Mimaki Research Memo(6):市場別もエリア別もおおむね好調
■ミマキエンジニアリング<6638>の業績動向
2. 市場別・エリア別の売上高動向
市場別でSG市場向けは、プリンタ本体で既存ソルベントインクモデルの販売が減ったが、前第3四半期に市場投入したUVインク搭載のフラグシップモデル及びエントリーモデルが好調に推移し、インクも順調に販売を伸ばした。これらに為替のプラス影響が加わり、売上高は16,278百万円(前年同期比14.2%増)となった。IP市場向けは、プリンタ本体で小型FBモデルが好調だったことに加え、今期投入した高単価の大型FBモデルが順調に立ち上がった。これらにインクの販売増と為替のプラス影響もあり、売上高は10,600百万円(同11.8%増)となった。TA市場向けは、プリンタ本体で全エリアにおいてDTFモデルの販売が大幅に増加、高速昇華転写モデルも欧州や中南米を中心に販売が順調に立ち上がり、プリンタ本体の稼働台数増加に伴ってインクの販売も大幅に増加した。これらに為替のプラス影響が加わり、売上高は5,329百万円(同30.1%増)となった。なお、第2四半期に発生した北米大手チャネルにおけるDTFモデルの出荷調整は一時的なもので、足もとは元の高成長に戻ったようだ。FA事業は、半導体製造装置や基板検査装置の販売が減少したものの、基板実装装置とFA装置で自動車関連の販売が増加し、売上高は2,143百万円(同0.4%増)と前年同期並みとなった。その他は、プリンタ本体の稼働が良好で、保守部品やDTFの粉末パウダーなど仕入製品が伸び、売上高は6,590百万円(同20.5%増)となった。
エリア別で日本は、TA市場向けが前期からの好調を維持、IP市場向けが既存の小型FBモデルに加え大型FBモデルの新製品が立ち上がったため大幅な販売増となり、SG市場向けも堅調に推移、FA事業はFA装置や基板実装装置が順調だった。この結果、売上高は10,983百万円(前年同期比9.1%増)となった。北米は、TA市場向けが一時的な出荷調整はあったもののDTFモデルを中心に販売が大幅に伸長、SG市場向けがUVインク搭載モデル、IP市場向けが大型・小型FBモデルが好調に推移、これらに加え為替のプラス影響もあり、売上高は8,888百万円(同25.1%増/現地通貨ベースで16.0%増)となった。欧州は、TA市場向けでDTFモデルや高速昇華転写モデルを中心に大幅に販売が増加し、SG市場向けでUVインク搭載モデルの販売も好調に推移した一方、IP市場向けでは導入までのタイムラグなどにより大型FB製品を中心に販売が減少した。国別ではドイツ、イギリス、フランス、ポーランドなど主要国での販売が好調だった。これらに為替のプラス影響もあり、売上高は9,275百万円(同9.5%増/現地通貨ベースで1.2%増)となった。アジア・オセアニアは、各市場向けがともに前期から引き続き好調に推移、国別では営業活動強化の成果が表れた中国のほか、フィリピン、インド、タイなどで販売が大幅に伸びた。この結果、売上高は7,279百万円(同24.0%増)となった。その他は、ブラジルやメキシコを中心に中南米で各市場向けがともに好調に推移、売上高は4,515百万円(同15.2%増)となった。
上期の勢いなどから下期の見通しは保守的な印象
3. 2025年3月期の業績見通し
同社は2025年3月期の業績見通しについて、売上高82,500百万円(前期比9.1%増)、営業利益8,250百万円(同50.5%増)、経常利益7,500百万円(同53.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,600百万(同51.0%増)と見込んでいる。期初予想に対して、売上高で1,700百万円、営業利益で1,750百万円、経常利益で1,700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で1,600百万円上方修正されている。なお、下期の主要な為替レートの前提は期初のまま、1米ドル=138円、1ユーロ=150円となっている。
世界経済は、北米や欧州においてインフレ鎮静化とそれに伴う政策金利の引き下げに向けた動きが見込まれる一方、中国の経済成長率鈍化やウクライナと中東の情勢のさらなる悪化など地政学リスクの高まり、米国大統領選挙がもたらす政治的な影響など依然先行き不透明で、予断を許さない状況が続く見込みである。このような環境下、同社は2025年3月期のグループ経営方針を「進化する」と定め、売上高を伸ばしつつ2026年度までに営業利益率10%を達成する「Mimaki V10」の目標達成に向け、従来の課題を踏まえつつ新しい次世代のミマキに向けて進化を遂げる1年とすることを目指している。
この結果、上期業績は想定を大きく上回る進捗となり、期中2回の上方修正につながったが、下期の業績予想は期初予想から大きく変わっていない。グローバルの市場環境は期初予想から大きな変化はないものの、各国金融政策の動向、地政学的リスクの増大、米国大統領選挙の結果など依然不透明な要素が多いという前提から、市場別やエリア別の動向、営業活動や新製品投入の見通しなどを踏まえて下期の売上高を見直したが、入り繰りはあったものの結果的に期初の下期予想とほとんど変わらなかった。下期の利益は、海上輸送コストの上昇を織り込む一方、高コスト部材を使用した製品の販売終結を見込んで売上原価の見直しを行ったが、単体売上高の見直しに伴う為替差損の増加なども想定に入れたため、売上高同様大きな変化はなかった。また、為替の前提も変わっていない。したがって、現在の通期予想は上期の上方修正分のみ増額したということができる。上期の勢いや為替のプラス影響、9月に投入された新製品が好評なことなどを考えると、下期の見通しは、売上高や利益、特に上期の11.5%から下期の8.5%へ下がる計画になっている営業利益率が保守的に過ぎる印象である。
通期のセグメント別売上高見通しは次のとおりである。市場別でSG市場向けが、欧州での販売平常化や前今期の新製品の寄与が想定以上となったため期初予想に対して1,720百万円増額、売上高32,221百万円(前期比8.9%増)を見込んでいる。IP市場向けは、欧州での販売平常化や小型FBモデルの好調に加え今上期発売の高単価の大型FBが順調に立ち上がったため期初予想に対して337百万円増額し、売上高22,144百万円(同10.5%増)を見込んでいる。TA市場向けは、各種製品販売は順調だが北米の特定チャネルで出荷調整があった影響などにより期初予想に対して1,508百万円減額、売上高11,263百万円(同18.9%増)を見込んでいる。FA事業は、自動車産業向けが回復しているものの、売上高は期初予想に対して164百万円減額の5,181百万円(同14.3%増)の見込みとなった。上期の勢いや為替の動きを考えると、下期に出荷調整の影響がなくなるとしているTA市場向けほか全般的に保守的な印象である。
エリア別では、国内及びアジア・オセアニアで販売が引き続き拡大するほか、全エリアで増収を見込んでいるが、特に為替のプラス影響の織り込みが保守的に思われる。日本は、好調継続を背景に期初予想に対して429百万円増額、売上高23,038百万円(前期比9.3%増)を見込んでいる。北米は、為替のプラス影響に加え景気拡大が着実に継続しているため期初予想に対して1,145百万円増額、売上高17,362百万円(同11.5%増/現地通貨ベース11.2%増)を見込んでいる。欧州は、為替のプラス影響はあったものの景気停滞からの戻りが遅いため期初予想に対して40百万円減額、売上高18,925百万円(同5.6%増/現地通貨ベース5.2%増)を見込んでいる。アジア・オセアニアは、中国やインド、フィリピン、オーストラリアが順調に推移しているため期初予想に対して429百万円の増額、売上高14,443百万円(同12.3%増)を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《HN》