来年は原油が供給過剰となるのか? OPECプラスや米国需要が相場を左右へ <コモディティ特集>
●OPECプラス以外の増産で供給過剰の可能性
石油輸出国機構(OPEC)プラスは来月1日に閣僚級会合を開催する。日量200万バレル規模の自主減産の縮小開始をまた先送りする可能性が高い。ロイター通信が関係筋の話として伝えた。
OPECプラスは12月からの自主減産の縮小を1ヵ月延期することを決定しているが、増産開始は更に遅れる見通しである。世界的な需要見通しの弱さが背景にあるという。経済成長とともにインドの需要拡大は続く公算である一方、世界最大の原油輸入国である中国の輸入拡大は一巡している。OPECプラス以外の産油国の増産が続く可能性が高いことから、国際エネルギー機関(IEA)は来年にかけて供給過剰となる可能性を指摘している。
トランプ米次期大統領の新たなエネルギー政策により、世界最大の産油国である米国の増産はさらに続くのではないか。バイデン政権のもと、8月の米原油生産量は日量1340万1000バレルまで増加し、月次で過去最高水準を更新している。バイデン政権の政策の柱は脱炭素社会の実現に向けた取り組みだったはずであるが、任期中に米原油生産量は日量200万バレル以上増えており、非OPECプラスの生産量拡大をけん引しているのは間違いなく米国である。バイデン政権のもとでの米国の増産幅は、ノルウェーの生産量とほぼ同等である。バイデン政権の発足はコロナのパンデミックを経た後であり、原油の増産の一部は反動増だったと思われるが、それでも日量200万バレル超の増産は驚異的である。2022年、ロシアのウクライナ侵攻を受けて急伸した原油相場を需給面で抑制したのは、振り返ってみればバイデン米政権による増産だったかもしれない。
●米国の石油需要が強く供給過剰にはならない?
一方、来年の供給過剰が警戒されている反面、足元の需給はタイト化している。調査会社ボルテクサが公表している原油の海上備蓄は年初から減少傾向にあるほか、世界最大の石油消費国である米国の原油と石油製品の在庫の合計は、12億4381万1000バレルと夏場以降は取り崩しが続いている。米エネルギー情報局(EIA)の週報によると、米石油製品需要の4週間移動平均は日量2080万3000バレルと、需要最盛期である夏場並みの高水準で推移しており、米石油在庫の取り崩しにつながっている。今年の米石油消費は旺盛で、季節的な落ち込みがあまり見られない。なお、EIA週報における石油製品需要は、月報で上方修正される傾向にあり、実際の需要はさらに強い可能性がある。
想定されているように世界的な石油需要の伸びが限定的で、OPECプラス以外の産油国が増産を続けるなら需給バランスは供給が過剰となり、ブレント原油やウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)など指標原油は低調に推移するかもしれない。ただ、今年の米国の石油需要の推移は異様に強く、来年の供給過剰を強く意識すべきなのかやや疑問である。例年、1-3月期は世界的に需要が低迷する時期であり、OPECプラスは需要が上向く春頃まで増産を見送る可能性もある。米国の増産が続くとしても、トランプ次期大統領のエネルギー政策や関税の対象を確認する必要があり、安穏と弱気に構える場面ではなさそうだ。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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