馬渕治好氏【日米ともに政治の正念場、ここは買いか売りか】(1) <相場観特集>
―3万9000円近辺で右往左往、視界不良の東京市場―
21日の東京株式市場は、朝方は売りが優勢で日経平均株価は下値を試したが、その後はプラス圏に切り返すなど頑強な値動きをみせた。しかし、上値の重さも相変わらずで3万9000円近辺のもみ合いに終始し、結局マイナス圏で引けている。27日に衆議院総選挙、そして11月5日には米大統領選を控え、日米株式市場も思惑が錯綜する局面。国内政局など不透明感は強いものの、東京市場は出遅れ感が強いだけに買い向かう好機にも見える。ここはどういうスタンスで臨むべきか、経験豊富なマーケット関係者2人に意見を聞いた。
●「弱含みもみ合いも年末には4万円台へ」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
全体相場は依然として不透明感の強い地合いだが、当面の焦点は27日の総選挙であることは論をまたない。ただ、大方で言われるほど今回の総選挙いかんで相場の景色が大きく変わることはないとみている。過去17回の総選挙で投開票日から1ヵ月前の株価と、投開票日から1ヵ月後の日経平均を調べたところ、1ヵ月前の時点から投開票日までの株価が上昇したことは14回、下落したのは3回で、14勝3敗と高い確率で上値を指向している。一方、投開票日の株価とそこから1ヵ月後の株価を比較した場合の騰落は7勝10敗と下がるケースが多かった。このうち、投開票日までの1ヵ月で下げた3回については、いずれも投開票日から1ヵ月後も更に株価水準を切り下げている。
今回の10月27日から1ヵ月前にあたる9月27日の日経平均終値は3万9829円で、時価との比較で800円程度高い水準。今週は上値の重い展開が想定されるなか、過去17回のうちで3回あった投開票日までに下落するパターンになる可能性が今のところは高い。その場合は11月27日の株価は更に安くなるケースが考えられる。ただし、この総選挙アノマリーでは、直近の岸田政権で行われた総選挙と今回は非常に共通項が多い。岸田首相も政権発足後すぐに解散総選挙に踏み切ったが、株価は投開票日前も投開票日後も向こう1ヵ月間で下落した。しかし、その後の岸田首相時代に日経平均は大幅な上昇を示し、史上最高値を更新したことは周知の通りだ。米株高などに追随した結果に過ぎないという見方もあるが、岸田政権は新NISA導入をはじめ、株式市場にフレンドリーな政策を相次いで打ち出しており、これが奏功した部分もあろう。石破首相は、経済政策については岸田路線を継承することを明言しており、仮に当面の株価が弱含みで推移したとしても、その後巻き返す可能性はむしろ高い。日経平均は年内のレンジとして下値は3万8000円台を割り込む場面もありそうだが、年末には4万円台に手が届いている公算は大きい。
一方、米大統領選については共和党のトランプ前大統領が僅差ながら優勢という見方が強まっている。足もと米株市場ではトランプトレード復活の兆しも見られるが、仮に大統領選に勝利すれば株式市場はポジティブに反応しそうだ。民主党のハリス副大統領が勝利した場合は、ハリス氏が大企業に対する増税とキャピタルゲインに対する課税強化の政策に言及していることで注意が必要だが、実際にそれが実現する可能性は低く、米株市場は警戒感からいったんリスクオフとなっても、中期スタンスでそこは拾い場となりやすい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演や講演を行なっている。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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