サクサ Research Memo(3):ビジネスホン、ネットワーク・セキュリティ関連機器等が主力
■サクサ<6675>の事業概要
1. 事業概要
同社グループ各社の事業内容は以下のとおりである。同社は事業持株会社としてグループ管理のほか、IT機器・通信ネットワーク、AI、IoT、クラウドサービスなどの商品・サービス・サポートを提供している。本社は東京都港区、開発拠点は新横浜オフィス、営業拠点は東北・東京・中部・関西・九州・札幌・大宮・静岡・金沢・高松・広島の各支社・営業所、主要な生産拠点はサクサテクノ(山形県米沢市)である。
子会社のシステム・ケイ(札幌市北区)は車両ナンバー認識システムやAI画像認識・顔認証等の技術を活用し、ネットワークビデオレコーダー(NVR)やネットワーク映像管理システム(VMS)等を展開している。2024年7月末に子会社化したソアー(山形県米沢市)は、東北パイオニア(株)の子会社としての操業を経て2022年1月に設立され、有機ELデバイス(ディスプレイや特殊光源等)の開発・製造・販売、及び開発・受託製造サービス(ODM/EMS)等を展開している。パイオニアグループとして培ったカーエレクトロニクスを中心とする製品開発力・製造技術ノウハウを保有している。サクサシステムエンジニアリング(青森県八戸市)は情報通信関連のソフトウェア開発等を展開している。サクサテクノ(山形県米沢市)は通信機器・情報機器製造、プリント基板の組立、テスターの設計・製造、金型・治工具の設計・加工、OEMを展開している。サクサビジネスシステム(東京都品川区)はNTT商品全般の販売を行っている。
2. 売上区分と主要製品
同社グループは中小企業を主たる顧客層として、「サクサブランド事業」「OEM事業」「システム事業」の3事業を展開している。各事業の主力製品は以下のとおり。「サクサブランド事業」では、1) サクサブランドのビジネスホン、2) ランサムウェアやサイバー攻撃の脅威から企業を守り安心・安全・快適・便利なオフィス空間を実現するUTM(統合脅威管理アプライアンス)等のネットワーク・セキュリティ関連機器、3) 防犯カメラや通報装置等の防犯設備機器となっている。また、「OEM事業」では、1) OEM のビジネスホン、2) カードリーダライタ等のアミューズメント関連機器、3) OEM の防犯設備機器、4) プリント基板の実装や各種試験検査機の設計・製作等のEMSであり、「システム事業」では、1) システム開発、2) ネットワークビデオレコーダー(NVR)やネットワーク映像管理システム(VMS)等の映像ソリューションとなっている。
既述のとおり、同社は2025年3月期より開示方法を変更したが、参考値として過去の売上動向や売上構成比を見るために、同社開示資料に基づいて従来区分での過去4期(2021年3月期~2024年3月期)の売上高の推移を整理すると以下のとおりとなる。連結売上高は、2021年3月期の366億円から2024年3月期には409億円に伸長した。2024年3月期の売上高を分野別で見ると、ネットワークソリューション分野が261億円、セキュリティソリューション分野が148億円、事業別ではサクサブランド事業が136億円、OEM事業が219億円、システム事業が54億円だった。過去4期の構成比に大きな変化はなく、分野別ではネットワークソリューション分野が6~7割、セキュリティソリューション分野が3~4割、事業別ではサクサブランド事業が3割強、OEM事業が5割強、システム事業が1割強で推移している。また事業別で見ると、ビジネスホン、ネットワーク、OEMビジネスホン、アミューズメント、EMSが主力となっている。アミューズメントについては、新カードユニットの入替需要によってカードリーダライタ等の売上が変動する可能性がある。
顧客ニーズに対応した新製品開発やソリューションに注力
3. リスク要因と課題・対策
一般的なリスク要因として、経済・景気要因等による需要変動、競合激化、為替変動、製品の陳腐化や技術革新への対応遅れ、品質・製造物責任問題や法的規制などがある。同社の場合、需要変動リスクとしては特に国内の情報通信ネットワーク関連市場、アミューズメント関連市場の需要変動の影響を受け、競合激化による価格下落等のリスクがある。ただし同社の主力製品であるビジネスホンについては、市場成熟感があるものの、現在は国内の4社が各々の得意分野において高いシェアを確保するなど市場の棲み分けが進んでいる。加えて、同社の主力顧客層である中小企業においてはDX需要が増加基調であり、さらなる市場開拓余地があると考えられる。またアミューズメント関連市場に関しては、パチンコ・パチスロ業界における法的規制や設備入替等によって需要が変動する可能性がある。
為替影響に関しては、同社は輸出売上が僅少で、海外からの部品調達における外貨建取引において為替変動の影響(円安はコストアップ要因)を受ける可能性がある。この対策として一部の為替予約を行っているほか、製品価格への転嫁などの対策を講じている。技術革新への対応については、常に技術・市場の変化を的確に捉え、AIの活用など顧客ニーズに対応した新製品開発やソリューションの強化に注力している。なお同社の全売上高に占める割合が10%を超える販売先はNTTグループ(売上高に占める割合は2023年3月期28.9%、2024年3月期26.7%)だが、特定顧客への依存度が懸念される水準ではないと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《EY》