桂畑誠治氏【日米中銀の会合控え思惑錯綜、年末年始の相場展望】(1) <相場観特集>
―金融政策を巡りFRBと日銀の一挙一動に市場の視線集中―
16日の東京株式市場は売り買い交錯のなか、日経平均株価は朝方高く始まった後は売りに押され気味となり、狭いレンジの中での上下動を繰り返した。今週は米国では米連邦公開市場委員会(FOMC)、国内では日銀金融政策決定会合を控え、投資家サイドも積極的に売り買いのポジションを高めにくい時間帯にある。年末年始の東京市場と米国株市場の動向はどうなるのだろうか。第一生命経済研究所の桂畑氏とフィリップ証券の笹木氏にそれぞれの見解を聞いた。
●「来年以降の米金融政策への思惑がカギを握る」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
足もとの日経平均は3万9000円台半ばで不安定な値動きを継続している。今週はまず17~18日の日程で行われるFOMCが注目されている。現状はFRBが0.25%の政策金利引き下げを行う可能性が高く、マーケットでもこれを織り込んだ状態にある。問題はドットチャート及び米国の経済見通しがどうなるかという点、そして会合後のパウエルFRB議長の記者会見の内容に焦点が当たっている。
前回のドットチャートでは2025年の金融政策について年4回の利下げを見込んでいたが、今回はこれが年3回ないし2回になる可能性がある。仮に1回減って年3回の利下げがコンセンサスとなっても、想定の範囲で米株市場に与える影響はそれほど大きくないと思われる。しかし、これが年2回に変わったりするケースや、26年についてメンバーの中に利上げを見込む向きが多数出てくるようだと、全体相場の波乱要素となり得る。経済見通しでは、24年の米国の経済成長率や物価については上方修正されそうだ。一方、パウエルFRB議長の記者会見は概ねハト派的な論調でまとめてくることが予想されるが、これが思いのほかタカ派的なコメントに傾いた場合は、株高ムードが後退することも考えられる。
FOMCに1日遅れて18~19日の日程で行われる日銀の金融政策決定会合については、既にメディア経由で利上げ見送りという事前のアドバルーンが上げられた格好だが、足もと1ドル=153円台後半まで円安が進んでいることを考慮すると、今回追加利上げに動く可能性もゼロではないと思われる。ただし、今回の12月利上げがなくとも、その場合は来年1月の利上げの公算が大きい。その意味では今回の日銀金融政策決定会合は、どちらに傾いても相場の大勢トレンドを揺るがすようなことにはならないであろう。向こう1ヵ月、年末年始の日経平均のレンジは下値が3万8000円前後、上値は4万2000円弱のゾーンを想定している。
物色対象としては、個人投資家の関心の高い半導体関連については装置メーカーなどの収益環境に先行き不透明感は拭えず、もう少し様子をみたいところだ。一方、AI周辺のシステム系などソフト分野の銘柄については、買いで対処可能な銘柄も少なくないと思われる。このほか、インバウンド需要を取り込んでいる外食や小売りなどの内需株は引き続き追い風環境が意識されやすい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
株探ニュース