明日の株式相場に向けて=トランプ効果でディスコ怒涛の上げ潮相場
きょう(30日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比373円高の3万9277円と3日続伸。トランプトレードは海を渡って東京市場にも押し寄せた。TOPIX構成銘柄のリバランスがあったとはいえ、いきなり8兆円近い売買代金をこなしたのは特筆に値する。その底流ではトランプ効果が作用したと見る市場関係者も多い。
圧巻だったのはディスコ<6146>で、かつてのレーザーテック<6920>の全盛時を想起させるような目を見張る売買代金をこなし、株価も一時13%を超える上昇率で気を吐いた。テクニカル的には4万円大台近辺で上向きの5日移動平均線を大陽線で一気に上放れたことから、ショート筋の狼狽売りならぬ“狼狽買い戻し”を誘っている。株価は9月9日に目先底入れを果たしたものの、高水準の戻り売りを浴びて底値圏からの離脱がままならない状況だったが、ホルダーにすればようやく溜飲を下げる状況となった。
このディスコへの投資マネー流入は 生成AI相場の復権が本格化していることの証左でもある。なぜなら半導体精密加工装置で圧倒的世界シェアを誇る同社は、その強みを生成AI分野というカテゴリーで全面開花させる成長シナリオを標榜していたからだ。米国ではGPUを手掛けるエヌビディア<NVDA>が生成AIの象徴株であるならば、日本では後工程の半導体製造装置で断トツの競争力を誇るディスコとアドバンテスト<6857>がツートップといえる。この2銘柄は人気化する時期が決して一緒ではなく、これまで株価は交互にビッグウェーブに乗るような格好となっていた。しかし、今は足並みを揃えて上値を追っている。短期的にはひと息入れる場面があったとしても、きょうみせたディスコの上昇パフォーマンスは潮目の変化を暗示しているといってもよさそうだ。上場来高値圏を舞い上がるアドテストにディスコがキャッチアップする姿がイメージされる。
濃淡の差はあっても半導体製造装置関連株が動き出したことは、投資マインドにも大きな影響を与えそうだ。この物色の流れは源流をたどると米国で活発化するトランプトレードに行き着く。僅差とはいえトランプ氏がハリス氏に大統領選で勝利する、という見方が強い。スイングステートとされる7つの州では、ウィスコンシン、ネバダ、ペンシルベニア、ジョージア、ノースカロライナ、アリゾナの6州でトランプ氏優勢が伝わる。ジョージア州などでは既に支持率に結構差が出ているという指摘もある。一方、ハリス氏は残るミシガン州で若干優位とみられているが、全体で言えば7分の1に過ぎない。勝者総取り方式を採用していることもあり、トランプ氏の地滑り的な大勝を予想する向きもある。
トランプ氏が株式市場の見地から好感されやすいのは、財政出動に意欲的な姿勢をみせているからにほかならない。これは債券市場では長期金利上昇にも反映されているが、直近のナスダック総合株価指数の最高値更新にも示されるように、金利上昇局面でハイテク株高という本来なら不自然な構図もトランプ効果という観点で見れば腑に落ちる。トランプ減税の恒久化や、法人税率を21%から15%に引き下げるという案が株式市場には心地良いほか、トランプ氏は規制緩和に前向きで金融業界やAI関連分野には福音となる。これがAI用半導体とその周辺株が活気を蘇らせた背景の一つとなっている。
一方、ハリス氏の掲げる政策は法人税率を逆に21%から28%に引き上げるほか、キャピタルゲイン課税も年間所得100万ドル超の家計を対象に負担を大きくするという。これについては、金融所得課税の強化は富裕層をターゲットにするとした石破首相とオーバーラップする。こうなると、株式市場の側からどちらの勝利を歓迎するかは言うまでもない。最大のリスクは「接戦と伝わるなかで、あたかもトランプ勝利が決まったかのようなムード。逆の目が出た時が非常に怖い」(ネット証券アナリスト)という指摘も。トランプ氏の大統領再選を見届けてからでも、個別株を絞り込むのは十分に間に合う。
あすのスケジュールでは、日銀の金融政策決定会合の結果発表と引け後の植田日銀総裁の記者会見。また、朝方取引開始前に9月の鉱工業生産速報値、9月の商業動態統計などが開示。午後取引時間中には9月の自動車輸出実績、9月の建機出荷、9月の住宅着工統計などが発表される。海外では10月の中国製造業PMI、10月の中国非製造業PMI、7~9月期の香港GDP、7~9月期の台湾GDP、週間の米新規失業保険申請件数、9月の米個人所得・個人消費支出・PCEデフレーターなど。(銀)