SOLIZE Research Memo(9):従来領域と新規領域の掛け合わせにより成長を加速(2)
■SOLIZE<5871>の中長期の成長戦略
4. M&Aの推進
グループ投資戦略部を設置し、M&A等を推進する。グループ投資戦略部は、同社グループの企業価値向上のため、既存の事業で得た収益を積極的かつタイムリーに投資することを目的に設置する。また、新たに執行役員を選任し、上場で得た資金も含め、会社を成長させていくうえでのインオーガニック※な部分を担当する。今後は、M&Aにも一定の費用をかける計画だ。
※ オーガニック成長と連携し、M&Aの目的を定義化して組織横断的に意思統一された戦略策定を目指す戦略。
M&Aを推進する理由は、第1にエンジニアの確保である。通常の採用だけでは十分な数のエンジニア確保が難しいため、地方の後継者がいない会社などを買収する計画だ。第2に、グループの上流における取り組みを加速させるためだ。2024年6月末現在で国内には約1,400名のエンジニアを有するが、開発上流からのエンジニアリング支援によって、完成車メーカーの開発力の向上に貢献する計画である。
5. 国内拠点の拡張
事業成長に伴い、2023年10月に浜松オフィス、2024年4月に新宿オフィス、2024年5月に熊本オフィスを新たに開設した。浜松は主にヤマハ発動機やスズキとの、熊本オフィスは本田技研工業などとのつながりがある。九州で様々な産業が拡がっていくなか、同社も先駆けて、オフィスを構えた。中部については、愛知県安城市三河安城にオフィスがあるが、2024年10月に名古屋駅周辺へのオフィス移転を計画している。これらの拠点増加は、顧客からの請負業務の増加に対応して増床するものだ。また、2024年9月には横浜工場を閉鎖し大和工場へ統合することで、業務効率化及び技術集約による技術力向上を図る。
同社では、以上の成長戦略を推進するが、業績目標を明示した中期経営計画を発表していない。同社の事業規模では業績が振れる可能性が大きいため、計画を発表すると投資家をミスリードする可能性があるとの経営判断によるものと考えられる。ただ同社の経営方針を明確化し、投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社は考えている。
6. 持株会社体制に移行
同社は2024年9月20日に、「会社分割による持株会社体制移行及び子会社(分割準備会社)の設立に関するお知らせ」を開示した。その内容は、2025年7月1日(予定)を効力発生日として会社分割の方式により持株会社体制へ移行すること、2024年12月1日(予定)に分割準備会社として同社100%出資の子会社3社を設立すること、及び同社が引き続き持株会社として上場を維持することである。持株会社体制へ移行の目的・背景は、さらなる事業拡大を進め、グループガバナンスを一層強化して、企業価値の向上を追求するためには、より一層の経営のスピード化を図り、機動的かつ柔軟な経営判断を可能にするグループ運営体制を構築することが望ましいと判断したからである。持株会社体制への移行により、持株会社は経営戦略の策定、資源の再配分、グループガバナンスの強化、M&A等の戦略投資及び企業経営のスタッフ的機能を中心としたグループ経営に特化する。事業会社はそれぞれの事業領域で、あらゆる経営環境の変化に迅速に対応することで、グループ全体として柔軟かつ強靭な経営体制へと進化することを目指す。持株会社体制への移行に伴い、同社の成長がさらに加速することが期待される。
7. サステナビリティ
同社では、成長戦略の推進とともに、サステナビリティへの取り組みを推進している。「環境」への取り組みでは、脱炭素社会の実現に貢献すべく、同社グループの事業活動による温室効果ガス排出量(Scope1及びScope2)を、2030年度までにカーボンニュートラルとする目標を定めた。目標達成に向けて、社用車にZEV(電気自動車や燃料電池車などのゼロエミッション車)の導入、事業所の電力を再生可能エネルギーや実質再エネへの転換、エネルギー利用効率化の取り組み推進等に取り組んでいる。「社会」への取り組みとしては、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が推進する「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」において、慶應義塾大学が代表機関を務める「デジタル駆動 超資源循環参加型社会 共創拠点」に参画機関として参加している。同社は本プロジェクトにおいて、30年来培ってきた3Dプリンティング技術を生かし、AM(Additive Manufacturing)でのリサイクルプラスチックの利用技術開発、AMを活用した設計技術開発で協力し、脱CO2、サーキュラー・エコノミー実現に向けて貢献する計画だ。
近年、企業の環境、社会、企業統治への取り組みに基づいて投資銘柄を選択するESG投資が、日本市場や欧州市場を中心に急拡大している。その意味からも、同社グループの取り組みが注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《HN》