フランに上昇圧力【フィスコ・コラム】

市況
2024年10月13日 9時00分

スイスフランが対ユーロで最高値圏に浮上し、国内の産業界からフラン高対策への期待が高まっています。ただ、地政学リスクなどでフランへの上昇圧力は継続。新体制に移行したばかりのスイス国立銀行(中銀)による政策運営が注目を集めています。

スイスフランの対ユーロでの上昇圧力で0.93フラン台に浮上し、今年8月に付けた過去最高値0.9209フランが射程圏内に入りました。スイス夏場のフランス政局によるユーロ売り・フラン買いは一服したものの、再び上昇圧力を強めています。欧州中銀(ECB)はユーロ圏経済の低迷を受け今年6月に続き10月の理事会で追加措置を決定する方向とみられ、ユーロ売りがフランを押し上げています。

スイス国内の直近の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比+0.8%と3カ月前の+1.3%から低下し、中銀目標の0.0-2.0%の範囲内に。スイス中銀はフラン高を抑制しようと、2024年は3月、6月、9月の定例会合で0.25%ずつ連続3回の金融緩和を決め足元で政策金利は1.00%まで引き下げられました。それを受けフラン高は一服したものの、なお下値は堅く、中銀は一段の利下げに前向きです。

国内の産業界からはフラン高に対する対策を強く求める声が上がっています。輸出が国内総生産(GDP)の半分あまりを占める時計産業は、高級時計ブームがピークを超え需要が減退するなか、上半期の輸出額が顕著に減少。雇用の受け皿にもなっているため、フラン高による業績低迷は深刻です。中銀はフラン高が国内産業に困難をもたらしている、との認識を示しています。

しかし、タイミング悪く中東で緊張が高まり、安全通貨のフランが選好される地合いを強めています。イランが支援するイスラム教シーア派組織ヒズボラ指導者らの殺害への報復として、イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」はイスラエルに対し弾道ミサイルで攻撃。双方による報復の連鎖につながるリスクが浮上しており、金融政策によるフラン高対策の効果を削いでしまいそうです。

2012年から総裁を務めてきたジョルダン氏は9月の定例会合をもって退任。同氏は理事在任中から1ユーロ=1.20フランの上限レート設定や15年のマイナス金利導入に関わり、大胆かつ柔軟な政策運営を推進してきました。総裁としての12年間はフラン高との闘いに費やしたと言えるでしょう。シュレーゲル新総裁は10月1日の就任に伴い、12月の一段の利下げに前向きなスタンスを示しています。

2年前に撤廃したマイナス金利の復活もありうるとし、フラン高阻止への強い政策スタンスを維持しています。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《ST》

提供:フィスコ

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