雨宮京子氏【荒れ模様の東京市場、年末に向けてのシナリオは】(1) <相場観特集>
―政局流動化と為替市場もハイボラティリティで思惑錯綜―
週明け18日の東京株式市場では、前週末の米国株市場がハイテク株中心に大幅下落となったことを受け、日経平均株価も大きく売り先行でスタートしたが、その後は押し目買いや買い戻しで下げ渋る動きをみせた。しかし、方向感は定まらず乱高下を繰り返した。日経平均は前週は週間で800円以上も水準を切り下げた。今週も不透明材料が多いなか上値の重さが意識されやすいところだ。外国為替市場もドル円相場が乱高下しており、相場の不安定要因となっている。今回は、株式市場の展望と個別銘柄について雨宮総研代表の雨宮京子氏に、また為替動向については外為オンラインの佐藤正和氏にそれぞれ意見を聞いた。
●「円安を背景に日経平均は再び4万円指向へ」
雨宮京子氏(雨宮総研 代表)
前週末の米国株市場でナスダック総合株価指数が400ポイントを超える急落をみせたことで、きょうの東京市場でもリスクオフが加速しそうな気配があった。日経平均が一気に3万8000円台を割り込んでも何ら不思議はなかったが、売り一巡後に踏みとどまったのは光明といえる。国内では自民党総裁選で石破首相が選出されて以降、政局不安が取り沙汰され、解散総選挙では案の定というべきか与党が大敗した。一方、米国では大統領選でトランプ前大統領が圧勝した。「またトラ」で目先こそトランプ・ラリーがハヤされたものの、中期的には経済の鏡である株式市場に政治面から与える不安感は拭えない部分もある。日米ともに政局がマーケットに及ぼす影響は現状では未知数だ。
ただ、ひとつ言えることはトランプ次期政権下で外部環境では為替相場が円安に振れやすくなったことが挙げられる。トランプ氏再選に伴い、減税で米財政負担が増し、中国をはじめ関税強化による物価上昇リスクも再燃している。これは足もとの米金利上昇を促し、日米金利差拡大を背景にドル買い・円売りの流れを強めそうだ。円安基調が維持されれば東京市場にとっては追い風で、日経平均は早晩立ち直り4万円大台復帰を目指す展開が予想される。
日銀の利上げ前倒しについての思惑も一部で指摘されているが、個人的には年内は見送られると考えている。トランプ大統領就任後のハネムーン期間である来年春ごろまで、円安を支えに日本株は底堅い動きが期待され、深押しがあれば買いで対処したい。日経平均の向こう1ヵ月のレンジは3万7100~4万300円とみている。
個別の物色対象としてはまず、新作ゲームが好調なドリコム <3793> [東証G]の押し目買い。貸株市場を通じた空売りなどを絡め需給妙味もある。また、エヌビディア<NVDA>関連で好実態のイビデン <4062> [東証P]の深押し場面は買い向かってみたい。電力インフラ関連として存在感を高める三菱電機 <6503> [東証P]や、電力不足に派生するテーマでは水素エネルギーの関連最右翼である岩谷産業 <8088> [東証P]などもマーク。このほか、世界的な金利上昇局面で引き続き三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]の上値余地に期待したい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(あめみや・きょうこ)
雨宮総研 代表。元カリスマ証券レディとして、日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスター、SBI証券投資情報部などを経て、日経CNBC解説者に。
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