eWell:高成長を継続する在宅医療プラットフォーマー、生成AIの活用でも先行

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2024年12月16日 12時12分

eWell<5038>は訪問看護ステーション向けSaaS型業務支援ツール(訪問看護専用電子カルテ「iBow」)等を提供するクラウドサービス事業、診療報酬請求業務を代行するクラウドBPO事業(「iBow事務管理代行サービス」など)を展開している。なお、「iBow」は経済産業省の「IT導入補助金2024」対象ツールとなる。訪問看護ステーション向けサービス提供事業の単一セグメントだが、売上高構成比では、クラウドサービスが約9割を占め、BPOサービスは9.5%程度となっている。主力サービスとなる「iBow」は、患者の情報、在宅での療養経過の情報などが記録され閲覧できるクラウドシステムで、アクティブユーザー(訪問看護師)は昨年末時点で4万4,000人以上、20万人以上の在宅患者を支え、月間140万件以上の医療データを蓄積し続けている。

11月14日に発表された2024年12月期の第3四半期決算は、売上高で前年同期比24.1%増の1,860百万円、営業利益で同16.2増の823百万円となった。契約ステーション数(2,891ステーション)、顧客単価(79.3千円)ともに過去最高を更新。通期の売上高は2,560百万円(前期比23.7%増)、営業利益は1,111百万円(同22.3%増)と高い成長が予想されているが、極めて順調な推移であることが確認された。

なお、同社ではAI訪問看護報告を10月にリリースしている。AI訪問看護計画を4月に先行リリースしたことで、iBowでの生成AI活用に対する認知が高まっていた状況ではあるが、AI訪問看護計画の利用の積み上がりが48,681件であるのに対して、AI訪問看護報告は開始から1ヶ月程度でAI訪問看護計画を上回る59,474件の使用となっている。同社では計画書・報告書作成にかかる毎月の訪問看護師1人あたりの作業時間を平均7時間から1.4時間に短縮可能(iBowを活用して効率的に事業運営している事業所でも1か月平均15.5時間の創出が可能)と試算しており 訪問看護ステーションの生産性向上に貢献できる。2017年からAI(当時はIBMワトソン)を研究し、2018年よりAIを活用したサービスを提供していた。iBowに蓄積されたデータの活用による生成AIの精度向上と、質の高い看護記録の作成ができる仕組み作りに取り組んできたeWeLLならではのプロダクトとなっている。料金体系はAI訪問看護計画と報告セットで「訪問件数*20円」であり、iBowの収益底上げにつながる施策となる。

訪問看護ステーション専用のファクタリングサービス「e-レセ」の提供も開始している。訪問看護ステーションは成長のフェーズに応じた資金が必要であり、資金供給によりステーションの成長を支援することで訪問件数が増加し、結果、同社の売上にもつながる施策となる。業界最高水準の掛け目(95%)、手数料率(0.5%)、維持費用(0円/月)でサービスを実現している。

また、既に発表されている地域包括ケアプラットフォーム「けあログっと」も、同社の成長を加速させるであろう施策となる。少子高齢化の進行に伴い、政府は病院の平均在院日数を18日以内から16日以内にまで短縮する政策を実施している。この方針により、退院支援の重要性はますます高まり、医療従事者への業務負担は深刻化している。従来の電話とFAXに頼った方法では、病院関係者は患者の病状に合った適切な専門的ケアを提供できる訪問看護ステーションを探すのに膨大な時間と労力を費やしている。入院から退院までの期間がますます短くなっていく中、限られた時間内に患者と家族の希望をも満たすステーションを見つけることは極めて困難な状況となっている。「けあログっと」は、全国の各地域にある訪問看護ステーションの特徴や空き状況をリアルタイムで表示し、患者に適したステーションをその場で見つけて依頼できる新たな入退院支援サービスであり、これが無料で提供される。同社の訪問看護ステーションの囲い込みがさらに進む施策である。けあログっとはマッチング数を重要指標と捉えているため、ドミナント戦略での展開が計画されており、まずiBowユーザーが多い大阪・兵庫エリアでの展開をした上で首都圏・全国へ展開することが想定されている。

2026年12月期を最終年度とする中期経営計画では、0.1%前後の低解約率を維持し、顧客を増加させつつ、既存顧客へのアップセルを2023年度の19%から30%に向上させること、売上高4,177百万円、営業利益1,876百万円、営業利益率44.9%を目指すことなどが掲げられている。

《NH》

提供:フィスコ

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