スカラ Research Memo(6):2024年6月期は人材事業、EC事業、インキュベーション事業で増収達成(1)
■スカラ<4845>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) DX事業
DX事業の売上収益は前期比18.7%減の5,865百万円、営業損失は1,217百万円(前期は350百万円の利益)となり、Non-GAAP指標での全社費用配賦前営業利益でも同47.4%減の529百万円と大幅減益となった。
主要会社別で見ると、スカラコミュニケーションズが売上収益で同9.1%減の3,346百万円、営業損失で286百万円(事業構造改善費用含む)、日本の会計基準でも166百万円の損失(前期は1億円強の利益を計上)となったほか、エッグが売上収益で同43.6%減の1,170百万円、営業損失で441百万円、日本の会計基準で94百万円の利益(前期は3億円強の利益)となるなど、主要2社の業績が揃って悪化した。
スカラコミュニケーションズについては、主要顧客である大手保険会社向けの新規開発案件が顧客事由により縮小したことや継続案件の売上規模が縮小したことが減収減益要因となった。ストック型ビジネスである「iシリーズ」については伸び率こそ鈍化したものの、着実に新規顧客獲得が進み堅調に推移した。また、2023年6月期より開始したDX人材の派遣サービス事業については、慢性的なデジタル人材の不足を背景に約1億円の売上を計上しており、今後も年率50%の売上成長を目指している。なお、業績悪化に伴い53名(うち約30名がエンジニア)の人員削減を実施したことにより、事業構造改善費用として149百万円を計上した。
エッグについてはデジタル田園都市国家構想交付金に係る案件獲得(フレイル予防事業※など)が進んだものの、前期の収益に貢献したGoToトラベル事業や全国旅行支援事業の終了が減収減益要因となった。業績悪化を受けて今後の収益計画を見通したことに伴い、のれん150百万円及び無形資産等492百万円の減損損失を計上した。のれんについては前期末で314百万円だったため、5割を減損したことになる。
※ エッグが開発したフレイル早期発見システムのことで、自治体公式LINEを入り口として利用者はマイナンバーを使って個人認証を行い、スマートフォンでフレイル度判定チェックを行うことが可能となる。判定結果は自治体の管理システムに集約され、判定結果に基づき職員が介入指導を行うことでフレイル予防を行う仕組みとなっている。同システムを活用することで要介護支援者の増加が抑制され、健康増進と介護費用の負担軽減の効果が期待される。
レオコネクトのカスタマーサポートセンター事業については、売上高で前期比12.9%減の1,049百万円と減収基調が続き、営業損失も14百万円を計上するなど低迷が続いた。同社では今後も収益回復が見込み難いと判断し、事業撤退することを決定している(2024年7月に清算を決議)。
(2) 人材事業
人材事業の売上収益は前期比6.8%増の1,028百万円、営業利益は同6.9%減の266百万円、全社費用配賦前営業利益では同6.1%減の304百万円となった。企業の新卒採用意欲の高まりにより、体育会学生や女子学生に特化した採用支援サービスが堅調で、採用イベント開催数の増加や出展企業数の増加により増収基調が続いた。利益面では、中途採用・転職支援サービス事業や学生向けキャリア教育事業などの新規事業の立ち上げコスト増が減益要因となった。これら新規事業については、既存事業で蓄積した会員情報などを有効活用することで早期収益化を図ることにしている。中途採用・転職支援サービスについては新たにGeaREmakeを2024年1月に新設しており、売上収益で15百万円、営業損失で11百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》