総選挙後の円相場【フィスコ・コラム】

市況
2024年10月27日 9時00分

ドル・円相場の上昇基調が鮮明です。「米トランプ政権」をにらんだドル買いが背景にあります。ただ、総選挙で自民・公明が過半数の勝敗ラインをクリアできれば石破首相は独自色を強めるとみられ、長期的には金融政策にらみの円買いを予想します。

ドル・円は7月3日に付けた161円95銭から9月16日に139円57銭まで下落後、150円付近に持ち直しています。半値戻しの150円76銭を上抜けると、「トランプ相場」の再開で7月末以来の153円台に一時浮上しました。今後の円相場は10月27日投開票の総選挙の結果に左右されそうです。目下、石破政権は輸入物価上昇の要因となる円安を抑制しようと、円安けん制姿勢を強めています。

自民党の政権公約をみると、経済政策に関し「資産運用立国の実現に向けた取り組みを着実に推進」(引用)との文言が盛り込まれました。石破氏が総裁選で主張した金融所得課税の見直しや一部の法人増税、所得増税については言及しておらず、変節により党内主流派だったころの主張を引っ込めたと指摘されています。一方で、石破氏は小選挙区と比例の重複の立候補や小選挙区の公認を見送る措置を取りました。

大手メディアによる選挙戦終盤の情勢調査では、自民・公明は衆院定数465の過半数233議席に到達できないとの結果が目立ちます。投票結果は予測できないものの、自民党は選挙に先立ち踏み込んだ調査を実施しています。石破政権発足時の支持率は決して高くはありませんが、調査結果に基づいた勝算を見込んでおり、最終的に勝敗ラインを上回る可能性もあります。

自民党は総裁選を通じて主流派と非主流派が入れ替わったように見えますが、重鎮議員の力が衰えたわけではない、との声も聞かれます。そうした党内情勢への配慮が今回のマニフェストと言えます。与党過半数の目標を達成できれば、総裁選で主張していた政策を徐々に繰り出していくと予想されます。日銀の金融正常化論議もその過程で動き出す、との見方なら総選挙後の円売りは限定的でしょう。

もっとも、総選挙後の日銀金融政策決定会合は現行政策を据え置く見通し。日銀の追加利上げは年明け以降とみられ、10月末の政策決定は円売りの手がかりとなりそうです。目先の米大統領選やイラン・イスラエルの緊張で、円急伸の可能性はあります。ただ、日本発の材料に限定すれば、与党が衆院で多数派維持なら短期円安・長期円高、多数派を維持できなければ短期円高・長期円安とみます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《ST》

提供:フィスコ

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