桂畑誠治氏【上値指向続く東京市場、トランプ効果どこまで?】 <相場観特集>
―年末は日経平均4万円台乗せか、それとも調整局面入りか―
11日の東京株式市場は狭いレンジでのせめぎ合いが続いた。前引けの日経平均株価は安かったものの、後場はしぶとく切り返し小幅ながらプラス圏で取引を終え、押し目買い意欲の強さを反映した。2024年も残すところあと1ヵ月半あまりだが、日経平均は年末に向け上昇基調を維持できるのかどうか。国内だけでなく米国経済や米株市場にも見識の深い第一生命経済研究所の桂畑誠治氏に今後の展望を聞いた。
●「米株高に追随し年末までに最高値が視野」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
週明けのマーケットはやや売りに押される展開となったが、日経平均の下値では押し目買いの動きが活発で下げ幅は限定的となっている。前週の日経平均の大幅な上昇は、米国株高による効果が大きい。トランプ次期大統領に対する期待感でNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに最高値圏を走っており、東京市場でもこれに引っ張られる形となった。年内は基本的に米株高によるリスク選好の地合いが東京市場にも波及しそうで、短期的な調整は拾い場とみておきたい。米国ではトランプ政権下での財政出動を伴う経済対策への期待が大きいほか、12月のFOMCでFRBが3会合連続の利下げを決めるケースも想定され、株式市場にとっては追い風環境が意識される。
もちろん、これまでのような大統領選後の強気一辺倒の地合いが長く続くことはなく、相応の調整を織り交ぜることにはなりそうだが、かといって大きく下値を試すような展開とはなりにくいであろう。トランプ政権では関税引き上げに対する懸念がつきまとうため、東京市場では折に触れてこれがセンチメントを悪化させる可能性がある。また、日銀による利上げが12月の金融政策決定会合で行われる可能性もそれなりに高く、その思惑から円安に歯止めがかかればハイテク株などには逆風となり得る。しかし一方で、自民党が立憲民主党や日本維新の会などと政策ごとの連携で協調体制が図ることができれば、政策基盤が安定化し、株式市場にもポジティブ材料となりそうだ。経済政策はバラ撒き的な要素も強いだけに、財政赤字が拡大基調となるなかで金利上昇懸念も拭えないが、年末の株高アノマリーも考慮して買いに分がある局面とみている。
日経平均の年内のレンジは下値が3万8000円前後、対して上値は7月11日につけた4万2224円の史上最高値更新が視野に入る。物色対象を考えた場合、対中規制強化の流れのなかで半導体製造装置関連はなかなか上値のシコリが解消されないケースも考えられる。一方で、インバウンド需要を追い風に外食や小売りなどの内需株は注目される。このほか、金利が中期的に上昇傾向にあることを考慮すれば金融株などにも投資妙味があろう。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
株探ニュース