スウェーデン通貨は1年ぶり安値圏【フィスコ・コラム】

市況
2024年11月24日 9時00分

スウェーデン通貨クローナの軟調地合いが続いています。同国経済のリセッション入りと中銀の大幅利下げが背景にあるようです。さらに、ウクライナへの支援による財政拡大も懸念材料とみられます。クローナに安定は訪れるでしょうか。

11月5日の米大統領選後、スウェーデンクローナはドルに対し1週間で3.5%下落。年初からは12%落ち込み、昨年11月以来1年ぶりの安値圏とスウェーデン経済の不安定さを露呈しています。もちろん、ドル高のあおりでクローナが下押しされている面もあります。米トランプ次期政権の発足に向け景気の過熱が見込まれ、金融政策を引き締めざるを得ない状況からドルは独歩高の様相です。

しかし、足元のクローナ安はスウェーデンの経済環境の悪化が主要因です。内需の低迷と輸出の不振が重なり、2024年初頭からマイナス成長に陥りました。これに対応する形で、リクスバンク(スウェーデン中銀)は7月から利下げサイクル入り。過去数年間、世界的な利上げ局面で主要通貨の相対的な金利差が縮小するなか、スウェーデンの大幅利下げはクローナの競争力をさらに低下させました。

地域の平和が脅かされていることも、国内経済やクローナを圧迫する要因となっています。スウェーデンは今年すでにウクライナに対し過去最大規模の軍事支援を決定。ただ、ウクライナは11月19日、米バイデン政権が使用を容認した長距離弾道ミサイルでロシアを攻撃し、対立はさらに激化しそうな雲行きです。一段の支援が必要になれば、スウェーデンの財政にも響いてきます。

スウェーデンは今年北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟。NATOは加盟各国に国内総生産(GDP)比2%を上回る防衛支出を求めていますが、スウェーデンは来年の防衛費にGDP比2.4%、前年比10%増の1380億クローナ(約2兆円)を計上しました。今後5年間も通常の年間予算に防衛費を上乗せする方針で、加盟国の半分近くがGDP比2%を下回るなか、スウェーデンは2028年には2.6%まで拡大する見通しです。

クローナの回復には、まずリセッションを脱却し、経済を再び成長軌道に乗せることが重要です。中銀が利下げを停止し、金融政策が安定することで、2025年以降にクローナは徐々に回復基調に向かう可能性もあります。ただし、地政学的リスクが軽減され、ドル高が収束することも必要でしょう。ウクライナ戦争など地域の安定に関する暗雲を払拭できなければ、回復には時間がかかるとみられます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《ST》

提供:フィスコ

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