いが高まることも想定される。
「Cuenote(R) SMS」「Cuenote(R) Auth」の売上高は前年同期比28.8%増の167百万円となった。SMSの有用性が認識され事業活動への導入が進むなどの好調な事業環境が継続するなか、解約率を低位に抑えながら(2024年12月期第2四半期の月次平均解約率は0.12%)、新規顧客を順調に積み増した。Webプロモーションの強化によってリード獲得数を増やしながら、人材派遣、化学工業、不動産、自動車販売、学習塾など、幅広い業界で導入先を増やした。これにより平均利用額は前年同期比20.7%減の73千円、期末MRRは同24.9%増の30百万円、第2四半期単独のストック売上は同19.9%増の82百万円となった。小規模配信顧客が増加したことなどを受け、平均利用額のみ前年同期比で減少したものの、そのほかの指標に関しては順調な伸びを見せた。
特定顧客の特需剥落の影響を受けた経験のある同社は業績の変動幅を縮小し、安定した成長を可能にするために顧客や用途の分散化に注力してきた。なかでも2024年12月期は中堅・中小規模の企業獲得に注力する方針を掲げ、新規プランの開発・導入などにも注力している。これにより平均利用額は前年同期を下回ったものの、業績のボラティリティは着実に低下してきている。平均利用額の減少が見られるが契約数の増加によってカバーされMRRやストック売上は増加傾向にある。そのため今後も同サービスの業績は安定して拡大していくものと弊社は見ている。
おおむね右肩上がりに成長し、財務状況も健全
2. 過去の業績推移
(1) 売上高と営業利益
2012年12月期の売上高739百万円、営業利益59百万円は、2023年12月期にそれぞれ2,315百万円、592百万円まで拡大し、同期間のCAGRは売上高は10.9%、営業利益は23.3%となった。多少の変動はあるが、全体として右肩上がりに成長してきたと言える。
なかでも営業利益率の高さが注目される。2012年12月期には8%となったが、売上高の拡大に伴い2023年12月期には25.6%へと急上昇した。同社のようなSaaS型ビジネスモデルは変動費が少ない分、売上高が拡大するにつれて利益率が上昇する傾向にある。今後も業績が拡大するなかで、営業利益率をはじめとした各利益率が高まる可能性は十分にあると弊社は見ている。
(2) キャッシュ・フローの推移
2019年12月期から2023年12月期までのキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローは一貫してプラス、投資活動によるキャッシュ・フローは2021年12月期を除きマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローは2020年12月期まで0円で推移しており、財務の健全性を意識しながら投資を継続してきたことが窺える。また、営業活動によって得たキャッシュから投資活動で使用したキャッシュを差し引いたフリーキャッシュ・フローが常にプラス圏で推移しており、財務の健全性が読み取れる。
3. 財務状況と経営指標
2024年12月期第2四半期末時点の財務状況は、総資産が前期末比303百万円増加の3,083百万円となった。これは主に、売掛金の回収により現金及び預金が230百万円、契約顧客数増等により売掛金が37百万円、繰延税金資産が26百万円、それぞれ増加したことによるものである。
負債合計は前期末比89百万円増加の496百万円となった。これは主に、賞与の支給に伴い未払費用が33百万円減少した一方で、賞与引当金が80百万円、前受金が37百万円、それぞれ増加したことによるものである。
純資産は前期末比213百万円増加の2,587百万円となった。これは主に中間純利益の計上により利益剰余金が209百万円、譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分により自己株式が3百万円増加したことによるものである。利益剰余金は2018年12月期以来順調に増加しており、しっかりと利益を積み上げてきている。
経営指標は、自己資本比率が前期末比1.5ポイント減の83.9%、流動比率が同55.9ポイント減の550.7%、固定比率が同0.3ポイント増の13.5%となった。自己資本比率・流動比率・固定比率ともに依然として健全な値であり、財務の健全性に問題はないと弊社は考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
《EY》