年間800万円の配当金を作った2つの技と「25年ルール」
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 招き猫さんの場合-最終回
2007年、自分年金づくりを目的に株式投資を開始。定年退職し現在は、専業投資家。高配当重視でREIT(不動産投資信託)の比重を高め出した11年頃から運用成績が向上する。累積元本約9000万円が、現在2億1000万円にまで拡大。年間配当も800万円。成長期待のある高配当株を長期保有し、再投資するのが基本。
「株探-個人投資家大調査-2024」の回答者で、投資スタイルは「配当・株主優待重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
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この記事を読む3つのポイント |
1 過熱を避ける&狼狽しない「待ち」の売買の考え方 |
2 「割高から割安へ」資金移動させるノウハウ |
3 基本はガチホの中で、利確する目安 |
現在、手取りで年間800万円の配当金がある招き猫さん(ハンドルネーム)は、本人のもらう公的年金を大幅に上回る金額を得ている。「自分年金を作ろう」と、投資を始めた当初の目的をしっかり達成できた。
その配当金を生み出しているのが、日本株84銘柄で構成される「招き猫ポートフォリオ」だ。中身を見ると、高配当株がズラリと並ぶ。
■招き猫さんの代表的な保有銘柄と現在の利回り
銘柄名<コード> | 業種 | 配当利回り |
安藤・間<1719> | 建設 | 5.04% |
住友林<1911> | 住宅建設 | 2.54% |
日曹達<4041> | 精密化学 | 4.37% |
武田<4502> | 医薬品 | 4.74% |
特殊陶<5334> | 点火プラグ等 | 3.74% |
日本製鉄<5401> | 鉄鋼 | 5.21% |
トヨカネツ<6369> | 機械 | 4.48% |
マースGHD<6419> | パチンコ周辺機器 | 6.20% |
FPG<7148> | 船舶等のリース | 4.68% |
ヤマハ発<7272> | 輸送用機器 | 3.59% |
三菱商<8058> | 総合商社 | 3.92% |
三井住友FG<8316> | 銀行 | 3.19% |
MS&AD<8725> | 保険 | 4.18% |
日本リート<3296> | REIT | 6.30% |
トーセイリート<3451> | REIT | 6.12% |
注:配当利回りは2024年12月13日終値時点。
並びは証券コード順(リート除く)
招き猫さんの購入時の株価を基準とする配当利回りは、84銘柄中に、
10%超えが5銘柄、
7%超えが10銘柄以上、
全体平均では約6%、
――という好成績だ。
購入時基準での配当利回り10%超えの顔ぶれは、前回記事で登場した船舶やコンテナのリース事業などを手掛けるFPG<7148>、商社の三菱商事<8058>、三井物産<8031>、損保のMS&ADインシュアランスグループ<8725>、鉄鋼の合同製鉄<5410>になる。
同7%超えには、REIT(不動産投資信託)銘柄や日本たばこ産業<2914>、建設の奥村組<1833>などがある。
含み益が1億円以上もあるのに加え、こうした高配当ポートフォリオを構築できた要因に、2つの待つ姿勢がある。それはどのようなものなのか。
噴いた後の押し目を待った日本郵船
2つの待つとは、「買う」と「売る」だ。
株価が噴いても浮かれず、反対に暴落しても慌てない。この心持ちで、常にマイぺースを保ち、自分が最良だと思う買い場や売り場を探る。含み益1億円と、平均6%のマイポートフォリオは、このやり方を繰り返して作り上げられた。
約1年で配当と値上がり益で200万円を獲得した海運株の日本郵船<9101>は、高値掴みを避けるため、材料が出て株価が急騰しても飛びつかず、冷却期間を置いて買い場を待った。
これによって、押し目を拾い、9月末配当を権利取りしたうえに、その後に続く大幅上昇に乗ることができた。
商船三井の好決算に郵船が動意、でも焦らずに押し目待ち
この200万円のリターンを得た郵船株を、招き猫さんが買ったのは2021年の8月だった。この年の夏から秋にかけて、コンテナ運賃の上昇期待などから海運セクターの株価が大きく跳ねた「海運株祭り」が起きていた。
火付け役になったのは、商船三井<9104>の「上方修正と増配に加え、14期ぶりの最高益」というサプライズ決算だった。
■『株探プレミアム』で確認できる商船三井の四半期決算の成長性の長期推移
21年7月30日の取引時間中に発表された、商船三井の22年3月期第1四半期の好決算を受け、同社株は前日比12%以上もの急騰を見せる。この日は、これに追随して日本郵船<9101>も、8月4日の決算発表を待たずに約7%も上昇、その後も急ピッチで上昇していく。
だが招き猫さんは、郵船の業績も好調なことは予想できたが、すぐには飛び乗らないこととした。郵船の決算を確認した後、上昇の勢いが落ち着いたところで、自分も冷静になって買いに出る方が、リスクが少ないと考えた。
結局、郵船も商船三井も、決算後から約2週間後の8月17日に高値を付けて、その後は全体相場の軟調に連れ安する調整局面を迎えた。
招き猫さんは、2856円の直近高値から株価が大きく沈んだ場面の後、再び切り返したタイミングを見計らい、押し目買いに成功する。好決算直後の過熱が冷めたタイミングで拾い、その後の大きな上昇に乗ることができた。
■日本郵船の日足チャート(21年7月下旬~22年4月中旬)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
■日本郵船の取引のポイント
行動 | 時期 | 状況 |
着目 | 2021年7月30日 | 商船三井の22年3月期1Qの好決算で郵船株も急上昇 |
待ち | 同7月30日~8月25日 | 株価上昇中は様子見、調整したところで好機を探る |
買い | 同8月26日 | 押し目から反転の兆しが出たところで買い |
自分の見立てを信じて、含み損も耐える
精密化学を扱う日本曹達<4041>は、売り時を待った例だ。
同社株を購入したのは、22年12月。買い出動後にすぐに含み損となってしまったが、ここで耐えて、その後の上昇トレンドにうまく乗れた銘柄だ。今もホールドを続け、足元で、約100万円の含み益に加え、年間約20万円の配当を得ている。
招き猫さんが日曹達を買ったタイミングは、22年11月に23年3月期の第2四半期決算(2Q)が発表されて、しばらくしてからだ。上方修正があったにもかかわらず、材料出尽くしからか、決算後の同社の株価は下落していく。招き猫さんは、頃合いを見て、さらに安くなったところを拾った。
■日本曹達の週足チャート(21年12月中旬~)
踏ん張りが、翌年に実を結ぶ
しかし、株価は期待したような迅速なバウンドにはならかった。年明け23年になってから、含み損はさらに膨らみ気持ちは焦ったが、ここでは自分の見立てを信じて待つこととする。
ここで踏ん張ったことが、後で実を結んだ形だ。なぜそうできたのか。
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