ナガイレーベ Research Memo(4):創業110周年に向け「ナガイズム」の下、CSRに取り組む
■ナガイレーベン<7447>の事業概要
4. CSRの取り組み
同社は2025年に創業110周年を迎えるが、これまでに「人の和」「利益の創出」「社会への貢献」の3つを中心とした「ナガイズム」という企業精神を醸成してきた。現在でも、以下のような施策を実行してCSRに取り組んでいる。
【「いのちの力になりたい」を核にした主な取り組み】
(1) 女性活躍:女性主役産業をサポート
同社の製品の多くは病院や介護の現場で働く女性向けであり、また同社の生産現場では多くの女性スタッフが縫製作業に関わっている。同社は事業活動を通して多様なライフイベントを持つ女性が活躍できる場を創出し、働く女性への支援につなげている。
(2) 顧客への貢献
a) 看護師向けの憩いの場「ITONA」ギャラリーの開設
2015年の創業100周年を記念して、主要なエンドユーザーである看護師へ感謝の気持ちを表すため、日本で初めて看護師のための心のコミュニケーションスペース「ITONA(いとな)」ギャラリーを開設した。
b) 看護師のためのビューティ講座
資生堂ジャパン(株)の協力を得て、医療現場の看護師にふさわしいメイクアップ・立ち居振る舞いなどを学べる実践講座を開催している。2022年8月期からはオンライン化し、オンラインビューティ講座やビューティアドバイスムービーを公開している。また、2024年第1四半期には医療機関に入職する新人ナースの研修時に使用できるように、新人ナース向けに再編集したビューティムービーを医療機関に提供した。
c) 看護学生白衣のリメイク
岡山大学看護学生の実習衣をポシェットなどにリメイクすることで、自身が入職後も医療現場にて使用できるようにしている。また、2024年第1四半期には富士市立看護専門学校の卒業生全員に、自らの実習衣をポシェットにアップサイクルして卒業記念品として学校を通じて贈与した。
(3) 地域貢献
a) メディカルキッズプロジェクト
病院が地域社会との交流を深め、子どもたちが安心して通院・入院できるよう開始したもので、医師や看護師に模した子ども用白衣の病院貸出しや、キャラクター着ぐるみの病院訪問を実施している。
b) 歴史白衣の貸出し
白衣の変遷とともに、看護師の歴史を伝えることを目的として、医療機関の催事などに無料貸し出しを実施している。
c) 生産拠点を通じた地域貢献
国内では秋田県、海外では中国・インドネシア・ベトナムなどの地域で生産を行うことで雇用を創出、地域経済に貢献している。
(4) 最近の取り組み
a) 西物流センターに太陽光発電設備設置
年間約68千kWhを発電、同施設の消費電力は全て再生可能エネルギーに置き換えられ、CO2排出量を年間約35t削減している。2024年8月に稼働を開始した。
b) りそなグループキッズアカデミー
りそな銀行開催の子ども向け教育プログラムに参加し、白衣に関するセミナーで医療従事者に対する興味や理解を深める活動を実施した。
【社会的責任への取り組み】
(5) 環境
a) 事業を通じた環境負荷低減
同社製品の多くは枯渇性資源に由来する素材を使用している。繰り返し長く使用できる商品として企画・製造・販売することで、限りある資源の有効活用、環境負荷の低減につながると同社では考えている。具体的には、以下のような施策を実行している。
・2005年にISO14001の認証を取得し、原材料の裁断くずを再利用したルーフ材加工などの取り組みを実施
・リユーザブル感染対策商品の開発
・病院の手術現場向けにリユース商品「コンペルパック」を開発・販売。使い捨て材料が多く使われる手術現場に、繰り返し洗濯・減菌して使用できるウェアを提供することで、医療廃棄物の削減を実現
・営業車にハイブリッド車を導入
・本社社屋/西物流センターに太陽光発電パネルを設置
b) 気候変動問題対応
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に準じた気候変動開示として、気候変動問題に対する緩和と適応の取り組み、機会とリスクの洗い出しなど、シナリオ分析に向けた策定プロセスの実施を予定している。
(6) 社会貢献
以下のような施策を実行している。
・日本看護協会に災害支援ナース用ユニフォームを提供
・感染対策商品を医療機関などに寄付
・医療従事者への応援メッセージ
・ナースのための詩集を定期発行し、病院や看護師に無料で贈呈
・障がい者雇用支援:障がい者の積極的な雇用・促進に貢献した優良事業所として子会社のナガイ白衣工業(株)が選ばれ、厚生労働大臣から表彰を受けた。
・代表取締役社長の澤登一郎(さわのぼりいちろう)氏が秋田県美郷町産業大使に就任
・災害時支援:SARSやインドネシア大地震、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、コロナ禍などの災害発生時に、日本看護協会や日本赤十字社を通じた寄付や白衣・マスクの提供、車椅子の寄贈などを実施
・国連の食糧支援機関「国連WFP」への支援
・「南三陸 復興桜植樹」をサポート:東日本大震災の津波到達地点に桜を植える活動「海の見える命の森」を、被災地である宮城県南三陸町の有志ら協力
・「未来の授業」に掲載:SDGs(Sustainable Development Goals)の授業に使用される教材として全国の小中学校に配布される「未来の授業」に同社の取り組みが紹介
・「パラアート活動」をサポート
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《HN》